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47話.一攫千金

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 お店の二階へ上がりエミリー達と合流した。
 まず最初にやることは、彼女達に新しい装備を渡すことだ。

「今狩りに行く前に、二人に新しい武器を渡すよ」

「私は、この前の装備でも良かったのですが」
 ……と、言って遠慮をするエミリー。

「ダメダメ、何が起きるかわからないのが戦闘なんだから。
 武器ごと叩き切れる鉄製とかは、俺がエミリーに持たせたくない。
 何かあった時に身を守れるのは、信頼できる武器だからね」

「はい、わかりました」

 エミリーは納得してくれた。
 まず、始めにミスリルの槍をエミリーに渡す。

「これって、ハジメさんの武器と同じ材質じゃ?」

「よくわかったね。
 ミスリルの槍だよ。鉄製の武器なんかは、この前のように真っ二つだよ」

「高かったんじゃ?」

「まあ、ボチボチかな?
 それでも、二人に使ってもらう事を考えたら安いものだよ。
 今月一杯は、二人は狩りに同伴するだろうしね……」

「ありがとうございます」

 次に、シェリーにミスリルロッドを渡した。

「これは、シェリーにだ。
 魔法使う時に、コレを使えば魔法の威力が上がると思うよ」

「わーい、お兄ちゃん。ありがとう」

「それと、魔法使いの正装と言いますか……
 シェリーに着て欲しい服があってだね」

「どんな服ー? 見せてー」

「コレなんだが……
 どうだろう」

 魔女っ子のコスチュームをシェリーに渡す。

「着替えてくるー」と言って、彼女は寝室に着替えに行った。

 しばらくして、「着てきたよー」と、俺の前に魔女っ子が現れる。

「ハジメさん、これって?」

「魔法使いっぽい衣装を手に入れてきた。
 防御力はほぼないです。ただ、こんな感じに可愛いだけです」

「お姉ちゃん。シェリー可愛いって」

「うん、可愛いわよシェリー」

「えへへー」と、シェリーは満面の笑みをしていた。

「エミリーさんに着てもらいたい服もありますんで、それは今度」と、エミリーに耳打ちした。

「はい、どんな服なのか楽しみです」と、彼女が耳打ちで返して来た。

「二人で内緒話、ズルいー」

「ごめんごめん」

 ちょっとだけむくれて、腕を組むポーズをしたシェリーは非常に絵になっていた。

「私達、ハジメさんにプレゼントばかりされてるんですけど……
 ハジメさんは、欲しいモノないんですか?」

「うーん、欲しくて必要性を感じたら、即買っちゃうしなぁ」

「それなら、ハジメさんの誕生日っていつですか?」

「うぐっ!!
 俺のハジメって名前の由来は、一年が始まって初めの日に生まれたからはじめなんですよ。
 年の初めの挨拶と誕生日が一緒に来るんです」

「……ということは、5ヶ月後なんですね」

「まぁ、そうなりますね」

「ハジメさんの誕生日には私がプレゼントしますから!!」

「シェリーもプレゼントするー」

「あはは、二人とも楽しみにしてます」

「狩りに行く前に腹ごしらえしましょう。
 料理を作ってますから」とエミリーが言って、テーブルには料理が並んでた。

「エミリーさんが作ってくれたの?」

「はい」

「ありがとう」

「シェリーも手伝ったよー」

 シェリーの頭を撫でて、「ありがとう」と言って、食事をとった。

 エミリーが食器を洗っているが――
 工事が始まって大分煩くなってきたので、早くココを離れよう。

 エミリーが食器を洗らい終えて、いつも通り狩りに行くことになった。
 いつも通りに夜の砂漠だ。

 適温で狩りやすいので、松明たいまつを持った冒険者が、そこかしこにいる。

「シェリーどうする?  最初から肩車するかい?」

「最初はしなくていい」

「わかった」

 ちょっぴり残念だ……

「ここは人が多いから、一旦ここから離れようか」

 [スピードアップ]の魔法を使って、人が少ない所まで移動した。

 【マップ】を見て見たが、ラッキーインセクトの表示がなかった。
 いないなら、普通に狩りをするしかないよな。

 その日は、普通に狩りをすることになった。
 シェリーはコケることなく、肩車をしないまま狩りが終わってしまった。
 狩りの最中、エミリーもヨロイ蠍を槍で倒したりと活躍を見せていた。

