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体育祭 借り物レース事件

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いよいよ借り物レースがスタート。
俺は3レース目。
白熱した実況が生徒たちの心を暑くさせる。
「1レース目出ました、1レーン田中は''美人なママ''これは見つかるのか!?
2レーン杉山は''使い古しの鉛筆''この時代に鉛筆!ここは1番の年配者  郡山先生のどえらい鉛筆の登場か?」
などと、笑いあり熱ありの実況を繰り広げる放送委員。
次はいよいよ俺の番。
走ってお題の封筒を手に取る。
「2レース目、1レーンの稲葉のお題は…?」
「…仲のいい女子」 
「仲のいい女子と出た!さぁこれは女子がソワソワするお題だー!稲葉は誰を選ぶんでしょうかー?」
(いちいち煽るような放送すんじゃねぇよ…後で恨んでやるー…)
そう思いながら俺は応援席へと走った。
綱引きは不参加だったからここでいい成績を残したい。
「…」
(どうしよう…仲のいい女子…)
俺はとっさに…
「藤木乃さん!一緒に来て!」
「えっ…わ…私?」
許可をとる前に、俺は藤木乃さんを強引に引っ張って走った。
同じ応援席にいたさくらちゃんを選ばなかったのには理由がある、
気まずいからだ…藤木乃さんなら意外と気心知れてるし…と。
「おー!1レーンの稲葉は、5組の藤木乃万莉を連れてきたー!」
(くっそ、放送部め…マジ後でこてんぱんにしてやる…)
俺はとりあえず、藤木乃さんを引っ張って1位でゴールした。
活躍して、歓声があがっているのに俺は全く嬉しくなれなかった。
さくらちゃんを好きなのに、あんなに良くしてもらってるのに俺は…とっさに藤木乃さんを選んでしまったからだ。
とっさに取った行動に深く後悔してる。
走り終わり、トラックの中で俺と藤木乃さんはレースが終わるのを待つ。
藤木乃さんが、小声で俺に耳打ちする。
「なんで…さくらさんを連れていかなかったんですの…?」
「…連れて行けなかった、後悔してるよ。
自分のとった行動に…」
「…腑に落ちませんわね
あなたはとっさなんかではなく逃げたんですわ

「えっ…」
「逃げたとしか思えないんですもの、例えそうでなかったとしてもあなたの気持ちを知ってる私から見たらそう思えてしまいますわ」
「…」
「違いますか?」
「そうかもしれない…俺は怖かった
柚樹がふられた(かもしれない)手前、さくらちゃんを連れていくのが怖くなったんだ」
俺は…静かに息を飲んだ。
「柚樹の目の前でさくらちゃんを連れて行って、柚樹を傷つけてしまうんじゃないかって」
俺が体育座りで腕に顔を埋めると、藤木乃さんが俺の頭を引っぱたいた。
「いた…」
「何を言ってますの、自分の気持ちにフタをしてどうしますの?」
「だって…」
「そんなふうに考えてるならさくらさんを好きになるのをおやめになったら?」
藤木乃さんは冷たい視線を俺に向ける。
今までに見たことない厳しい目をしている。
「自分の気持ちにウソをつくのなら、恋をする資格なんてありませんわよ、モヤモヤした気持ちをそのままにしておかず、素直に打ち明けるべきですわ」
「藤木乃…さん」
「そんなことで壊れる程、あなたたちの友情は儚いものなの?」
「!」
(そうだ…柚樹がどんな反応をしようが、俺たちは友だちだ)
「ありがとう、藤木乃さん」
「それで、告白も上手くいけばいいですけど?」
「…うん、そうだね」
「応援…してますわよ」
借り物レースが終わり、藤木乃さんは応援席へと戻って行った。
「…ありがとう…」
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