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64話.有名人?

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 [ファービレジ]のギルドから自宅へ帰宅した。
 しばらくの休憩の後に、サドタの街のギルドへ移動した。
 デスワームの件をギルド長のレクターに確認する為である。
 いつものように受け付けには寄らず、買取倉庫へ移動して直接レクターに話しかけた。

「こんにちは、レクターさん」

「よう、にーちゃん。久しぶりじゃないか!!
 1ヶ月も姿が見えなかったんで心配したぞ」

「あぁ、それは[セカンタの町]の新施設の建設が忙しくて、ソッチに追われてました」

「どんな施設なんだ?」

「お風呂って解ります?」

「風呂くらいわかるわい、焼いた石に水をかけて蒸気を出すヤツだよな?」

「それじゃなく、湯浴みの方です」

「馬鹿みたいに費用がかかるだろう?
 貴族位しかそんなことしないぞ!!」

「そうらしいですね。
 それで、一般向けの大衆浴場を作ったんですよ。
 その施設が来月オープンします」

「相変わらず規模のデカい事をするのぉ。
 ところで今日は何の用じゃ?」

「あぁ、そうでした。
 レクターさん。デスワームって、ご存知ですか?」

「あぁ、昼間の砂漠に出没する。ボスモンスターだろ」

「えっ?  知ってるんなら教えて下さいよ。
 出くわす羽目になったじゃないですか……」

「にーちゃんが無事な所を見ると、うまく逃げれたようじゃな」

「ちょっと、買取倉庫の人払いお願いしても良いですか」

「なんじゃ、急に?」

「そのデスワームを討伐してきてます。
 サイズが桁違いすぎて、ここの倉庫の長さをフルで使う羽目になります。
 騒動が目に見えてるので、人払いをお願いします」

「にーちゃんがそういうのなら、そうしておこう。
 少し待っていろ」

 レクターが、ギルド職員に命じて買取倉庫を関係者以外の立ち入りを禁止にした。
 一般の人間はいなくなったが、代わりにギルド職員が次々と見学に来た。

「にーちゃん、待たせたな。
 それじゃ、モンスターを出してくれ」

 この倉庫内で一番長さが取れるスペースに、マジックバック(仮)からデスワームを取り出した。
 モンスターが地面に落ちる際、ズシンと音がして地面が揺れた……

「なぁ、にーちゃん。
 これをギルドにどうしろというんだ?
 魔石は当然のごとく高価すぎて買取不可だ。
 ラッキーインセクトの更に上位仕様だ」

「それなら、魔石は私が持っておくしかないですね。
 デスワームの本体は何かに使えませんかね?」

「ワシがココのギルド長を務めて以来、デスワームを討伐した奴はいないからな。
 とりあえず、解体してみないと用途が決めれない」

「そしたら、魔石は私が引き取ります。
 モンスターの解体をお願いして良いですか? 代金は解体した後に貰うという事にしましょう」

「魔石はギルドが責任を持って、にーちゃんに渡すので解体が終わるまで1~2日待ってくれ。
 とりあえず、解体しないと魔石がドコにあるかわからないからな」

「えっ、そうです?」

[魔力視]で、デスワームを確認すると、魔力を発している魔石をデスワームの体のナカホドに見つけた。

「レクターさん、魔石はソコにあるんで」と、指を指して指示を出した。
 ギルド職員が指定した場所を解体して確認すると魔石があった。

「ギルド長。魔石がありました!!」

「お、おう……」

 レクターからデスワームの魔石を渡された。

「なぁ、この魔石を売るつもりはないか?」

「いや、さっきギルドで高額すぎて買い取れないって言ったじゃないですか。
 なにかの商談にでも使いますよ」

「そうだな。ワシ達はこの解体分を片付けるとするよ」

「他の砂漠産のモンスターの買取も、お願いしたいんだけど?」

「この状態で出来ると思うか? にーちゃん」

「デスヨネー、日を改めます」と言って、俺はギルドを後にした。
 ギルドから出る際にヤケに注目を受けていたが気のせいだろう。

 【転送魔法】で自宅へ帰ってきた。[クリア]の魔法を使ってから自宅へ入る。
