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90話.子供達の転送完了

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 貴族のリストアが、[セカンタの町]を出てから一週間が経っていた。
 その間――私は[セカンタとサドタ]を往復し、複数の作業を同時進行していた。
 
 まずは、[サドタの街]のギルドの依頼の新施設の準備だ。
 そこでは、建築のスタッフを面接したり浄化槽の設置などを行った。

 今週からは本格的に建物の建築が始まるので、二号店からドワルドを建築リーダーとして貸し出そうと考えている。
 リーダー格の人物だけは、ある程度の信用がある人間にやってもらった方が安心できるので、【転送魔法】で彼の送り迎えが必須になるが仕方ない。

 もう一つが、貴族に対して少女売買の供給源を断つ為の行動だ。
 大元の供給源(教会)を潰したので、あの貴族も手早い取引はできないだろう。
 ……と、[サドタの街]で現在行なっている作業は二つだ!! 余談だが、狩りにも行っている。

 いつものように、朝方の勤務を終えた後――
 裏庭で橋を作っているドワルドと、川の治水工事を行なっているドワルドの娘フローラと、その下でサブリーダーをやっている男性を呼び出した。

 [サドタの街]の新施設計画をドワルド達に伝えた。

「それで、新店舗の建築リーダーをドワルドさんに……
 橋の建築リーダーをフローラ、治水工事のリーダーを治水班の副リーダーの君に任せたいと思っている」

「社長。
 それは良いが……移動方法はどうするんじゃ?」

「それは、私が【転送魔法】で送り迎えするから。
 ドワルドさんは、確実に定時開始と定時終わりを心掛けて下さい」

「後、人員はどうなってるんじゃ?」

「すでにギルドに手配済みだよ。それと現場は整地と浄化槽の設置は済んでるよ。
 すでに配管は土に埋めた状態で配管の頭だけ地面から出てるよ」

「相変わらず面倒な所をアッサリと片付けてくれるなぁ。社長は……」

「そうだ!! これが設計図ね」と言って、私は新店舗の設計図をドワルドに渡した。

「おう、これで大丈夫だ。
 その仕事受けようじゃないか!!」

「ドワルドさんに、そう言ってもらえて嬉しいよ。
 それじゃ、三人で仕事の引き継ぎをしといてね」

 ……と言って、私はこの場を離れ【転送魔法】で、[サドタの街]の教会へ移動した。

 ん? なんか辺りが騒がしいな。
 あぁ、貴族が街に帰ってきたので、ザワついてるのか?
 アリアが無事か気になるが調べる方法が思いつかない。
 作戦の決行日まで、彼女が無事でいてくれるのを祈るしかない……

 今日は、残りの子供達を全て[セカンタの町]へ移動させる。
 神父は、作戦の決行日の前日に移動させる予定だ。
 誰も、教会にいないと誤魔化せる人間がいなくなるしな。

 教会へ入ると、神父と二人のシスターが話をしていた。

「どうも、ライアン神父。
 状態はお変わりありませんか?」

「特に変わりはありませんよ。
 ハジメ君、ソチラの子供達の様子はどうだい?」

「とりあえず、みんな元気にしてますよ。
 会いに行くたびに、お菓子作ってとか、遊んで……と、元気一杯ですよ」
 ……と言ったら、二人のシスターがホッとしている様子だった。

