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128話.献上品

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 朝だ……

 目が覚めて気づいた事は、先日と違い体調が幾分か良い感じだ。
 これなら、クソ不味い栄養ドリンクを飲む必要はなさそうだな……

 シェリーがとなりに寝ていた。
 シェリーは我慢してくれたのか? それとも心配してくれたのか解らないけど、一緒に寝てくれるだけで済ませてくれたのは助かった。

「シェリー、ありがとな」と言って、彼女の横顔に軽くキスした。

 目をパチリと開けたシェリーが私に抱きついてきた。
 彼女の寝たフリと気づいたが、仕事に行くまで時間あるので彼女の頭をなでなでしていよう。
 そんな流れで――しばらく、彼女を甘やかしていると……

「ハジメさん、シェリー。
 そろそろ起きてください」と、エミリーから扉越しに呼び出しを受けた。

「「はーい」」 と、返事をして二人は食事スペースへ移動した。
「おはようございます」と、皆に挨拶した。

 エミリーは、私の顔を見て様子を見ているようだった。
「今日は、体調良くなったみたいですね」と、エミリーが言ってきた。

「あっ……。最近、体調悪いの解ってた?」

「ハイ。流石にアレは見過ごせなかったので、キャリーとアリアには注意しましたよ」

「お兄さん。ごめんなさい」

「ご主人様。申し訳ありません」と、体調悪化の原因の2名が謝ってきた。

「いや、こちらこそゴメンね。
 いつまでたっても、レベルの進展ができずに……」

「いえ、お兄さんが頑張ってるのは解っていますから」
 ……と、キャリーがいうと周りの皆もソレに同調して頷いていた。

「最近、何故か体調が優れないから――
 一緒に寝るのは問題ないけど、ご奉仕は勘弁してほしいかな」

「「わかりました」」と言って、キャリーとアリアが納得してくれた。

 朝食を済ませて、町の研究員のジッパーに教皇様に荷物の配送完了の旨を伝えた後に、通常業務を済ませたら昼過ぎになった。
 昼飯を皆と一緒に取った後、【転送魔法】を使い城下街の屋敷へ移動した。

 今日は、ノルニルさんに挨拶してから教会に移動するかな。

 屋敷に入ると、掃除の真っ最中でバタバタと忙しそうにしているリリスの姿が見えた。
 リリスが私に気づき、「お兄ちゃん、おかえりー!!」と言って、飛びついてきたがソレを手で止めて回避した。

「今から仕事なんで色々と拙いから……
 昼間は止めてくれな」

「解ったー!! けど、お掃除は頑張ってるから褒めて褒めて!!」

 とりあえず、彼女の頭を撫でてやった。
 彼女をナデナデする分には癒ししか感じない。
 彼女に食事をされて体調悪化が起きているのか? うーん、何とも言えないな。
 ハッ!! ナデナデを続けていたら我を忘れていた。 屋敷に来たのは、ノルニルさんに挨拶しに来たんだったと本題を思い出した。

