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4章 森の家~春から秋

47 石鹸の完成

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 プーアに示されるままに木の実の汁を垂らした途端、よどんだ深緑だった色が透明感さえある緑へと変化して行く様を茫然と見つめつつも、その変化を観察した。

 ……この反応、なんかで見たことあるような。なんだっけ、色が変化する……、あっ、そうだ!ハーブティーでレモンを入れると紫色がピンクに変化したのを見たことがあったんだった。どんよりとした澱みが透明感へ、程すごい変化ではないけど、初めて見た時は凄く驚いたんだっけ。確かPh値が関係していて、酸性になると色が変化したんだよね。

 思い出したマロウブルーと比較しながら見ていても、変化の速度は似ているがそれ以外はこちらの変化の方が幅が大きい。
 それでも変化する、ということはこの赤い木の実の汁と私が作った薬草を煮だした混合液が何かの反応を起こしているのだろう。

 まさか、さっき鍋に魔力を注いだから、その魔力が反応している、とかない、よね?だって魔力を注いだのが成功しているのか、注いでこの液体に魔力が宿ったのかとか、全く分からなかったし。

 これはいよいよ検証するにも難問だ、と考え込んでいると、下から私を見つめる二対のつぶらな瞳に気が付いた。

「……お姉ちゃん、プーアが持って来た木の実で色が変化したの、凄いよね?うれしくないの?」
「チチチィ?」

 じじーっとうるうるしそうな純真な瞳に見つめられ、しかもちょっとだけしょんぼりしている姿に自分の失敗を悟った。

「う、ううんっ、とっても凄くて驚いて、考え込んじゃったの!木の実の汁で、こんなに色が変わるなんて思ってもみなくて!プーア、この木の実で色が変わるなんて、良く分かったわね。ありがとう、とってもうれしいわ。凄いね、プーア!」

 手を伸ばし、両手でプーアを目の前まですくい上げ、その瞳を見ながら感謝を伝えると、しょんぼりしていた瞳がキラキラと輝き出した。

「チッチチチッ!チチチィ!」
「お姉ちゃん、プーアが喜んでくれてうれしい、って。もっと見つける、って言ってるよ。プーアは凄いね。こんなに小さいのに物知りなんだね」
「そうね、プーアは凄いわ!これからも宜しくね!」

 成長して少しだけ大きくなったプーアにそのまま頬をすり寄せると、楽しそうに一声鳴いて私の腕を駆け上がり、肩に立つとその小さな手でひしっと顔に抱き着いてすりすりと頬すりし出した。
 その小さいけれどほわほわなもふもふな毛並みの感触に、くすぐったさはあるけど幸せになる。

「こうしてプーアが色々集めてくれて助かっているけど、無理だけはしないでね?危ない場所に行く時は、必ずウィトかラウルと一緒に行ってね?」
「チィッ!」

 しばらく三人でじゃれた後、色が変化した鍋に蓋をして収納に入れてみると。

 ……『ギーナ草の混合液(微魔力水)』って何?ギーナ草はメインにした熱さましになる薬草だけど、微魔力水ってどういうこと?私が適当に注いでみた魔力が効果があったの?それともプーアが持って来てくらたあの実の汁を入れて変化したから?……同じ配合になるかは分からないけど、もう一度作ってみよう。

 改めてプーアが持って来てくれた赤い木の実がピピリという名前なのを確認し、鍋を取り出して中身をコップに移して密閉してから収納にしまい、鍋を洗ってからもう一度さっきと同じ薬草を入れて煮だす。

 さっきは私は水に適性があるみたいだし、水に魔力を含ませることくらい出来たらいいのに、って思いながら注いでみたんだっけ。じゃあ、そうイメージして……。

 さっきは成功するとは思っていなかったから、どれくらい魔力を注いだのかは曖昧だが、とりあえずそこはこれからの検証課題として今はある程度魔力を注いだ。
 そうして鍋の中が、ピピリの汁を入れる前と同じような澱んだ深緑の液体になっていることを確認し、鍋に蓋をして収納にしまうと。

 ……『ギーナ草の混合液』、ね。魔力を注いだのに微魔力水にならなかったのは、やっぱりピピリの汁を入れなかったからと考えられるよね?じゃあ、ここにピピリの汁を入れて……。

 さっきと同じように複数のピピリを絞った汁を一滴、二滴と加えて行くと。

 あれ?確かにさっきと同じように色の変化はあるけど……。なんか色が、違う?

