上 下
23 / 198

21話.風呂作り計画~その1~

しおりを挟む
 初日のオープンの大盛況で終わった。
 翌日以降は、初日限定のドリンク無料サービスが無くなる。

 なので、二日目以降は客足が落ち着くであろうと予想していたが、その予想は見事に覆された。
 予想を覆した理由は主に3つだ。

 ・物凄く早く提供される料理。
 ・低価格でも満足できる食べ物。
 ・癖になる飲み物。

 更に、ギルドに行くついでに寄る事ができる、好立地という事も良かった点だ。

 コーラに対するリピート率と、曲芸めいた商品の提供スピードが話題となった。
 話題となったおかげで、お客がお客を呼ぶ状態になり店の中は有難い事にほぼ満席の状態が続いていた。

 ここまで、繁盛してしまうと他の店舗からの妨害でもありそうなものだが、初日からギルド長と町長がワレ先に並ぶという事態である。
 このお店はギルドと繋がりがあるのが明白であるし、教会のシスターまでお店の手伝いに来ているのである。

 これを、下手に妨害をしたりすれば悲惨な目にあうのが想像できる。
 その結果――手出しできないお店とお店を営業する人間ならば容易く理解する事ができた。
 そのおかげもあり、トラブルもほぼ無いままの状態の盛況なまま、一週間ほど営業を続けることができた。

 今日は、お店がお休みという事で、くだんの地下室作りの準備をしている。
 [アースウォール]の魔法を利用して、庭の土を掘り込んで行き小川の部分まで通路を掘って行く。
 通路は少し角度をつける用にして作っていった。
 通路にパイプ状の雨どいを複数設置して、[アースウォール]で雨どいの付近を土壁を強化してから通路にした部分を[アースウォール]の魔法で埋めもどした。

 これで地下室の排水問題はなんとかなるな、空気穴に関しては職人の方達にお願いしよう。
 地下室を作るために、[アースウォール]で自らを中心に掘り込んで四方を埋め戻した為、四方を壁に囲まれてる。

 あっ、出れない。

 ……と、自分で掘っておいて、自ら閉じ込められる失態を演じたが【転送魔法】で抜け出した。

 裏庭には工事担当の人間しか、入れないように柵を作っておいた。
 とりあえず、地下室作りの下準備もできたし、ギルドに行ってみるとしよう。
 ギルドに移動して、ギルドの募集板を見てみたがウチのお仕事の募集の掲示されていなかった?
 
 ど、どういう事だ?
 状況がつかめなかった俺は、案内のお姉さんにギルド長を呼び出してもらった。
 受付のお姉さんに呼び出され、俺の前にギルド長が歩いてきた。

「やぁ、なんのようだい?」
 ……と、呼出しをされる心当たりがないような感じにギルド長が話しかけてきた。

「ウチの仕事募集の張り紙が貼られてないけど?」

「それなら、4日目で募集打ち切ったよ」

「ふぇ?」

「高給与で飯付きの人気店とくれば、働き手は山のように来るだろう」

「高給与って、いくらに設定したんですか?
 ギルド長を信じて、お任せにしたけど……怖いなぁ」

「ハハッ!! 
 一般のお店より、ちょっと色をつけた程度さ」

「なら、いいですけど。
 それはそうと、裏庭の地下室作りの下準備ができたんで、明日から仕事に入ってもらっていいですよ。
 地下の空洞部は[アースウォール]の魔法を利用して、すでに掘ってありますんで」

「君、本当に商人か?
 いや、もうなんだろうなぁ。君を商人の範疇に入れとくと、コッチが頭痛くなるよ」

「マジックバッグ【アイテムボックス】に、積み上げた土は放り込んでいますし……。
 穴掘るのは、自分の使える魔法頼りで楽に済みましたし。[アースウォール]の特徴で魔力込めれば込めるほど土壁を強化する特性を使えば壁も頑丈にできましたからね。
 こんなの日曜大工の範疇ですよ。
 あっ、最後の仕上げの天井と壁は魔法で仕上げした方がいいのかな」

 ……と、言ったらギルド長に呆れられた。

「せっかく雇ったんだし、メンバーに仕事させてやれよ」と、ギルド長が言った。

「ああ、そうですよね。
 明日から、作業をよろしくお願いします。
 明日はオープンの2時間前の8時に、集合でお願いしますね。
 仕事の説明があるんで……」

「好きに加工していいとはいったが、本当にやりたい放題だな」と言って、ギルド長が呆れていた。

「飲食店ですし、冷蔵室が作れたら便利なんですよ。
 スペースの空きがないんで地下に作るんですけどね。
 そしたら、明日からお願いしますね」と言って、ギルドを後にした。