 エミリーに服の件でお礼を言わないとな……

「ただいま」

「「おかえりなさい」」と、いつものように彼女達に返事をしてもらえた。

「エミリーに作ってもらった服なんだけど凄く良かったよ。ありがとう」

「ハジメさんに、喜んでもらえてよかったです」

 軽く二人の世界に入りそうになったのを見て、「むー」と言いながらシェリーがむくれていた。

「シェリーの料理も美味しかったからね」と言って、むくれるシェリーを撫でた。
「えへへー」と照れながら、シェリーは俺に抱きついてきた。

 今日の出来事は彼女達には黙っておこう。
 ボスモンスターと戦う羽目になったとか言うと心配されるだろうし。

「ハジメさん、シェリー。食事の用意が出来てるからテーブルに着きましょ」

「「はーい」」

 三人で食事のを終え、まったりと夜の時間を過ごしていた。

「エミリー、大きな壺か甕とかはどこに行けば買えるのかな?」

「食器屋で注文すればオーダーできると思いますよ」

「それなら何度か行ったことあるな」

「何に使うつもりなんです?」

「この前お風呂で石鹸とかシャンプー使ったでしょ、アレを大量生産しようと思ってね。
 保存してないと劣化しちゃうからね、元が調味料だから。
 冷蔵庫のあるテナントのスペースを一つ使って、そこで製作と保存しようと考えている。
 場合によったら、シャンプーとリンスを売るのもアリだし」

「ハジメさん、石鹸は売らないんですか?」

「石鹸を直接売っても利益は少ないからね。
 手間を加えないとね」

「それが良いと思います。
 石鹸は高級品ですし国が製造方法を秘匿してるので……」

「そうなの? お風呂で石鹸使うの拙いかな?」

「売るわけではないですし。
 あの施設が誰のお店か理解さえすれば、国も文句言えないと思いますよ」

「あはは、国が文句言えないか知らない間に有名人になったみたいだ」

「少なくとも、[教会]と[ギルド]は把握してるみたいですよ」

「王都というより――
[フォース城]の国王は教会の意見を聞き入れる方なので、ハジメさんの存在はすでに国王の耳に入ってると思いますよ」

「……そっか。
 余計な事考えても進まないし、明日は食器屋へ行く――これで決まりだ」

 ……
 …………

 その日はそのまま休み。翌日に食器屋へ向かった。

 食器屋へ入ると、すぐに挨拶がきた。

「いらっしゃい!! 今日は何を探してるんだい、お客さん」

「かなりの量が入る保存用の壺が複数欲しいんだが?
 今、お店に在庫はあるかい?」

「複数ねぇ、あるにはあるよ。見ていくかい?」

「あぁ、頼む」

「それじゃ、ついてきな」と言われ、店主に誘導されるがまま、ついていった。

「ここだよ!! 欲しいものがあるなら言ってくれ。
 どれも、一つ100ゴールドだ」

 同じような形で、丁度いいサイズの壺が5つほど固まっていた。

「あそこにある、5つの壺を全て買います」と言って、500ゴールドを店主に渡した。

「配送は?」

「しなくて大丈夫」

 バッグを叩いてから「これに入るから」と、俺は答えた。

「それじゃ世話になった。
 壺が足りなくなったら、また来ます。そのときはよろしく」

「あぁ、また来てくれよ」と話をして、食器屋を後にした。

 町で色々と見て回り、使えそうなハーブを大量買い付けして新施設へ移動した。
 施設のテナントは、各店舗が忙しそうに営業開始をするための準備を始めていた。

 イマイチ人気が出なかった余りのテナントスペースを使用して石鹸の製造スペースを作ることにした。
 まぁ、石鹸作りに必要なモノは、水の魔道具と桶と調味料とハーブと石鹸くらいか?
 排水溝のある真上に水の魔道具を設置して、俺はひたすら石鹸シャンプーと酢リンスの製作を続けた。

 うーん、割と簡単な作業だな。
 この作業と施設の運営業務を誰か、やってくれる人いないかな?
 風呂が好きで、この施設を純粋に喜びそうな人――心当たりが一人いるな。
 今日は、キャリーはお店に来てたよな? 仕事終わる前に彼女と話してみるか。
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