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14話.緊急事態

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 北の森で狩りを終えて町へ帰ってきたが辺りは既に暗くなっている。
 ギルドに行くのは明日にしよう……

 それが終わったら――明日は【転送魔法】もあるし[ファービレジ]の村で、ビッグフロッグ狩りの依頼でも受けてこようかな。
 そんな事を考えながら、お店兼自宅に帰宅した。
 ステータス的に体力がついて余裕が出てきたのはいいが、この調子で狩り続けてたら生活のブラック化が不可避である。

 あっ、もしかして商人の体力上昇率が高い理由って、24時間戦える人材(商売的な意味)で体力高いのか。
 ……と、そんな感じにしょうもない事を考えつつ眠りについた。

 ……
 …………

「ハジメさん。
 ハジメさん起きてください」

 朝か? 誰だ俺を起こそうとしてるのは?

 朝のまどろみに抵抗するように、目をこすりながら起きようとする。
 目が開いたらエミリーさんが必死に俺を起こしていた。
 えっ、近い……。なんなの?
 夜這いじゃなくて、朝イチからそんな事を……アホな勘違いしていた。

 次に、エミリーから発された言葉で我に帰った。

「シェリーがゴブリンに捕まったんです。
 助けてください」

「えっ、シェリーってこの前ウチに手伝いに来てた。
 おませな女の子だよな9歳位の?」

「そうです」

「なんで? シェリーがゴブリンに捕まってんだ?」

「露店売りの子が森で薬草を集めて、今の露店を出店したらしく子供達の中にそれを知ってる子がいて……」

「子供達だけで北の森に行ったということか?
 ギルドに連絡は……?」

「言いました。
 けど、子供達がこの町に連絡くるのに30分はかかってる事を考えると、もう難しいだろうと言われまして、ギルドも動いてはくれるらしいですが」

「難しいと言われて、それで俺のところに?」

「頼れる人が他に居なくて」と、エミリーは涙目になっている。

 どうせ、子供の事だ入り口付近で捕まったハズ。
 北の森の入り口からゴブリンの巣までの道のりは、だいたい1時間位――俺が探索してるときにかかったな。

 ゴブリンは獲物を捕まえたら――
 最初にボスゴブリンに献上するとらしいと、ギルドで聞いたこの言葉を信じる。

【マップ】を開いて現状確認した。
 エミリーが急いでココまで来たとして、約40分(子供達が逃げ帰ってきたのに)+  更に約20分程 (エミリーがここまでくるのに)かかってるハズだ。

 う……丁度、一時間か。

 知り合いを見捨てる気には、流石になれない……し。
 知り合いになったエミリーが泣いちゃってるしな、これは冒険じゃない。
 人助けだ――可愛い女の子の頼み位は聞いてやらなきゃな。

「俺がなんとかする……」と言って、俺は泣いているエミリーの頭を撫でた。

 細々と準備してる暇はねーな。

「じゃあ、行ってくるわ」

 【場外転送】で、北の森ダンジョン前を指定した。

 最悪は食われてる――もっと悲惨なのは性的な意味で彼女が食われてるのも覚悟した。
 ゴブリンとオークのモンスターが嫌われる理由がそこにある。
 人型女性であれば繁殖の道具として人間の女性を使う――大人の女性でも気が狂うのに、子供のシェリーが耐えれるわけがない。

 急がないとな……

 【場外転送】が完了した。

 周りを見回すと、北の森の洞窟の前に着いていた。

 [ウォーター]の魔法で、頭から水を被り目を強制的に覚まさせた。

 洞窟が複雑じゃないことを祈るしかない、洞窟に入り[ライト]の魔法を使った。
 道中――ゴブリンに何度かであったが、次々と斬り伏せていった。

 まっすぐだ!!  洞窟をじっくり探索をしている余裕はない。
 ココはダンジョンじゃないので、複雑な作りでないことを祈った。

 しばらく探索を進めると灯りがついてる大広間があった。

「グギィー!グギギ」と、モンスターの叫びが聞こえてくる。

 その後に、女の子の叫びが聞こえる。

 シェリーはまだ生きてる!!
 俺は、全力で広間に突入した!!

 そこで俺は全裸のシェリーが雑魚ゴブリンから、ボスゴブリンへ渡されようとしている瞬間を見た。

「この、ド外道がぁーーー!!」

 怒りのあまりに――俺は問答無用で、[ファイアランス]をボスゴブリンに打ち込んだ!!
 ボスゴブリンがソレを回避し、突然の攻撃に驚いた雑魚ゴブリンはシェリーの手を離した。

 クソッ!!  頭に血が上って狙いが甘かった。

 シェリーに向かって俺は走り、[ファイアランス]を雑魚ゴブリンに打ち込んだ。

 ボスゴブリンが何か叫んでいる。……って、ゴブリンの言葉なんて知るか!!
 わかって欲しけりゃ人の言葉を話やがれ!!

