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95話.計画通り?

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 三号店が破壊され本来ならば様子を見るつもりだったのだが……
 二号店にまで手を出すという言葉を聞いた瞬間に、私は耐えれなくなってしまった。
 二号店に関しては長く営業してきて、愛着のある店だし自宅もある。
 
 私は、商人だから冷静にしようと考えていたが……
 私にとって二号店は譲れないモノがあったみたいだ。

 あの兵士達は、この町は完全に敵地となってしまった為、既にこの町を離れている。
 下手をすると町の人間に袋叩きにあってもおかしくない状況だし、兵士達が逃げ出したのは懸命な判断だろう。

 私は[サドタの街]へ行きギルド長へ状況を報告した。
 そして、ドワルドの出張を取り止めて、この街での作業の作業停止の報告を行った。

「あの、貴族やりやがった。
 ワシらに泥を被せやがって!!」

 今にでも、貴族に文句を言いに行きそうなギルド長のレクターだったが、私がソレを制止した。

「ちょっとまって下さい。引き続き作業をやらないとは、言ってないので安心して下さい。
 レクターさんは、貴族に文句を言わなくていいんです。
 だから、このギルドは貴族を見捨てて下さいよ」

「具体的にどうすれば?」

「ギルドに二つお願いがあります。
 あの貴族が[セカンタの町]に派兵した際にギルドを通して私に連絡を下さい。
 もう一つは、あの町への派兵への為の人員をギルドから出さないで下さい」

「ワシらが止めても聞かず、勝手に派兵に参加した場合は?」

「私が相手になります。死体が増えるだけですよ……
 すでに、町の大事な施設を壊した極悪人なんですよ。この街の貴族はね。
 [大義名分]が出来てしまった以上――結果がどうなろうが私は知りません。
 この街に住む貴方達は被害を出さない努力をする、それ以外ありませんよ」

「人死には回避できんのか?」

「それは、貴族様に言ってあげたらどうですか?
 私が動かなければ、確実に[セカンタの町]が滅びますよ?」

 続けて私は言った。

「私はあの町の町長で、町を守る義務がある。
 町にとって敵だと判断したら、容赦はしませんよ。 分からず屋どもには【  】、死んでもらうと思いますけどね」

 私はという、言葉を意味深にギルド長に伝えておいた。

「全力でギルドからの派兵は回避する。
 それでいいな?」

「ハイ。私はギルドと敵対する気ないですし。
 それじゃ、今日から忙しくなるんで、ドワルドを連れて帰ります」

 その後、[サドタの街]にいるドワルドを連れて[セカンタの町]へ戻った。
 時間は夕方を過ぎていたが、三号店の飲食スペースに全社員に集まってもらった。

「社員は、みんな集まってるかな?」

 社員以外にも、テナントの社員や、ギルド職員、副町長、スミス神父なども集まっていた。

「ハイ、全員揃ってます」と、3号店の店長のキャリーが報告した。

「ご存知のように、[サドタの街]のクソ貴族の理不尽な暴力によって、私達の大事なこの施設が壊されてしまいました。
 主な被害は、浴場のみですが主要部分が壊された為、復旧の為に臨時休業となります。
 復旧作業を急ぐため、橋の設置の作業班と治水班も復旧班に合流して作業にあたって下さい」

「ん?  なんじゃ、社長。
 被害は浴場だけか?」と、ドワルドが言った。

「いやいや、その浴場がボロボロなのが問題なんだが?」

「あー。それなら大丈夫だと思うぞ!!
 ホレ社長、ワシについてこい」

「ちょっとすいません。
 ドワルドさんから物言いが入りましたので……しばらく、お待ちください」

 ドワルドについて行き、浴場を見てみる……
 ボロボロじゃないか――何が大丈夫なんだ?

