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はじめての留守番
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フロウが仕事へ行った後、何もする事が無くなったルカはソファで暇をもて余していた。
村にいた時は常に仕事があり1日経つのがあっという間だった為、いざやる事が無くなるとどう時間を使っていいか分からないのだ。
「寝るの勿体ないしな。本も難しいやつしかないし……。」
一度、本でも読もうと本棚を漁ってみたのだが、どれも専門書ばかりでルカが楽しめそうな本は一冊も無かった。
「夕飯の準備もまだ早いし。」
現在昼過ぎ。夕飯の支度には早すぎる。
自分の昼食も終え、片付けも済んでしまったルカは本当にやることが無いのだ。
「この部屋、何にも無いから買い物行きたいけど、所持金も家の鍵も無いしなぁ……。欲しいものリストを書こうにも紙もペンも無い……。」
フロウは最近この部屋に引っ越してきたと言っていたが、それにしても荷物が無さ過ぎにも程があった。
何故かキッチンの調理器具類とバス・洗面用品は充実していたがそれ以外は何も無く、掃除用具も洗濯用具も無い。
キッチンも昨日初めて使ったかのような新品具合だったし、調味料も昨日買って来た物しか無かった。
「あ。どうしよう、俺独り言ばっかり言ってる……」
村で一人でいるときは何かに集中しているか寝てるかの二択しか無かったルカは、何もする事が無いこの無音な空間が耐えられず、ついつい声に出てしまっていた。
「駄目だ。耐えられない。ちょっとだけ、出掛けようかな……ちょっと外の様子を見るぐらいならいいだろ。」
ルカはソファーから腰を上げるとゆっくり玄関へ向かった。フロウとの約束を破る罪悪感はあるが何もないこの部屋が悪いのだと自分を納得させ、ルカはドアのぶに手をかける。
「鍵無いけど、すぐ戻れば問題ないよな。」
そしてドアを開け外に出る。
ガチャリと開いたドアはルカがドアノブから手を離したことでゆっくりと閉じていき、ガシャンとしまった。そして小さくカチっと音がした。
ちょっとだけウロウロしたら戻ってきて部屋で昼寝でもしよーっと。
ルカはルンルンと廊下を歩いていった。
そして十数分後、宿舎内をぷらっとして戻ってきたルカは衝撃を受けることになる。
ーーガキンッ
「え?」
A級魔術師専用宿舎は全室オートロックだった。
「えぇぇぇー!?なんで空かないんだ!?鍵閉めてないのに!!」
当然村にはオートロックなんて無い為、
ルカはオートロック自体を知らない。
「壊れた!?壊れたのか!?」
こうしてルカは部屋から閉め出された。
現在魔術師は勤務時間中の為か宿舎の廊下にはルカしかいない。
「なんで!?なんで開かないんだ!?」
慌てふためきながらガシャガシャとドアノブを回すルカ。
廊下にガチャガチャという音とルカの騒ぐ声が響き渡る。
10分程ガチャガチャしたルカはさすがに諦めたのかその手を止めドアを背に座り込んだ。
「壊したのかな……俺。」
「泥棒?……どうやって入った…?」
「!?」
ルカがしょんぼり項垂れると同時に頭の上から声が降ってきて、驚いたルカは顔をあげた。
見ると黒い服に身を包んだ紺色の髪に金と青のオッドアイの端正な顔立ちの男が無表情で立っていた。年は20代半ばくらいだろうか、つり上がり気味の瞳に冷たい印象をうける。
「誰だ!?」
「あんたこそ……誰。ここは簡単に入れない。どうやって……入った。」
男は冷たくルカを睨み付けている。
「俺はここに住んでるんだ。昨日からだけど……。」
「住んでる……?魔術師………には見えないが。」
ルカの予想外の答えに男は目を丸くすると、ルカに視線を合わせるように膝をついた。
「うるさいな。弟が魔術師なんだ。フロウ=ファルメールだ。」
「え、フロウの兄さん……?あんたが……?」
「そうだよ。何か文句あるのかよ。俺はルカ。あんたこそ誰なんだ?」
「文句……ない。ただ、予想と違っただけ。俺は、ミカエル=ディートリッヒ。……見回りしてたら……騒がしい声とガチャガチャ音がしたから来た。」
「予想ってなんだよ。あんたロウの知り合いか?俺、部屋に入れなくなっちゃったんだよ。鍵かけてないのに。」
「こっちの話……。ルカって呼んで……いい?俺の事も好きに呼んで。鍵……持ってないの?ここ…オートロックだよ。一度閉めたら……鍵が無いと外から開かない……仕組み。」
「ルカでいいぞ!じゃあ俺はミカって呼ぶな。そんなドアがあるのか!?壊れた訳じゃなかったんだな。でもどうしよう入れない…。俺の分の鍵まだ用意出来てないらしくて貰ってないんだ。」
「うん、呼んで。ルカの鍵が用意できてないってフロウが言ったの?……フロウ、さすがだね。」
「どういうことだ?」
「ううん……こっちの話。じゃあ、ここで……一緒に待ってようか。」
そう言うとミカエルはルカの隣に座った。
「お前、仕事いいのか?」
「……フロウ早く帰ってくるだろうから……少しくらい平気。」
「ありがとな!ミカ、いい奴だな!」
ルカが嬉しそうに笑顔を向けると、ミカエルも目を細めうっすら口角をあげた。
