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第3章
第27話
しおりを挟むぞろぞろと入ってきた人たちの手には
メジャーやら何か挟んである大きなファイルやら色々持っていた。
「まずは彼女の採寸からだね。蓮彼女の採寸が終わるまで向こうで話そう。」
そう言って後ろに控えた人たちに
何か指示を出したあと長谷川さんは
社長を誘導して部屋から出て行った。
私は少しだけ追いていかれたみたいで
心細くなる。
「さぁー!始めるわよん!」
1人の男性が
パンパン!と軽快に手を叩くと
何やらオネエ言葉で言って
皆んなが機敏に動き出し
私の周りを囲んだ。
そのオネエ言葉のお兄さんは
まず私の腰にメジャーを巻く。
「まぁ!随分太いのね!着痩せするタイプなのね。」
と今日何度目かの悪口が飛んでくる。
…いい加減もう慣れてきましたわ。
「……はぁ。」
もう言い返す気力すらなく
お兄さんにされるがまま採寸が
進んでいく。
「あんたちょっとはダイエットしなさいよ!お尻もこんなに肉つけて!男性が好きな範囲を超えてるじゃない!」
大きなお世話だ!
と声を大にして叫びたいのを
必死に我慢する。
慣れてきたとはいえさすがに
言い過ぎだ!
油断していたらそこまで言われるなんて。
こうなってしまったからには
大人しくするのが一番だ。
無茶振りな社長の依頼だけど
引き受けてくれた長谷川さんに
迷惑はかけられないし
社長にも面目潰すようなことはできない。
とりあえず今日からダイエット
始めようと心に誓った。
「さぁ!社長を呼ぶわよ!」
野太い声でオネエなお兄さんは
採寸が終わると同時に長谷川さん達を
呼びに出て行った。
数分後天宮社長と二人で
戻ってきたのはいいけど
ニコニコ顔の長谷川さんに対して
天宮社長はどこか不機嫌?な顔して
戻ってくるので内心訝しむ。
(何か言われたのかな?)
「皆んなありがとう。じゃあとりあえず採寸したの見せてくれる?」
そう言って長谷川さんが
オネエなお兄さんから
私のスリーサイズから
何から何までこと細かに
書かれているファイルをもらって
確認しようとする。
その後ろにいた天宮社長まで
一緒に見ようとするので
私は慌てて天宮社長に近づいて
頭一つ分高い彼の目を塞ぐことは
難しいから咄嗟の行動で
社長の顎を強く上に押してしまう。
「いってぇ!」
「社長まで見ないでください!!」
私のリーチの短い腕を最大限に
伸ばして社長の顎を押し上げると
社長は私の力の強さに痛みを覚えたらしい。
「おい!見えねえだろうが!」
「いやー!いやー!見ないで!見ないで!」
そう言ってなんとか見ようとする
社長を阻止するべく奮闘する私。
「なあイチャついてないでさっさとしようよ。」
そんな二人をみて長谷川さんは
呆れながら私たちに言った。
長谷川さんのその言葉で
私はつい赤面してしまって
慌てて社長から飛び退いた。
社長は押されていた顎をさすりながら
私をかるく睨んでくるけど
さっき言われた長谷川さんの言葉を
意識してしまってついそっぽを向いてしまう。
「本当に蓮のそんな姿他の女性が見たら卒倒するね。」
クスクス笑いながら
長谷川さんは社長を揶揄っている。
「うるせぇ。それよりそのファイル見せろよ。」
「ああ。いいよ。」
そう言って長谷川さんは事もあろうに
あっさりと私の事細かに書かれた
サイズのファイルを社長に渡した。
ああ!と私はなりふり構わず
社長の手に渡る前に取ろうとして
手を伸ばすも背の高い二人が
私が届かない高さで渡すのだから
意味なんてないのだ。
「うわぁ最近ちょっと太ったなと思ったけどやっぱりか。音羽今日から夜ランニングだな。」
「え!?」
社長は受け取ったファイルを目で
追いながらそんなことを言う。
まさかの社長にそんなこと言われるなんて
恥ずかしすぎてこの場から逃げたい。
(太ったと思われていたなんて!!!!)
ショックを隠しきれない私に
長谷川さんは救いの手を差し伸べてくれる。
「うちトレーニングジムもやってるから通いにおいで。」
アパレルブランドなのに
トレーニングジムとは?
なんて思っていると
「洋服を取り扱う仕事だからね。うちはモデルを自社で出してるからその子達のためにジムを設備したんだけど、他の社員も使いたいってことになってそれならもういっそ開業しようか。てことになったんだ。」
いや。簡単に開業っていうけど
簡単じゃないですよ!?
「だからうちに通えば綺麗に痩せるよ。僕が直々に見てあげる。」
「え!?長谷川さん自らですか!?」
「一応資格も持ってるからね。」
え!えぇ!全然職種が違うのに。
「もともと健斗はそっち系を専攻としてたんだが俺と同じで在学中にこのブランドを立ち上げたからな。」
「そう。だからちゃんとするし安心して。どうかな?」
もう成功する人の近くにいる人は
みんな奇才しかいない気がする…。
「…じゃあお願いし「ダメだ。」
好きな人に太ったなんて言われたら
頑張るしかないじゃない。
そう思って長谷川さんに
お願いしようと思って返事をしかけたら
社長が私の口を抑えながら
長谷川さんに断った。
「こいつの管理は俺がする。」
チラリと上を向けば
いつもと違う社長が見えて
なんだかちょっとだけ
不謹慎にもドキドキしてしまう。
「蓮がこんなに嫉妬深い奴とは知らなかったな。」
「???」
嫉妬深い?
「うっせーな。俺はこいつの雇い主だからな。社員の管理は社雇用主の務めだ。」
「はいはい。そういう事にしといてあげるさ。」
ニヤつく長谷川さんと
不機嫌になる社長。
未だに口を抑えられていて
話すことができない私をおいて
二人は楽しそうに話している。
そうして長谷川さんの指導の元
その後はふざけずに
私用のパーティドレスを仕立てるため
あれやこれやと話し合った。
話し合っていくうちに
あれ?これって貴族のご令嬢が
夜会用のドレスを仕立てるのと
同じでは?
なんて途中から気づいて
ワクワクノリノリになったのは
他のでもないこの私だった。
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