 そして、この場を離れようとすると「無理しない程度に、頑張ってね」と、リリスが言ってくれた。

「おう!! 頑張ってくるよ。
 そういえば、ノルニルさんが昨日から屋敷に来てると思うけど?」

「新しいお姉ちゃんの部屋は聖域になってて、私は入れないよ」

 あぁ、十字架持ってたし。
 彼女は教会の関係者なんだろうな。

「そっか、そしたら私はノルニルさんに挨拶してから仕事に行くから……
 二人とも仲良くするんだよ」と言って、私この場を離れた。

 確か、この部屋は元空き部屋だった部屋の扉から灯りが漏れていた。
 人の気配もするし彼女の部屋はココだろう。
 閉まっている扉をノックした。

「ノルニルさんいます?」

「はい、居ますよ。
 どうぞ入ってください」

 ノルニルの部屋に入る。
 なんか明るい部屋だ……

「物凄く明るい部屋だね。リリスがこの部屋が聖域になってるって言ってましたよ」

「サキュ……リリスさんですか。
 魔除けの札を設置していますので、そのせいでしょう」

 さっき、ノルニルさんはサキュバスって言おうとしたよな……

「あのぉ? ノルニルさん?
 リリスがサキュバスって事を知ってる?」

「知っていますよ!! 何度も注意してるのに――
 二階堂さんがサキュバスの相手を続けているのも」
 ……と話の途中まで言って、彼女は口ごもった。

 また匂いか?  それとも勘か?  女性は敏感だからな、すぐ気付くからなぁ。

「二階堂さんに良い事を教えてあげます。
 サキュバスの相手を毎日続けさせて、家族の不仲を引き起した挙句、その相手も衰弱させて殺す拷問もあるんですよ」

「もしかして、私がその状態なんですか?」

「はい、そうです。
 二階堂さんもあの子を気に入ってるみたいだし。
 一度あの子を預かったお店で色々と聞いてみたらどうですか?」

「そんなお店があるのも、知ってたんですか?」

「えぇ、この街は庭みたいなものですから」

「ノルニルさんの助言通りに、あのお店に仕事終わりに行ってみるよ。
 教えてくれてありがとう」

「力になれて何よりです」

「でも、なんで口ごもってたの?」

「そんな拷問方法とか知ってたら、変じゃないですか」と、彼女が話を口ごもった理由を答えた。

「へぇ、そういうものなんだねぇ」「そうなんです」

「それじゃ、新しい武器できたらさ。また一緒に狩りに行こうよ」

「それなら、夜のロックバレーとかどうですか?
 スパイクバードの鶏肉は、かなり美味しいですよ」

「マジ?」「はい。アイスバードの肉に勝るとも劣らない味ですよ」

「武器が完成したら、一緒にロックバレーに狩りに行こう!!」

「はい、楽しみにしてます」

 ノルニルさんと会話をした後、教会へ向かった。
 教会の入り口で受付を行い――そして、いつものように教皇の部屋へと入った。

「やぁ、よく来てくれたね。
 それじゃ、国王陛下に献上品を届けに行こうか」

 教皇様は座っていた椅子から立ち上がり私を案内するように扉の前へと移動した。
「そうですね……」と言って、私は教皇様の後をついていった。

 それから馬車に乗り、しばらく移動すると城に着いた。
 そのまま教皇様の後をついていくようにして移動すると国王のいる大広間に着いた。
 王様は大きな椅子に座りコチラを見ていた。

「よく来てくれた!! 教皇と二階堂君」

「この度は、前々から献上する予定でした。
 透視眼鏡が完成しましたので、献上に参りました」と、教皇が言った。

「良い良い、事の顛末は全て聞いておる。
 今回も、そこの二階堂君がやってくれたのだろう」

「はい、東の砂浜で狩りをしていたところ。
 シースルーという人真似をする悪魔型のボスモンスターに出くわしました。
 ただ、苦戦の末になんとか手に入れた魔石にてございます!!」

「ほぅー!! 詳しく聞きたいところじゃが、教皇よ先に例のモノを……」

 教皇は透視眼鏡を国王に献上した。
 国王は眼鏡をかけて、男は見ずにメイドの女性を見始めた。
 まぁ、国王があえて男を見ないのも理解できた。

「ふむふむ、良い出来じゃ。
 教皇よ大義であった」

「二階堂君。今から教皇と話があるので娘の話し相手をしてやってくれないか、ソコの入り口の所で今か今かとソワソワして待っておるわ」

「ははは、わかりました。
 私も王女様と会えるのを楽しみにしてました。

「そうか、そうか」

「ハジメ君、例のモノを渡さなくてよかったのかな?」

「あっ、そうでした。
 お屋敷のお礼に、私が過去倒したモンスターで一番苦戦したモンスターの魔石を国王陛下に献上したいと考えております。
 受け取っていただけますでしょうか!!」

「ホゥ、面白いの!! 
 マーガレットよ、せっかくだからコチラに来なさい」

「はい、お父様」と言って、王女様が国王の横へと移動して来た。

 マジックバッグ(仮)から、デスワームの魔石を取り出した。
 その後に、討伐した時の話をしてから国王へ魔石を献上した。

「ラッキーインセクトの上位魔石ですので、永続的に使うような魔道具に最適だと思われます」

「なるほど、実用性もあっての献上か?  そうか誠に大義である」

「ありがとうございます」「それでは娘の話し相手をしてやってくれぬか?」

「わかりました。
 マーガレット様、それでは案内をお願いできますか?」

「はい、着いて来てくださいね」

 私は王女様の後をついて行き、しばらく歩いた所で王女様が扉の前で立ち止まった。

「ココです」「失礼します」

 王女様が扉を開けたので、私も部屋に入らせてもらった。
 部屋の中には、この間のメイドさんもいた。

「二階堂様。とりあえず、そこの椅子におかけください」

「はい、ありがとうございます」と言って、私は王女様に指定された椅子に座った。

 その対面に王女様が座った。

「今日は何の話をしましょうか?」

「二階堂様は、ドラゴンという生き物を見た事はございますか?
 とても強くて兵士や冒険者では歯が立たないと聞きますが?」

「1匹ですが討伐して原型を残している、アイスドラゴンがこのバッグの中に入ってますよ。
 後、枝肉に加工済みのランドドラゴンも、このバッグに入ってます。
 メイドのお姉さん、ちょっと来てください」

 私が呼び出すと、メイドさんが私に近づいてきた。
「どうされましたか?」

「ランドドラゴンの肉を、提供してもよろしいでしょうか?
 国王陛下と王女様の料理に使って頂ければと思いまして」

「わかりました。
 乗せるものを用意します。食材を確認をした後に調理したいと思います」

 一度部屋の外へ出て、肉を乗せる受け皿が乗ったカートをメイドさんが持ってきた。

「この受け皿の上に乗せればいいですよね?」

 食べやすくて、美味しい所の部位を載せておいてやるかな。
 ドラゴンの肉を取り出して受け皿に置いた。

「二階堂様。コレがドラゴンのお肉なのですね!!」

「はい、一番美味しいって言われてる部位を選ばさせて頂きました」

「お嬢様。私はコレを冷蔵庫へ持っていきますね」

「はい、お願いします」

 王女様との話はまだまだ続いた……
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