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63話.砂漠のボスモンスター

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 先日は誕生日のお祝いを嫁2人にして貰えて色々と嬉しい1日だった。

 そんな、喜びに満ちた展開とは一転し、ココは日中の照りつける日差しの中の砂漠である。
 まさにこれが、天国から地獄という状況変化なのだろうか?

 昨日、エミリーに手作り装備のプレゼントを貰い、ソレを試す為にクソ暑い砂漠に日中に来ている。
 夜中にくれば砂漠は快適だが……それだと、この装備の効果を実感できないので、この時間帯に狩りに来たというわけだ。
 装備の効果を確認する為に[魔力視]で確認すると、俺の周りに冷気の魔壁(魔力の壁)が出来ている。

 そう、照りつける日差しの砂漠のど真ん中にいるにもかかわらず、俺は快適に過ごせていた。
 もしかして、コレって凄い装備なんじゃ?
[ファービレジの村]のギルドで、売った半分の羽衣を買い戻せないかな?
 ……と考えていたが、過酷な日中の砂漠でも問題なく狩りができるので、狩りを行う為に【マップ】の確認を行った。

 すでに、4~5ヶ月ほど赤い芋虫ラッキーインセクトの討伐をしていないので、5匹の赤い芋虫の存在を【マップ】で確認できている。

 ん? ラッキーインセクト以外に、一つだけ大きな魔力の反応がある。
 砂漠には夜中に狩りに来てるが……[魔力視]による、このモンスター反応は初めて見た。

 これは、日中の限定のモンスターかもしれない?
 危ないようなら【転送魔法】で逃げるとして、様子だけ見てみようかな。
 モンスターの確認をすることを決めた俺は、砂漠の中のモンスター反応を目指し、ひたすら進んでいった。
 そのモンスターに近付くにつれ空気が重く感じるようになった。
 もしかして、コレってヤバい奴カモ? 普段狩りなれてる狩場だから、ちょっと調子に乗ったかなと思い始めた。

 クソデカいサンドワームみたいなモンスターが、かなり離れた場所からでも視認できた。
 
 この位置から視認出来てあのサイズとか? この前倒したアイスドラゴンのサイズ比じゃないぞ!!
 かなり離れたこの位置からでも[鑑定]はかかるかな? ……と考え[鑑定]を試してみた。

 名前:デスワーム  

 属性:土
 特殊タイプ :ボスモンスター
 弱点:火属性

 あるぇ? ボスモンスター? ボスモンスターって、強いモンスターだよな。
 続けて疑問に思った事を考えたら、[鑑定]スキルが返答を返してきた。

 なんで、こんな人気の狩場スポットにボスがいるのかな?

(A.暑い思いしてまで、みんな狩りに来ないから)

 なんで、夜には出てこないのかな?

(A.夜中は地中深くに潜ってるから)

 今、すでに【転送魔法】が、使えないのはなんでかな?

(A.ボスモンスターからは、【転送魔法】では逃げられない)

 いやぁ[鑑定]スキルは便利だなぁ。 クソッタレ!!

 デスワームがコチラに気づき動き始めた。
 逃げれないとかフザケルナ!!  と、俺は軽く毒付いてしまった。

 アイツが近付く前に、俺ができることは火属性をミスリルの剣にまとう事と支援魔法を使う事だ!!
 それと、奴の前に大壁を作る事だ!!

 火属性を剣に付与し、近づいてくるデスワームに対して[アースウォール]で、土の大壁をを作り上げた。

 土の大壁にデスワームがぶつかってきた。
 ドゴォ!!ドゴォッと、デスワームが壁に体当たりする鈍い音が聞こえる。

 奴は、まだ強化された土壁を崩せそうにない。
 もしかして、コレは[エクスプロージョン]の魔法で狙い撃ちできるチャンスか?
 モンスターが土壁にぶつかる大きな音を聞きつつ、[エクスプロージョン]の魔法のを詠唱し始めた。

 ……
 ………

 いけっ!! [エクスプロージョン] 奴を吹き飛ばせ!!
 土壁と一緒に[エクスプロージョン]の魔法で、デスワームを吹き飛ばしたつもりだった。

 壊れた土壁の下から、ズボオォっとデスワームが頭を出してきた。
 魔法が放たれた瞬間に砂に潜って、デスワームは魔法のダメージを軽減してきたのである。

「げぇぇぇぇぇえ!!  うっそだろ、オイ」

 俺はモンスターから逃げているが、モンスターも俺を追いかけてくる。
 モンスターとの距離が引き離せない――そのせいで、【転送魔法】が使えない。
 ボスモンスターから逃げ続けて、[サドタの街]の付近に連れて行こうものなら、大惨事は免れない。

 走りながらでも考えろ!!

 [エクスプロージョン]の魔法は、砂に潜られてダメージを軽減される。
 このまま逃げても、距離を離せないのでラチがあかない。

 なんとかしないと……

 走って逃げながら次の手を考えていた。
 相手のスピードを落とす[スピードダウン]の魔法があった!!
 
 なんとか、次の手を思いつき即座に[スピードダウン]の魔法を放つ。
 魔法が命中し、若干ではあるがデスワームの移動速度が下がった。
 これで、走りながら考える事に多少の余裕が持てるようになった。

 あのサイズのモンスターだ――[エクスプロージョン]の魔法で吹っ飛ばすしか方法が思い浮かばない。
 しかし、そのまま打つと奴は砂に潜ってダメージを軽減する。

 強化された[アースウォール]の壁は、奴の体当たりに耐えれる強度があった。
 あの壁の強度の特大サイズの槍があれば、アイツに刺さるかもしれない?