「ううん……そんな事ないよ……。」
「いろいろミカの事教えてくれよ!」
「いいよ……ルカの事も教えて。」
村にいた時は常に仕事があり1日経つのがあっという間だった為、いざやる事が無くなるとどう時間を使っていいか分からないのだ。
「寝るの勿体ないしな。本も難しいやつしかないし……。」
一度、本でも読もうと本棚を漁ってみたのだが、どれも専門書ばかりでルカが楽しめそうな本は一冊も無かった。
「夕飯の準備もまだ早いし。」
現在昼過ぎ。夕飯の支度には早すぎる。
自分の昼食も終え、片付けも済んでしまったルカは本当にやることが無いのだ。
「この部屋、何にも無いから買い物行きたいけど、所持金も家の鍵も無いしなぁ……。欲しいものリストを書こうにも紙もペンも無い……。」
フロウは最近この部屋に引っ越してきたと言っていたが、それにしても荷物が無さ過ぎにも程があった。
何故かキッチンの調理器具類とバス・洗面用品は充実していたがそれ以外は何も無く、掃除用具も洗濯用具も無い。
キッチンも昨日初めて使ったかのような新品具合だったし、調味料も昨日買って来た物しか無かった。
「あ。どうしよう、俺独り言ばっかり言ってる……」
村で一人でいるときは何かに集中しているか寝てるかの二択しか無かったルカは、何もする事が無いこの無音な空間が耐えられず、ついつい声に出てしまっていた。
「駄目だ。耐えられない。ちょっとだけ、出掛けようかな……ちょっと外の様子を見るぐらいならいいだろ。」
ルカはソファーから腰を上げるとゆっくり玄関へ向かった。フロウとの約束を破る罪悪感はあるが何もないこの部屋が悪いのだと自分を納得させ、ルカはドアのぶに手をかける。
「鍵無いけど、すぐ戻れば問題ないよな。」
そしてドアを開け外に出る。
ガチャリと開いたドアはルカがドアノブから手を離したことでゆっくりと閉じていき、ガシャンとしまった。そして小さくカチっと音がした。
ちょっとだけウロウロしたら戻ってきて部屋で昼寝でもしよーっと。
ルカはルンルンと廊下を歩いていった。
そして十数分後、宿舎内をぷらっとして戻ってきたルカは衝撃を受けることになる。
ーーガキンッ
「え?」
A級魔術師専用宿舎は全室オートロックだった。
「えぇぇぇー!?なんで空かないんだ!?鍵閉めてないのに!!」
当然村にはオートロックなんて無い為、
ルカはオートロック自体を知らない。
「壊れた!?壊れたのか!?」
こうしてルカは部屋から閉め出された。
現在魔術師は勤務時間中の為か宿舎の廊下にはルカしかいない。
「なんで!?なんで開かないんだ!?」
慌てふためきながらガシャガシャとドアノブを回すルカ。
廊下にガチャガチャという音とルカの騒ぐ声が響き渡る。
10分程ガチャガチャしたルカはさすがに諦めたのかその手を止めドアを背に座り込んだ。
「壊したのかな……俺。」
「泥棒?……どうやって入った…?」
「!?」
ルカがしょんぼり項垂れると同時に頭の上から声が降ってきて、驚いたルカは顔をあげた。
見ると黒い服に身を包んだ紺色の髪に金と青のオッドアイの端正な顔立ちの男が無表情で立っていた。年は20代半ばくらいだろうか、つり上がり気味の瞳に冷たい印象をうける。
「誰だ!?」
「あんたこそ……誰。ここは簡単に入れない。どうやって……入った。」
男は冷たくルカを睨み付けている。
「俺はここに住んでるんだ。昨日からだけど……。」
「住んでる……?魔術師………には見えないが。」
ルカの予想外の答えに男は目を丸くすると、ルカに視線を合わせるように膝をついた。
「うるさいな。弟が魔術師なんだ。フロウ=ファルメールだ。」
「え、フロウの兄さん……?あんたが……?」
「そうだよ。何か文句あるのかよ。俺はルカ。あんたこそ誰なんだ?」
「文句……ない。ただ、予想と違っただけ。俺は、ミカエル=ディートリッヒ。……見回りしてたら……騒がしい声とガチャガチャ音がしたから来た。」
「予想ってなんだよ。あんたロウの知り合いか?俺、部屋に入れなくなっちゃったんだよ。鍵かけてないのに。」
「こっちの話……。ルカって呼んで……いい?俺の事も好きに呼んで。鍵……持ってないの?ここ…オートロックだよ。一度閉めたら……鍵が無いと外から開かない……仕組み。」
「ルカでいいぞ!じゃあ俺はミカって呼ぶな。そんなドアがあるのか!?壊れた訳じゃなかったんだな。でもどうしよう入れない…。俺の分の鍵まだ用意出来てないらしくて貰ってないんだ。」
「うん、呼んで。ルカの鍵が用意できてないってフロウが言ったの?……フロウ、さすがだね。」
「どういうことだ?」
「ううん……こっちの話。じゃあ、ここで……一緒に待ってようか。」
そう言うとミカエルはルカの隣に座った。
「お前、仕事いいのか?」
「……フロウ早く帰ってくるだろうから……少しくらい平気。」
「ありがとな!ミカ、いい奴だな!」
ルカが嬉しそうに笑顔を向けると、ミカエルも目を細めうっすら口角をあげた。
「ううん……そんな事ないよ……。」
「いろいろミカの事教えてくれよ!」
「いいよ……ルカの事も教えて。」
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