「なんか、不満そうじゃの?」

「そりゃ、この有様だし。
 どう見てもボロボロじゃないか?」

「そうか、社長にはボロボロに見えるか。
 ここの整地と壁の大元を、作ったのは誰だ?」

「ん?  大元って意味なら私か?」

「そう、社長のありえないくらい強化した魔法で作られている壁だぞ。
 そんな、基礎や壁がそう簡単に壊せるモノとはワシには思えんぞ? どうせ壊されてても、表面やら飾りの部分じゃろ」

 ……と、言って、ドワルドが壊されたタイルを剥がし俺に見せた。

「ホレ、社長の作った部分は壊れとらんじゃないか。
 これなら、人数が増えた今なら1週間もあれば営業再開できるぞ!!」

「みんなに、どう説明しましょうかな……アハハハ」

「ガハハ。それは、社長が考えることじゃ」

 ……と、二人で笑いながら皆の前に戻っていった。

「さっき、ドワルドさんと話して見たけど、修理自体は一週間もあれば終わるらしいです」

 ……と、報告したら。皆が唖然としていた。

「元々から1ヶ月以上は修理にかかると想定してたので、施設をリニューアルオープンしてお客様にお披露目しようと思います。
 飲食スペースは解放したままでいいので、お風呂の施設だけお休みという形になります。
 今度追加するお風呂は、サウナ、水風呂、壺風呂、薬草風呂の4つを追加します」

「もしかして、社長。このタイミングで、リニューアルするつもりでいたんじゃ?」
 ……と、ドワルドが聞いてきた。

 私は、ニヤリと笑みをこぼした。

「あのクソ貴族が破壊活動してくれたおかげで、堂々とお店を休んでリニューアルができるんだ。
 この機会を活かすに決まっているだろう……
 全ての悪感情は、あのクソ貴族に被ってもらおうじゃないか!!」

 前もって、準備しておいた設計図をドワルドに渡す。

 設計図を見たドワルドが確認するように言葉を発した。

「まず、屋上に金樽増やして、次に配管室の外の壁を壊す。
 最後に、熱調整用の金樽を増やすんだな。
 新浴場の配管は野外から浴場に入れるわけか。
 これなら、客に見られずに風呂の種類を増やせるな」

 ドワルドは設計図の意図を理解していたので、親指を立て『その通り』と合図を送った。

「お店は臨時休業しますけど、スタッフは勤務してもらって構いません。当然、給料は出します。
 後程、貴族に倍の以上金額で請求しますので……従業員の皆さんは、遠慮なく働いてください」

「こりゃ建築班は忙しくなるワイ」と、ドワルドが言った。

「ハジメ君。ギルドからも支援金としてお金を集める予定なので、それも使ってくれ」

「町長。町からも支援金を集めれると思うぞ」

「教会からは何か出来ますかな?」

「スミス神父、無理はされなくて大丈夫ですよ。
 例の子達の件も……お願いしちゃってますし。
 ここまでは未来のあるお話です」

 続けて、悪い情報を皆に伝える事にする。

「ここからは、少し残念な話になると思います。
 [サドタの街]の貴族は間違いなく、この町を襲うと思います。
 私は、町長として全力でソレ阻止しますが――万が一阻止できなかった場合は、この町が終わるという事です」

 少しだけ、周りがザワついた。
 その後、周りの空気が一変した。

「この町のギルドを総員あげて、あの貴族を追い払おうじゃないか!!」

「これは町長だけの問題じゃない、町の問題だ全員で対応に当たるべきだ!!」
 ……と、マルコとミルコの兄弟で心強い発言を出してくれた。
 私は、熱くなっている二人の発言を制止し、この場にいる皆に自分の考えを伝えた。

「正直に言います、勝算はあります。
 北の森の入口の地面が入れ替わってる場所がありますよね。
 あれが、私の魔法の範囲です。
 初期からいる建築班は見たことあると思うが、町で解体に使ったあの魔法だよ」

「あれかぁ……」と、古参の建築班が納得していた。

「テナントの皆さんのお店を1日で、撤去した魔法です」

 そう説明すると、皆が魔法の規模と威力を理解してくれた。

「なので、まず戦闘になりません……
 だから、皆さんはいつも通りに過ごしてください」

「いざという時は、ギルドが動くからな!! ハジメ君」

「ハイ。その時は、お願いします」

 ……
 …………

 予定通り一週間で浴場の修復が終わった。
 そこからは、浴場のリニューアル作業が始まった。

 その3日後の事だった……
 夜間にもかかわらず、自宅の扉がノックされた。

「夜分遅くに申し訳ありません。[サドタの街]のボルグ様より言伝ことづてを承っております」
 …と、扉越し言われたので、ボルグが再び投獄された事を理解した。
 そして、ドアを開けて執事風の男を部屋に招き入れた。
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