 [アースランス]の魔法は、魔力を込めて強度はあげれるがサイズは大きくできない。
 [アースウォール]の魔法は、魔力の掛け方次第で強度も形も変更出来る!!

 そうだ、この場面で選ぶのは[アースウォール]の魔法だ!!
 槍だ、槍のように鋭利に鋭く土の壁よ出来てくれ!![アースウォール] の魔法に魔力を込め魔法を放った。
 狙い通りに地面から突き出るような土の槍ができたが、あからさますぎる罠なのでデスワームはその横を通りぬけて俺を追いかけてきた。

 あと、ワンクッション入れて奴を騙せ!!
 最初、奴は警戒せず土壁に体当たりをしてきた。

 あっ、繋がった!!

 再びデスワームから距離を取り、最初に[アースウォール]の魔法で、一撃で壊される薄めの壁を作った。
 そのすぐ後ろに、[アースウォール]の魔法で作った土の大槍を設置した。

 デスワームが来る!!
 ドガァアン!! と、音を立てて壁がモンスターの一撃でぶち破られた。

 その瞬間、土の大槍にデスワームが突き刺さり砂漠がモンスターの血で染まった!!

「覚悟しろよ!!デスワーム」

 土の大槍に突き刺さり身動きの取れない状態のデスワームに、[エクスプロージョン]の魔法が放たれた!!
 ズドォオオン!と爆音が響き、あたり一面の砂が吹き飛ばされていく。

「やったか?」

 黒く焦げているデスワームが、体を伸ばしコチラを攻撃してこようとしてきた。
 くそっ、仕留め損ねたか!! 防御か?   回避か?  どっちだ……と、俺はデスワームの攻撃に対して身構えた。

 デスワームの体に刺さっている土の槍が折れ、デスワームは地面に叩きつけられて最後は絶命した。

 初めて戦闘で恐怖を感じたぞ!! もう、デスワームとは戦いたくはないな。
 一応だが念の為に、[魔力視]と[鑑定]で討伐したデスワームを確認する。

 [鑑定]で詳しくデスワームの説明を見てみた。

 ラッキーインセクトが一年間倒されず成長を続けた最終形態。

 えっ? あれって、ラッキーインセクトの成長した姿なのか?
 デスワームを倒した事により、レベルが34から一気に36まで上がっていた。

 商人スキルで、ビッグボイス(文字通り大声である)を覚えた。
(用途は様々、気合い上昇、連絡、連携いろんな用途が可能)

 新しい魔法で――

 ロックスパイク[土系設置魔法]
 アイススパイク[氷系設置魔法]

 設置系魔法の2種類を覚えた。

 冒険はしないと言っておきながら、今回はボス戦をやってしまったな。
 他に、デスワームいないだろうな?
 【マップ】を確認するが、デスワームはいなかった。

 フゥ……。
 そう考えると、5ヶ月前に出てきた赤芋虫が一番デスワームに近いんだな。
 ラッキーインセクトが成長を終える前に全滅させよう――それで、レベル40まで届くはず!!
 討伐したデスワームを【アイテムボックス】に入れた。

 今までデスワーム相手に必死で逃げ回っていたが……
 エミリーが作ってくれた装備があったから、砂漠での状態異常を防げた。
 コレは、良いモノだと理解する事が出来た。

 あの頃は価値がわからなかったが、今ならモノの価値がわかる。
 もし買い直せるなら買いなおそう、[ファービレジの村]のギルドへ行ってみるか。

 【転送魔法】で、ファービレジのギルドへ移動した。
 いつもなら、ギルド長の列に並ぶが……
 今日は長蛇の列が出来ているお姉さんの列に並んで、しばらく列で待っていた。

 ……
 …………

 しばらくしたら、受付のお姉さんが俺の順番の呼び出しをしてきた。

「次の方どうぞ……」

「あっ、どうもお久しぶりです」

「ニカイドウさん、久しぶりですね。
 ギルド長は、いつものお店に行ってますよ」

「今日は、貴方に用があってきました」

「すいません。
 私は婚約者いますので、そういうのはちょっと!!」

「って、違います」と言って、俺は即否定した。

「それでは、要件って何ですか?」

「最初にギルド登録した際に羽衣を鑑定してもらって、ギルドに売ったと思いますがソレを買い直したいと思いまして」

「あー、コレですね」と言って、ギルドの受け付けさんは女神の羽衣を棚から取り出した。

「なんで、まだ羽衣があるんですか?
 ギルドで売ったりとかはしなかったんですか?」

「ギルド長がアイツはこのアイテムの価値がわかる男だから、取っておけば10倍の値段でもつけると言ってたので保存してました」

「あはは、ほんと参ったなぁ。
 確かに価値がわかった以上10倍の価格でも出しますね。
 5万ゴールドで良いですか?」

「えっ、本当に出すんですか?」

「そのアイテムに、それだけの価値があると見抜ける男に成長したんですよ。
 この村のギルド長の予想通りになったんです。払いますよ5万ゴールド!!
 最初に、ここで頂いた5千ゴールドがあったからこそ今がありますから」と言って、俺は5万ゴールドを受付カウンターに置いた。

 女神の羽衣をギルドのお姉さんから手渡された。
 最初頃に金策の為に売った女神の羽衣の半分を一年ぶりに買い戻した。

「これで、今年のボーナスは確定ね」と小声で、お姉さんが言っていた。

「どうも、それじゃ失礼しますね」

 そして、ギルドを出て【転送魔法】で自宅に帰った。
 今日は流石に疲れたな……ちょっと休憩してから[サドタの街]のギルドに行くとしよう。
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