 お店に帰ると、エミリーが俺が帰宅するのを店前で待っていた。

「どうしたんだい?  今日は店休日だよ」

「この前に言ってた、カーテン作りが終わったんで取りに来てもらえませんか?」

「ああ、ほんと? 
 ありがとう。 夜中に部屋の灯りが点いてるのに、部屋が覗かれて少しヤナ感じだったから助かるよ」

「カーテンの取り付けに幾つか必要なものあるんで、家具屋に寄って貰っていいですか?」

「いいよ、いいよ。
 後、子供達の昼の食事ハンバーガーばかりだと、栄養が偏ると思うから二階にキッチン作りたいんだけど。
 水とかは、どうすればいいのかな」と、聞いてみた。

「水は一階から桶で運べば……」と、エミリーさんが言った。

「子供達も大変だろうし、それは無しの方向でお願いします」

「それなら――水を出す魔道具がありますよ」

「また、魔道具屋に行かなきゃな。
 あと、これを女性に聞いていいのか悩むんだけど、この世界ってお風呂ってないの?」

「お風呂というと?」

「ああ、湯浴みとかはしないのかなって」

「エミリーさんは、孤児院で水浴びしてたし」と言ったら、エミリーが赤くなった。

「湯浴みをできるのは、貴族くらいのものですよ」

「そっかぁ、お風呂に入りたかったんでね。
 魔法で綺麗にしてもなんか物足りなくてさ……。
 そうだ!!  貴族って、どうやって風呂沸かしてるんだろ?」

「そうですね。
 火の魔道具や魔法使いの魔法で、浴場のお湯を沸かしてるみたいですね」と、エミリーが答えた。

「んー。それならなんとかなりそうだよね。
 途中、金物屋によってもいいかな?」

「なんか、思いついた感じですね」

 五右衛門風呂なら――今の私の知識でも、割と簡単に再現できそうだ。
 露天風呂っぽく作ってみるかな。地面に石タイルを引き、その上部に風呂を温める石窯を作る。

 その上に人間が入る桶を作って、床の部分を木で作った踏み台をを桶の中に沈めておく。
 湯船の入り口は、木で金属部分をカバーすることにしよう、金属部に触れて火傷したら拙いしな。

 コレで一つ、楽しみができた。

「その前に、エミリーさん。お昼は食べた? 
 食べてないなら、自分が支払いしますんで一緒に食事に行きません?」

 頭を動かすためにも食事は取っておこう。

「食べてないですよ」

「それなら良かった」

 この間、行った食堂に行き食事を済ませて、魔道具屋で二階のキッチン用に水を出す魔道具を購入した。
 次に金物屋で人が入れるサイズの、特注の金属の桶をオーダーすることになった。
 金属の桶は、一ヶ月後の完成予定と言われた。
 これは無駄遣いではない――必要経費である。

 そして最後に、家具屋でエミリーの希望の商品を手に入れ。

 それとは別途に、湯船に沈める木製の床敷き(すのこ)には、サイズの指定と重りをつけて沈みやすいように製作の依頼をかけた。
 あと湯船の入り口用の木製のカバーの製作を依頼した。

 石窯に関しては最悪の場合は自分で作ろう。
 よし、あとは教会からカーテンを持ってくるだけだ。

「今日は、購入するものも決まってたので、買い物もサクサクと進みましたね」

「そうですね」

 家具屋から教会は近いので、すぐ着いた。

「一度、孤児院に来ていただけますか?」と、エミリーさんから問われた。

その問いに対して、「わかりました」と即答した。

 二人は孤児院の中に入り、誰かの個室であろう部屋に入った。
 女性特有の部屋の雰囲気が出ていて、俺はあたりを見回した。

「あの、ハジメさん恥ずかしいので、部屋を見回すのを止めて下さい」

「あっ、すいません」

「いえ、いいですよ。
 あのテーブルに乗ってる、カーテンを持ってもらえますか?」

「これですか?」

 カーテンを手に持った。

「それが今回作ったカーテンです。使ってください」

「あぁ、ありがとう」

 そのままマジックバッグ【アイテムボックス】に収納した。

「本当に、便利ですねマジックバッグ」

「そしたら、カーテンの取り付けは自分やっておきますんで大丈夫ですよ。
 今から、お店まで戻ってると夜遅くなっちゃいますし」

「そうですか……」と言って、エミリーは何故か残念そうにしていた。

「カーテンを作ってくれてありがとう。
 大事に使わせてもらうよ」

「はい!!  また明日、よろしくお願いしますね」と、エミリーが言って来たので。

「こちらこそ、よろしく」と言って、孤児院を出た。

 そのあと【転送魔法】でお店(自宅)へ帰宅して、二階の部屋にカーテンを取付けた。
 これで夜中でも外を気にせず、部屋内で色々とやれるようになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...