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91話.夜逃げ屋始めました(嘘)

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 全ての子供達を[サドタの街]の教会から[セカンタの町]へ移動させた。

 四号店の建設には、ドワルドさんの送り迎えが必要になるので、私の狩りの時間は昼に固定された。
 狩りに行く前に、彼を[サドタの街]へ連れて行き、狩が終わったら彼を連れて帰る流れだ。
 私の予定が多少増えたが、これといって仕事が増えたわけではない。

 ……
 …………

[サドタの街]の子供達を[セカンタの町]に移動させてから6日が経った。
 そして、6日目の夜が訪れていた……

 私は[サドタの街]の教会へ移動し、ライアン神父を連れて[セカンタの町]へ逃げる。
 翌日には、教会はもぬけの殻の状態になる――まるで夜逃げのような作戦だ。

 私は【転送魔法】を使い教会の前へ移動した。
 辺りを警戒しながら教会の敷地に入る。

 そして、教会の扉を軽くノックした。

「開いてますよ。入ってください」

「失礼します。
 こんばんわ、ライアン神父。
 持って行くモノは、全て纏めましたか?」

「ある程度は纏まりましたが――
 サイズが大きくて、どうしようないモノがあるのです」

「どれですか?」と、私が聞いたら。

 ノルン様の像を神父は指差した。

「つまり、この像を持って行きたいと?」

「ハイ。できませんかね?」

「他に無理そうなモノはないですか?」

「いえ、あの像だけでも持っていければ、どこででも信仰はできるのです」

「わかりました。
 少し試してみましょうかね……」

 ノルン様の像をマジックバッグ(仮)に入れてみようとするが拒否された。
 拒否の内容は、『盗み、ダメ、ゼッタイ』 と、標語のような言葉が視界に映った。

 あー、この拒否のされ具合はネット接続の時みたいな感じだな。
 つまり、盗みじゃなければ……いいんだな。

「ライアン神父。
 この女神像の所有権を私に預けて頂けませんか?」

「返してもらえるんですよね?」「それは当然です」

「それなら大丈夫です。
 一度、ハジメ君に女神像の所有権をお譲りします」

 もう一度マジックバック(仮)に入れてみようとしたら、アッサリと女神像が入っていった。

【アイテムボックス】を使っての窃盗は出来ないようになってたんだな。
 今更だが、【アイテムボックス】について新しい知識を得る事ができたよ……

「女神像を持ち運び可能になりましたよ。
 あとはありませんか?」

「あとは大丈夫です!!」

「それでしたら、ライアン神父。
 教会の入り口と孤児院の入り口に明日は一日の間、留守にすると張り紙をしておいてください」

「わかりました」と言って、ライアン神父は張り紙に文章を書いて教会から出ていった。

 ……
 …………

「張り紙を張ってきました」

「そしたら、教会から出て鍵を閉めておきましょう」
 ……と、私が言った。
 私の言葉に対して神父は頷いた後、神父は扉の鍵を閉めた。

「じゃあ、子供達が待つ[セカンタの町]へ行きますよ」

【転送魔法】を使用して、ライアン神父を連れ[セカンタの町]へ移動した。

 これで、教会の人間を全て移動させるミッション達成だ。
 ライアン神父を、ギルドの貸しスペースに案内して、私は神父やシスターに礼を言われた。

「これから先の働き先等は私が用意しますんで安心してください。
 新しく[サドタの街]に教会が完成するまでの辛抱ですよ」
 ……と言って、私はギルドを後にした。

 貴族をハメる為の全ての準備が整った。 明日が作戦の決行日だ!!
 貴族への嫌がらせの効果を高める為にスキル枠に[栄養ドリンク]を追加し、マムシやらスッポン等のあからさまな使用用途の飲料を【異世界取引】を使い購入した。
 そのあと、ギルドから歩いて自宅へ帰った。

「ただいま」

「「「おかえりー」」」3人に出迎えられた。

「ハジメさん。ご飯できてますよ」

「うん、ありがとう。
 三人とも、ちょっと話を聞いてくれるかい」

 三人とも真剣な表情でコチラを見ている。

「明日は、リストア様に君達三人が私の嫁だと紹介する。
 その為に君達を連れて行くけど大丈夫?」

 私の問いに三人とも頷いてくれた。

「あの腐れ貴族の事だから……
 私から君達を奪おうとしてくると思うが、それだけは絶対にさせない!!
 それだけは安心しておいてくれ」

「「「はい」」」

「あと、こう言う場面じゃないと言いにくいんで言っておくけど、私は三人とも大好きだ。
 それだけは信じてくれ……」

「お兄ちゃん。なんで急にそんなコト言うの?」

「私は、あの貴族と商談する為にあのクズと同じ土俵に立つ。
 ソレを見ても君達が私についてきてくれるのか不安だからだよ……
 そういう事は君達がいない間に片付けて、私の汚い姿は本当は見せたくなかった」

