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53話.いざ、氷の大陸へ

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 女神様の『若奥様事件』の一件が済んでから1ヶ月が経ち、新施設の工事は2ヶ月目の作業行程に進んでいる。

 ドワルドに依頼されて柱や壁を作るときは、MPを惜しむ事なく[アースウォール]の魔法で、手伝いをした結果。
 施設の外観は、ほぼ出来上がってきていた。そんなこともあり、新施設の建築は順調に進んでいる。

 ドワルドが私に話しかけてきた。

「なぁ、社長。
 設計図にある、ここのテナントと書いてある場所なんだが?
 ここは部屋を区切るだけでいいのか?」

 あっ!? テナント内の内装というか、調理スペースを入れる必要がある事を忘れてた。
 設計図を見てテナントの広さは、調理スペースが入るくらいの広さと、冷蔵庫と冷凍庫は作れそうだなと判断した。

「ドワルドさん。
 ここのテナントは、基本的にウチのお店と考えは同じです。
 裏方で調理して商品をカウンターで渡すスタイルね」

「このテナントという場所に、お店をリニューアルした時の感じでハメ込むんじゃな?」

「そうそう、その通り」

「スペースにも余裕あるし、可能じゃろ」

「各テナントに、地下室は?」

「無理じゃ、社長が基礎工事をしてるから、崩す方が一苦労する」

「そしたら、各テナントに冷蔵庫と冷凍庫を分けて設置する事は可能?」

 ドワルドが設計図を見て、「行けるじゃろ」と言ってくれた。
 立ち退きをした店舗の7店舗が入るとして、テナントスペースが10店舗ある。
 残り三店舗は、新規で募集することにしよう。

 10店舗分のアイスタートルの魔石と、アイスウルフの魔石と、アイスバードの魔石の各20個ずつ。
 それと冷凍庫用に、アイスドラゴンの魔石を10個手に入れる必要がある。

「冷蔵庫の用の魔道具はコチラで用意しとくから、テナント用のスペースの工事を引き続き任せたよ」

「おう、任せとけ」

 あっちゃー、冷蔵の魔道具を用意しないとなぁ。
 魔石が必要になったので、魔石屋がある[サドタの街]のギルドの建物へ移動することにした。
 そして、この前利用した魔石屋へ移動して、魔石を買うことにした。

「いらっしゃい、って……お主か」

「はは、お久しぶりです」

「魔石を買いに来たのか?」

「そうですね。
 魔石屋に来たんですし、それしかないですよね」

「それもそうじゃ、なんの魔石を用意しようか?」

「この前と同じ、冷蔵庫10セット分と、冷凍庫10セット分の魔石を……」

「ある訳ないじゃろ!!」

「え?  ないんですか?」

「冷蔵庫の分は1組あるが、それじゃ意味ないんじゃろ」

「そうですね……」

「そもそも、アイスドラゴンの魔石は在庫切れじゃ」

 あらまぁ、どうしたモノだろう……

「どうしても魔石が欲しいなら、下の階のギルドで主が依頼すればええじゃろ」

「そうですね、そうします。
 すいません。冷やかしになってしまって」

「気にするな、そういう事もあるさ」

 この場を離れて、ギルドへ移動した。
 ギルドの受け付けには長蛇の列が出来ていた。
 あの長い行列の受付に並ぶのか、面倒だな……
 よし、俺は受付の列を見なかった事にした。

 昨日、砂漠で討伐した分あるし、買取倉庫でギルド長に直接に相談しようかな。
 列に並ぶのを回避する為、ギルドの受付を見事にスルーして、そのまま買取倉庫へ移動した。
 レクターはいつもの場所にいた。

「レクターさん!!」

「なんじゃ、ワシにようか?」

「買取はついでなんですけど、少し相談に乗ってもらいたくて」

「なんじゃ? 言ってみろ」

「えっとですね、冷蔵庫用の魔石を10セットと冷凍庫用の魔石を10セットの計20セットの魔石をギルドに用意していただけないかなと思ってます」

「ブッ!! 何を言っとるんじゃ」

 えっ、ギルド長に吹き出される位に俺は突拍子も無い事言ったのかな?