「無事か、シェリー」と、言ってシェリーの姿を見た。
 全裸でした……。そうでした。
 危ない、俺がゴブリン化するとこだった。

 あと一歳、せめて一桁じゃなければ、金髪ロングのドストライク少女なのに……って、いかんいかん。

「お兄ちゃん。
 助けに来てくれたの?」

「あぁ、俺がなんとかするから。
 そこの陰にでも隠れてな」と言って、シェリーの頭を撫でて落ち着かせた。

 ボスゴブリンが指揮をして俺を囲もうとしている。
 後ろにはシェリーがいるんだ。下がる事は出来ない……。

 複数のゴブリン達に間合いを詰められつつあったが、俺は周りを見回した。
 
 この部屋の灯りは松明だ!!

 現在は1対多数の不利な状況だが、1 VS 1の同じ土俵に立たせてやる!!

[エアカッター]の魔法を使用した。
 部屋の松明に向けて風の魔法を放つ、複数の風の刃で複数の松明を消し去った。

 ゴブリンどもは部屋が急に暗くなったので、混乱して「ギャーギャー」と叫んでいる!!

「よし、お前らゴブリン
 ちゃんと目を瞑ってろよー!!」

 ゴブリンに言葉は通じないだろうが、攻撃のネタ晴らしを最初からしてやった。

 俺は目をつぶり、[ライト] の魔法にいつもより多めに魔力を込めて放った。
 所謂、目潰しだ!!  目が眩んでゴブリンどもが動けなくなっている。

 俺は一気にボスゴブリンに詰め寄った。

「よっ、同じ土俵に立てたな」と言って、そのままボスゴブリンを斬り伏せた。

 目潰しが解けた雑魚ゴブリンどもが、ボスゴブリンがやられたことに気づき混乱している。
 ゴブリンどもが混乱している間に、片っ端から魔法ファイアランスで撃ち抜いていった。

 フゥー……
 ゴブリン討伐終わったぞ。

 ゴブリンを解体する暇はないので、【アイテムボックス】に、討伐したモンスターを入れていった。

 シェリーの命は無事だった。
 彼女の貞操はわからないが生きてるんだ――きっと無事だろう。

「シェリー。
 出ておいで終わったから」

「お兄ちゃん。怖かったよー!!」と、俺に抱きついて来た。
 極力、目を向けないよう努力はしているが、全裸なので見えるもんは見える。

「シェリー。すまないコレを来てくれないか。」

 俺の部屋着のTシャツを【アイテムボックス】から出して、シェリーに着させた。
 ダボってるが大丈夫だろう、全裸よりはマシだ。

 泣きじゃくる、シェリーを撫でて落ち着かせる。
 俺が日本にいた頃、他のロリコンどもが言っていた台詞セリフがある。

 『洋ロリは次元超えてるよな』

 年齢が一桁でも、次元を超えているのである。
 彼女が、あのままゴブリンに襲われていたら等と想像すると……

「お兄ちゃん大丈夫?  鼻血出てるよ?
 攻撃受けたの?」

 鼻に[ヒール]をかけ、強引に血を止めて鼻血を拭き取った。
「大丈夫、かすり傷だから」と言って、ごまかした。

「シェリー。
 ゴブリンに何かされなかったか?」と、意を決して聞いてみた。

「服を脱がされて大きなゴブリンの所に連れていかれた時に、お兄ちゃんが来てくれたの」

「そっか、なら良かった」

 あぁ、ゲスな想像してしまった。
 俺は教会で懺悔ざんげする必要がありそうだ……。

「それじゃ、帰ろうか」

「うん!!」

 洞窟を抜けて、【転送魔法】で[セカンタ]の町へ移動する。

 エミリーと、神父さんは心配してるだろうな。
 一度ギルドで状況を伝えて、ウチにエミリーがいるかもしれないので確認してみた。

 案の定、エミリーがいた。
 泣きすぎたのか顔が腫れぼったくなってる。
 俺の後ろにシェリーが隠れている、彼女に怒られると思っているんだろう。

「ただいま、エミリーさん」

「ハジメさん、無事でよかったです。
 シェリーは……」

「シェリー。俺の後ろに隠れてないで出てきて、エミリーさんを安心させてやれ。
 心配しすぎて、エミリーさんの可愛い顔が台無しになってるぞ」

「お姉ちゃ~ん」と言って、エミリーに抱きつくシェリー。
『姉妹っていいですねぇ……』と、言葉にはしないが見ていて癒されていた。
 エミリーが、シェリーが無事と解って――また泣き始めたので頭を撫でてやった。

「シェリー。こんなに、お姉ちゃんを心配させたんだ。
 反省しなさい」と、俺はしゃがみ込みシェリーと目線の高さを合わせて言った。

「お姉ちゃん。ごめんなさい」……と、きちんと言えたので俺はシェリーの頭を撫でた。

「お兄ちゃん。
 助けてくれてありがと」と言って、シェリーはしゃがみ込んだ状態の俺の頬にキスしてきた。

「えっ!?(えっ!?)」

 俺も驚いたが、エミリーも驚いた。

「お兄ちゃんが助けてくれたから。
 シェリーは、お兄ちゃんのお嫁さんになるね」

 一連の行動とセリフを聞いてエミリーが動き出す。

「シェリー!!  何してるの!!」 と、エミリーが怒り始めた。

「ははは、シェリーはおませさんだなあ」
 この世界で、俺の初キス(頬)の相手は9歳になった。

「それじゃ、みんなの家に帰ろうか」と言って、俺は2人を教会へ送った。
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