「何があっても……私はハジメさんの隣を歩いて行きますよ」
「それじゃ……私は、お兄さんの左隣かな」
「シェリーは、後ろについてくー」

「三人とも、ありがとう。
 必ず作戦を成功させるよ!!」と、言った。

 その後、皆でご飯食べて、その日は三人と一緒のベッドで眠りについた。

 朝だ……
 貴族との決着をつける日だ。

 エミリーは、料理の準備をするために起床していた。
 残り二人はまだ寝ている。

 よし、起きよう!!
 私が起きるのに合わせるように二人とも起きてきた。

「二人とも、おはよう」

「お兄さん(お兄ちゃん)。おはよう」

 ……と挨拶をして、三人で飲食スペースに移動した。
 エミリーが、すでに朝ご飯を用意してくれていた。

「ハジメさんおはようございます。
 あと二人もおはよう。顔を洗ってきなさい、ご飯食べるわよ」

「「「はーい」」」と三人で言って、私達は顔を洗いに行った。

 そのあと、四人で朝食を食べてから。
 彼女達のドレスを依頼している服屋へと歩いて移動した。

 服屋に入ると――いつものように店員のおばちゃんが挨拶してきた。
「いらっしゃい!! ……って、お客さんかい。
 三人の服できてるよ!! せっかくだし、靴も合わせていいのよね?」  

「ああ、今からリストア様に会いに行くからね。その辺りの調整も頼むよ」

 彼女達は新調したドレスに着替える為に試着室へ入って行った。

「ねえ、お客さん。
 三人分のドレスだと、かなり値が張るけど……大丈夫?」

「いくらだ?」と、値段を聞いてみて問題なかったので今月末にウチのお店に請求してくれと伝えた。

「それじゃ、三人の着替えを手伝ってきましょうかねぇ」

「あぁ、頼むよ」

 ……
 …………

 最初に、シェリーが試着室から出てきた。
 金髪ロリに赤いドレス……

「お兄ちゃん。どう? シェリーかわいい?」

「もの凄く可愛いよ~」「えへへー」

 シェリーが、照れる姿も凄く可愛いかった。

 次に、キャリーが試着室から出てきた。

 ロリ体型の女の子に黄色いドレス……
 これが、合わないわけがない!!

「お兄さんどうですか? 似合ってますかね?」

「キャリーの明るい感じが出て凄く似合ってると思うよ」

「そんなに褒めてくれるんですね」と言って、キャリーが照れていた。

 最後に、エミリーが試着室からでてきた。

 あっ、薄い青系のドレス。
 俺が、彼女にプレゼントした服の色によく似てる……
 彼女は軽く化粧もしていて――本当に綺麗だ。

「ハジメさん。どうしたんです? じっとこっちみて」

「ああ、似合ってたんで……つい見とれちゃったよ」

「そうですか。嬉しいです」

「それで、お客さん。誰が一番似合ってるんだい?」と、おばちゃんが鬼の様な質問をしてきた。

 オイ、おばちゃん!! 店員が、そんなキラーパスを投げてくるな!!
 ……と、内心で思いつつ。

「甲乙、つけ難いですね」と、差し障りなく答えておいた。

「それで、ハジメさん。
 着替えた服はどうしましょうか?」

「みんな、私に服を渡して下さい。
 私のバックの中に入れちゃうから大丈夫」と言ったら、三人とも服を渡してきた。

 彼女達の服は私のモノじゃないから弾かれるか? ……と、思ったが問題なく入った。
 三人とも、私の嫁だから大丈夫なのかな?

 そして、服屋を出て――
 一度教会に行き、スミス神父に彼女達の晴れ姿を見てもらってから、サドタの街へ移動することにした。
 彼女達のドレス姿を見て、スミス神父が軽く泣きかけてたな。
 スミス神父は父親として、感慨深いモノを感じたのだろうな……
 彼女達のドレス姿のお披露目を終えて、三人を連れて【転送魔法】で、[サドタの街]の貴族の城の前に移動した。
 
 商人と貴族の商談開始戦いの始まりだ!!
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