「ライアン神父。この二人も、この教会の方なんですよね?」

「そうですよ。
 二人ともベテランで子供の世話を基本的にやってくれていたんだ」

「この間は、見かけませんでしたけど?」

「ハジメ君の提案を二人がいたら反対するので、私の判断で孤児院にいさせた」

「あー、なるほど」

「今日は男の子達も連れて行こうと思ってますけど? お二人さんは反対されますか?」

「いいえ、反対しません。
 ただ、私達も子供達と一緒に連れて行って頂けませんか?」

「それは、コチラからお願いしたいところですよ。
 セカンタの町、ギルド、教会からの協力を貰って対応させてますんで」

「「ありがとうございます」」

「それで男の子は何人いますか?」

「35人ですね」

「女の子より少ないんですね……」

「…………」と、私の問いに神父は何も言わなかった。

「男の子は早い段階で孤児院を出るのと、女の子に比べると……男の子は孤児院に入りにくいんです」
 ……と、片方のシスターが言った。

「この教会の立地とか経緯の話ね。
 気分が悪くなるんで、その話は止めておきましょう」
 ……と、私は話を遮った。


「ライアン神父、男の子35人とシスター2名を[セカンタの町]へ連れて行きます。
 今日から6日間、なんとかバレないように過ごしてください。
 作戦の決行日の夜に貴方を迎えに来ます。
 その翌日の夜に――この教会と孤児院を破壊しますので、持ち運ぶ必要がある物を纏めておいて下さい」

「はい、わかりました」

「そしたら、シスターさんは4人ずつ子供達を連れてきてください。
 貴族が[セカンタの町]から帰ってきてるみたいなので、貴族が城に入ったタイミングを見て移動を開始します」
 ……と、神父達に作戦を伝えた。

 ……
 …………

 それから、男の子達とシスターを[セカンタの町]へ【転送魔法】を使い移動させた。

「それじゃ六日後……
 無事に会いましょうね、ライアン神父」

「ハイ。子供達をお願いしますね」と、神父と話して私は[サドタの街]のギルドに移動した。

 いつものように買取倉庫へ移動した。
 ギルド長のレクターが私が来たことに気づいた。

「よっ、にーちゃん。施設の件か?」

「あぁ、それはウチから建築のリーダーを出しますから問題ないですよ。
 それとは別件です」

「そうか、問題ないなら安心だな。
 ……で、別件って事はあの件か?」

「そうですね」

「にーちゃんが、何を企んでるのか知らないが――
 後一週の間、あの貴族に対して注意しとけばいいんだよな?」

「ハイ。一週間あればケリが着くと思います。
 それで、今日は、ギルドからボルグさんを今すぐに呼び出していただけませんか?」

「貴族は、先ほど帰って来たばかりだろう?
 それに、にーちゃんは貴族を嫌ってるだろうに」

「嫌ってるとかそういうのは別問題です。
 情報が欲しいのです――呼び出せるか? 呼び出せないか? ……の返答を下さい」

「ちょっと待っとれ、職員に呼び出しにいかせるから。
 この前の件でギルドに借りが、あるからボルグ様も断りはしないだろうよ」


 ……
 …………

 しばらく、この場で待つと貴族のボルグがやってきた。

「ギルド長。呼び出しと聞いて来たが何用だ?」

「用があるのはワシじゃなく、そこのソイツだ」

「どうも、ボルグさん。
 長旅お疲れ様です」

「あぁ、そういえば【転送魔法】を持っていたんだな。貴公は……」

「単刀直入に聞くよ!! アリアは無事か?」

「あぁ、あの少女の事か? 一応、無事ではあるよ」

「一応というと?」

「道中の長旅の最中も、ずっと慰みモノになっておってな。
 私が数えただけでも10回以上は……」

 猿か、あの腐れ貴族!!
 いや、猿に失礼か?  オークと変わらんな、あの腐れ貴族は……

「今から、お前の城に魔法を打ち込みに行っていいか?」

「オイオイ、よしてくれよ。それだと街にも被害が出るだろ。
 お風呂に入って以来、あの少女は元気になってたので、すぐにどうにかなるというものではないと思うぞ。
 体調が悪い相手でも無茶使いをして壊してしまうのが、あの豚の悪い癖なんでな」

「言い方が気にくわないが――
 とりあえず、一週間は大丈夫なんだな?」

「あぁ、前のように死んだ目ではないよ。
 彼女のあの目は目標を持った眼だよ」

「こっそりでいいから、これをアリアに渡してくれ」

 7本の上級回復薬をボルグに手渡した。

「俺が助ける前にアリアに死なれていたら。
 本気で城を破壊するかもしれないからな」

「本当に、恐ろしいな貴公は……
 貴族相手に、よくもそんな大言を吐けるものだ」

「うーん、一週間後を楽しみにしとけばいいよ。
 それで全て理解できるさ」

 確認すべきアリアの無事を聞けたので、貴族の息子ボルグと会話を終えギルドを離れた。
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