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可愛いのがいけない
しおりを挟む「ほんとー?」
リリアンヌはギュッと抱き寄せる僕を
下から覗いてくる。
その表情が可愛くて僕は
さらに抱き締めた。
「あぁ今までごめん!リリアンヌのことたくさん傷つけて。これからはリリアンヌのそばからずっと離れないから…僕を許してくれる?」
最後の方は急に不安になって
声が小さくなってしまった。
いずれこの国の指揮を任されているはずなのに
まだまだ修行が足りない。
「もちりょん!!だってリリアンニュはぐりぇんりーどしゃまをお慕いしてましゅから!」
お酒のせいで呂律が回っていなくて
子供みたいな喋り方だけど
すごく安心する。
「ありがとう。リリアンヌ!ありがとう!」
リリアンヌはにっこりと笑うと
安心したのかゆっくりと目を閉じた。
僕はリリアンヌを横抱きにして
奥にある寝室へと運ぶ。
自分が毎日眠るベッドにリリアンヌが
寝ていると考えるとこれまでのことが
嘘のようにおもえてくる。
ツンと頬を突いても
リリアンヌは起きない。
ふふっと笑ってから僕は
リリアンヌの隣で横になる。
あれだけ婚約破棄を考えていた僕が
今はこんなにもリリアンヌを
愛しく思えるのだから
何があるのかわからない。
今思えば最初の出会いから
僕はリリアンヌのことを
心のどこかで思っていたのかもしれない。
「父上や母上はそんな僕を見抜いていたのだな。」
やはり現国王には敵わないと思う。
眠るリリアンヌを抱き寄せ
着替えもせずに僕は眠りについた。
「きゃあーー!」
穏やかな眠りについていた
僕の耳に突然女性の悲鳴が聞こえてきて
僕は慌てて目を覚ます。
バッと勢いよく起き上がれば
顔を真っ赤にさせて
あわあわとするリリアンヌが
ベッドの上で座っていた。
「リリアンヌ?起きたのか。」
「でっでっでっでっでんか!これはどういうことでしょう!?!?」
名前呼びから殿下呼びになったことを
少し悲しく思いつつも
僕は顔には出さずにリリアンヌに
昨日の成り行きを話す。
今はまだ夜明け前で
侍女達も起きていないから
二人だけの時間を取られたくないために
僕は小声で話すことにした。
もっとも今のリリアンヌの悲鳴で
侍女たちはおそらく起きただろうけど
男女の部屋に入るのも無粋だと
考えたのだろう。
誰もこの部屋には入ってくる気配がなかった。
「そっ、そんなこと!わたくしがっわたくしがっあぁ、言ったわっ言ったわっあぁ…!」
リリアンヌは最初そんなこと
言ってないと言おうとしたのだけど
記憶を遡ることで思い出したのだろう。
もうお酒は抜けきっているはずなのに
顔は真っ赤に染まっている。
僕はそんな羞恥に顔を染めている
リリアンヌをそっと抱きしめる。
びくりと大袈裟なほど
肩を震わせてリリアンヌは僕に行った。
「殿下!わたくしをお離しになって!」
「んーでも可愛いから離せない。」
離せと言う割にしっかりと
僕の胸に手を寄せているのだから
リリアンヌは本当は離してほしくないのは昨日の件ではっきりわかる。
「かっかわっ可愛い…です…か?」
チラリと伺うように覗き見られる。
なにそれ。なにそのかお。
「だめ。リリアンヌもうその顔しちゃだめ。可愛いからだめ。」
えぇ?!と驚く顔もまた可愛い。
はぁと一息つくと僕はリリアンヌの
小さい唇に僕の唇を軽く押し付けた。
「リリアンヌ僕の名前呼んで?」
いきなりのキスにあわあわと
口を開いては閉じて開いては閉じてを
繰り返しながらも耳まで真っ赤にさせる。
可愛すぎてどうにかなりそうだ。
「…よ…呼べませんわっ!」
うん。それは恥ずかしくて
呼べないんだよね?
リリアンヌのことを知ってしまえば
もうこのツンな言葉もすべて
デレへと変換される。
こんなに可愛いならもっと早く
知れたらよかったのに。
そしたら昨日の夜会でリリアンヌの
可愛いさを知るのは僕だけで済んだのにと思わないでもないけれど。
「ほら早く呼んで。リリアンヌに名前で呼んでほしい。」
素直に僕がお願いすれば
リリアンヌは顔を染めながらも
上目遣いでボソリと呟く。
「グレン…グレンリード様。」
こんな可愛い子猫、押し倒さない方がおかしいよね?
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