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小休止:とある公爵家の侍従の独白

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ナハト・シルフィード公爵閣下。
ゾンネ王国現財務大臣であり、シルフィード公爵家現当主にして領軍の元帥であり、医師でもある。
奴は凄い。
天才とは奴のような人間を指すのだろう。
俺と奴が出逢ったのは、王立魔法学院の剣術の授業の時だ。
奴は俺より三歳上だが、俺の家は代々シュテアネ侯爵領の治安維持を任されている家門で武闘派で知られていた。つまり、俺は強い。そんじゃそこらの奴等より強かった。七歳で学院に入学して、剣術の授業のクラスは最初から上級クラスに振り分けられたほどだ。
魔法学院の上級剣術授業は剣技はもとより、魔法も使用しての実戦式だった。
クラスの奴等は全員俺より年上で、俺よりも上手く、そして強い奴等が沢山いた。俺はそんな環境で鍛練出来て幸せだった。
強い奴等の中でも、群を抜いて上手くて強かったのがナハトだった。当時奴は十歳だったが、自分より大きくて力の強い奴等との戦い方が抜群に上手かった。
悔しいが、学院在籍中から今に至るまで、奴に勝った事はない。強さの秘訣を聞いたら、好きな女を手にいれるために死に物狂いで努力しているだけだと言われて奴に惚れた。
奴の全ての原動力が、惚れた女のためだ。
傍で見ていて引く程、奴は惚れた女のためだけに生きていた。
奴の想いがどう成就して、惚れた女のためにどこまで出来るのか見たくて、俺は奴の影になる事を決めた。
影は奴の目であり手足だ。汚い事も綺麗な事も、奴の命令があれば代わりに全てやる。
奴が惚れた女を手に入れ、無事に正妻として娶れた時は喜んだ。目茶苦茶嬉しかった。
だがしかし、正直、奴の病的な愛情と執着を注がれる奴の女神であるセラフィナイト様には気の毒と云うか、何と云うか、とにかく頭が下がるわけだ。
いや、本当に、あの華奢で触れただけで折れてしまいそうな体で、奴の情熱を受け止めているんだからな。尊敬するぜ。
ほら、今日も。
「セラ…、ほら、全部入った。分かるか?」
「あ、う…ん、あぁ…待って…」
「吸い付いてくるな…もっと深くが良いか?」
「駄目…ん、やっ、待って、まだ…あ、あ、んん…っ」
何も外でおっ始めなくても良いんじゃないか?セラフィナイト様が気の毒でならないな。
確かに、練習場のこの四阿は人払いされている上に結界が張ってあるからどんなに激しく励んでも大丈夫なんだが、初心者なセラフィナイト様相手に野外で励むのは鬼畜だろう。
俺は影として、二人の護衛のために結界内にいるから、声と音が丸聞こえなんだ。セラフィナイト様が気の毒だから視界に映らないようにしているが。
「あ、ああん、好きぃ、ナハト様、気持ちい…っ」
「私も良い、セラの中…っ…キツくて、熱いっ」
「ひぁっ!あ、あ、あっ!」
「セラ!」
くそーっ。羨ましい。俺だってお年頃なんだから、もう少し遠慮してくれよ。アイツ、絶対分かってやってやがるな。
分かってるよ、セラフィナイト様はお前のモノだろ。だけど仕方ないじゃないか、惚れちまったんだから。お前だってそうだろ。女神は綺麗で優しくて可愛いくて男の目を釘付けにする体をしてるんだから。
手を出そうなんてこれっぽっちも思ってないさ。セラフィナイト様が見てるのはお前だけだからな。
お前と、お前が惚れた女神の二人に惚れた俺は、お前達のためだけに生きるって決めてるんだから、お前達の生きたいように生きろ。俺は影を全うするから。
だけど、頼む、励むのはやっぱり寝室の中だけにしてくれよ。
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