 最初の時は、澱んだ深緑が一滴を入れただけでパアッと目に見えて鮮やかに色を変えて行った。なのに今回は、色の変化はあるが透明とはいかず、色も先ほどの緑色よりももっと深い色にしか変化しなかったのだ。
 色の変化が鈍いのかと最初に入れた時よりも多くピピリの汁を垂らしていくと、ある一定を越えた瞬間、今度は青黒く澱んで行った。

「え、えええっ!な、なにこれ!さっきと同じつもりだったのに、これはどうやったら検証になるの……」

 とりあえず軽量スプーンをラウルに作って貰おう、とがっくりと肩を落としつつ思いながら鍋を収納に入れてみると。

 ねえ、『ギーナ草の混合液(汚染)』って何!いっそのこと『ーーー』にしてよっ、もうっ!通販スキル、ややこしすぎるでしょうがっ!

 キーーッと発狂しそうになる衝動をなんとか堪え、頭を冷やしてから後始末をして食事の用意をし始めたのだった。




 水薬の検証は、結局プーアのお陰で検証できる段階へと進んだが、その結果が合っているかどうかの基準がないので、すぐに暗礁に乗り上げてしまった。
 それでも少しずつ検証を進めている。

 ただ木の実を薬に入れる、という発想から、ふと前世の手作り石鹸の作り方が乗っていた記事を思い出した。

 石鹸の作り方は熱心に読まなかったから覚えていないけど、確か塩をスクラブとして入れるって書いてあって石鹸に塩を入れるんだ、ってそういえば思ったんだよね。……ムグの実を削ってお湯に溶かした液体に果実の汁を入れるとリンスインシャンプーみたいになったけど、塩を入れたら石鹸のように固まってくれるかな?

 リンスインシャンプーが出来てからも、何度か石鹸にならないかと色々混ぜてみたが固まらず、手を洗ってもつっぱりがあって直接肌を洗うのには適さない物しか出来ていなかった。
 ムグの実は洗濯や食器を洗ったりするには良かったのだが、肌を洗うと汚れが落ちすぎるのかつっぱってしまうから、今はかなり水で薄めて身体を洗っているがどうしても洗った後の肌がつっぱるのだ。

 ……とりあえず今日は石鹸の実験をしよう。暑いから毎日水浴びしているけど、汗をかくからちゃんと石鹸で身体を洗いたいもんね。

 午前の採取を終わらせて昼食をとり、ウィトとラウル、それにリサちゃんが外へ狩りに出かけたのを見送ると去年の秋にたくさん集めたムグの実を取り出して、ゴツゴツした削る用の石で削って行く。
 小鍋に少しだけ魔法で水を入れて火に掛け、沸騰する前に竈から降ろし、少し冷ましてから削ったムグの実を入れてかき回した。

 ここまではほとんどリンスインシャンプーの時と同じだ。違いはお湯の量を半分に抑えたので、慎重に溶ける分だけのムグの実を入れたことだけだ。
 それを半分にし、片方には家から持って来た塩を一つまみ入れ、念入りにかき回して行く。

 うーん。重くはなって来たけど、ちょっと水分が多い、かな?少しだけ火に掛けて水分を飛ばそう。

 竈の中の薪を両端にズラし、火力を弱くしてから小鍋を竈に置き、混ぜながら加熱して行く。すると。

 あれ?なんだかどんどん重くなってきたような?……これはもしかして成功、かな?

 沸騰しないように気を付けて混ぜ、水分がほぼなくなったら竈から降ろした。

「……これはもうちょっと冷ましてから、何かに入れて乾燥させればいいかな?……とりあえず冷めたら手を洗ってみよう」

 粗熱がとれるのを待ち、少しだけ手に取って手を洗ってみると。

「おおっ!きちんと泡立つし、汚れもきちんと落ちてるのにあのつっぱり感がない!これは何日か使って肌が荒れないか様子をみないといけないけど、もしかしたら石鹸できたかも!!」

 浮かれながらもとりあえず小さめな小皿に分けて入れて行く。

 ……確か、布に包むといいんだっけ?まあ、とりあえずこのままで実験してみればいいか。

 乾燥してひび割れを防ぐ為だったかなんだったか、と思いつつも同じような石鹸ではないからとりあえずそのまま乾燥させることにし、残しておいたもう片方には良く干したランカの葉を砕いた藻塩のような塩を一つまみ入れて同じようにかき混ぜて行ったのだった。







ーーーーーーーーー
これでストックがとうとう0に……(ヤバい)明日が猛暑予報なので、なんとか書けたら更新します。
遅らく月曜からは書けたら更新(週3から4回は更新したいですが)になるかと思います。
どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
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