 嫁さんの二人の順応性が高い。
 万が一の為に猛毒対策もしてるので問題はないが、二人が冒険者になるとか言いださないか心配だ。
 [魔力視]の効果で狩りの効率が上がって、かなりの数のモンスターを倒してしまっていた。

 明日は、[サドタの街]のギルドに行かなきゃな。
 モンスターを溜めて渡すとレクターさんに説教されるからな。
(すでに何日か、討伐したモンスターを溜めている状態です)

「今日もいい時間、だからそろそろ帰ろうか」

「「はーい」」

 いつものように、[クリア]の魔法を使ってお互いのベッドに別れて寝ることにした。

 ……
 …………

 朝起きて、お店で挨拶をする。
 その後に、裏の畑に水やりをしてから[サドタの街]のギルドへ向かった。

 今日は、受付に並ばずに直接、買取倉庫へ向かった。
 ギルド長がいないか買取倉庫を探した……ギルド長がいた。

「レクターさん。
 おはようございます」

「なんじゃ、にーちゃん。
 久しぶりじゃの、砂漠へ狩り行ってなかったのか?」

「いえ、ほぼ毎日行ってましたよ」と俺が言うと、レクターに凄く嫌そうな顔をされた。

「聞いてくださいよ。
 あれからラッキーインセクトを2匹倒したんですよ」

「えっ? 冗談じゃろ?」

 3匹のラッキーインセクトを取り出して、ギルド長の前に置いた。

「なぁ、にーちゃん。
 1匹ギルドに卸してくれないか?」

「1匹なら良いですよ。
 ちなみに1匹いくらなんです?」

「なんじゃ!!
 砂漠を血眼になって、探し回ってる連中を知らんのか?」

「ああ、そいつらがウチのパーティが倒したラッキーインセクトを倒したと騙ってきたんでお説教してあげましたねぇ。
 ……それで、いくらなんです?」

「魔石とモンスターの状態次第で、5万ゴールドだ」

 うげっ!! この赤芋虫。1匹で5万ゴールドって、500万なのか?
 あぁ、砂漠の狩場が人気なのは、みんな一攫千金狙ってるんだな。

「3匹で好きなの選んでいいですよ」

「どれが、一番最初に倒したヤツだ?」

「1匹目は剣で切ったので、魔石が半分になったヤツですね」

「それでかまわん、十分に状態もいいから満額出せる」と言われたので。

 残り2匹は、マジックバッグ(仮)にしまった。

「その前に、他のモンスターも買取お願いしていいですか」

 実は、これが本題だ。

「あぁ、ここに討伐したモンスターを出して行ってくれ」

「はい」

 一週間溜め込んだ成果もあり、隣の買取スペースまで討伐したモンスターで占拠してしまった。

「デザートブルは、解体してミンチにするんだよな。
 精肉する際に出る魔石はどうするんだ。
 今までの分も、にーちゃんの名義で保存してるぞ、うちのギルドの人間が『あの人、肉しか持ってかない』と嘆いてたぞ」

「あー、魔石が買取もできない状態で余ってるんですね。
 今度からは魔石と肉を貰うようにします」

「ほら、今までの分はこれじゃ」

 ウッハ!! 布袋に魔石がズッシリと詰まっていた。

「この魔石って売れるんです?」

「火を起こす時の定番の魔石だぞ!!
 当然、売り物になる」

「そしたら……
 この魔石を売って、ギルドに精肉の作業代に当てるのは可能です?」

「可能じゃ。
 だが1匹の魔石の代金で、3匹位は加工してるぞ?」

「今後はデザートブルの、魔石の取り分はギルドが2/3で、私が1/3で加工作業をやってもらいましょうか」

「内訳は、逆じゃなくていいのか?」

「そっちも、営利目的でやれなきゃ美味しくないでしょ。
 かなり無理を言って精肉お願いしたようなものですし、魔石の件は完全に頭から抜けてたんでそれでいいですよ。
 デザートブルの肉を無料で精肉してもらえると考えれば、こちらとしてはラッキーですよ」

「そうか、それならこちらとしても助かる。
 デザートブル以外は全部買取でいいんだよな?」

「はい、お願いします」

 ラッキーインセクト2匹を、アイテムボックスに残して討伐したモンスターを売り払った。

「肉と魔石は、夕方取りに来い」と言われて、討伐したモンスターの代金をもらった。

 ブッ!! 6万ゴールド以上あるぞコレ、金額の大半は赤芋虫が要因だ。
 今回の稼ぎは施設を作る時の費用に当てるか……等と、考えながら[サドタの街]から離れた。
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