「えっ? 本気ですけど?」

 レクターが俺の目を見てきた。

「冗談にしか聞こえないが、冗談を言ってる訳じゃなさそうじゃな。
 それなら期間は、一年ほど掛かるが大丈夫か?」

「ダメです!! 3ヶ月以内でお願いします」

「無理じゃ!! 余裕を持って狩りをできる人材がこの街のギルドに居ない。
 現状だと一年は少なくとも必要だ」

「どうにか、なりませんかね?」

 レクターは、ニヤリと笑みを浮かべた。

「余裕を持って狩りを出来る奴が、いるじゃないか目の前に」と、俺を指差しながら言った。

「ふぇ?」

 俺はキョロキョロと周りを見渡して見たが誰もいない。

 アレッ? もしかして、俺のことか?

「なぁ、ギルド証を提示しな。にーちゃん」

「はぁ? まぁ、いいですけど」
 レクターに言われるがまま、ギルド証をに渡した。

「レベル32か、思った通りだ……」

 あれから、砂漠で狩りつづけていた成果もあり、レベルが31から32へ上がっていた。

「どういう事なんです?」

「毎日のように大量のモンスター狩ってくる奴の、レベルが低い訳がないってな」

「そういう事ですか……
 でも危険なんでしょ?」

「それほど、危険という訳でも無いさ――
 レベル15位のパーティが普通に狩りをしてるぞ」と、俺に新しい狩場の情報を提供してくれた。

 続けて、レクターが小さく俺に聞こえないように言った。

「1日、1~2匹程度だが……」(小声)

 更に、レクターさんが話を続けた。

「にーちゃんの持ってる、その武器はこの街でも最上級のミスリルの剣だろ。
 武器屋に言われたことないか?  ドラゴンでも倒すつもりかと?」

『てっきり、ドラゴンでも相手するかと思ってたよ』
 ……という、セカンタの町の武器屋の台詞を思い出した。

「言われましたね。確かに……
 でも、なんでドラゴン用の武器なんです?」

「ミスリルの剣の別名は魔剣なんだよ。
 魔法伝導率が高い武器だから、パーティーに魔法使いがいれば武器に魔法を付与出来るのさ」

 考えた事もなかった。
 伝導率が高いから、魔法の発動用だと思ってた。

「つまり、この剣に魔法を付与すれば、アイスドラゴンと戦えるって事です?」

「そうじゃな、あと他のモンスターは砂漠のモンスターと対して強さに違いはないさ。
 防寒装備と装備整えていけば、なんとかなるじゃろ」

「アイスドラゴン相手に、付与するのは属性風か雷ですよね?」

「それがな、雷だとアイスドラゴンの皮膚が破れないので、実は火属性の方が有効なんじゃ」

「あぁ、文字通り氷を溶かすわけですね」

「そういうことじゃな」

「それで、3ヶ月以内で片付けたいなら私が行くしかないと」

「心配なら装備を整えてから見学ついでに、ドラゴン以外と戦ってくればいい。
 それに【転送魔法】もあるし、にーちゃんが危ない事はないだろう」

「たしかに、言われてみればそうですね」

「よし、装備を見せてみろ」と、レクターに言われたので防具を見せた。

「防具は鉄製か、直撃を食らわなければどうにでもなるじゃろ。
 ただし、防寒具が必要だな。ちょっと待ってろ」と言って、レクターがこの場を離れて行った。

 しばらく待つと、レクターは防寒具を持ってきてた。
「よし、これを使え!!」と言って、俺に防寒具を投げ渡してきた。

「えっ? いいんですか」

「氷の大陸に行ける奴が増えるのは、ギルドとしてありがたい事なんだ。
 それとな、最近は砂漠に狩りに行く奴が激減しているにもかかわらず。
 とある人物が狩りまくってくるから、砂漠のモンスターの価格が安定しててな。
 とある人物さんよ、ついでに氷の大陸も攻略してくれ」

「一つ、いいですか?」

「なんだ?」

「砂漠の狩場で、狩りをしてた人達って何処に行ったんです?」

「オーク狩りに切り替えたり、氷の大陸に挑戦したりだな。
 後は、東の森、別名死の森を抜けた先にある【王都】に移住してるらしいな」

「死の森って、ヤバそうな名前ですね……」

「いや、これといって強いモンスターが出るわけじゃないんだ。
 まぁ、この話は今度にしよう」

「そうですか……」

「せっかく装備を譲ったんだ。
 にーちゃんは氷の大陸を攻略してこい」

「防寒具をくれるんですか?」

「おう、大事に使ってくれよ」

「ありがとうございます、助かります」

 俺が北の氷の大陸を攻略するべく、レクターに梯子を外されていたのだった。
 あれ?  これって強制で俺が狩りに行く流れなのでは?
 仕方ないなぁ……1年は待てないし行くしかないな――いざ、氷の大陸へ!!
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