上 下
8 / 31
第1章

第8話

しおりを挟む

「ではまずは自己紹介から。
俺はある程度お前を雇う前に調べているから大体把握している。だから俺の質問に答えてくれるだけでいい。」

さらっと調べたとか言ってますが。

背筋からたらりと冷や汗が流れる。

「先に俺のことを話す。名前は天宮 蓮。〇〇企業の代表取締役社長をしている。歳は30だ。」

は?待って。は?

…社長?代表取締役?

この人30歳って言ったよね?
そんな若い歳で社長!?

もはやこないだから驚きの連続で
心臓に悪すぎる。


だがしかしこの家をみて納得。

こんなだだっ広い部屋
(しかも恐らくこの階まるまる彼の家。)
を借りれるくらいはお金持ちなのだ。
一体家賃はどれくらいなんだろう…。

「ちなみにこの家は25の時に購入済みだ。」

ひゅっと息を飲む。

賃貸かと思ったがまさかの!

もうほんとにやばい。
さっき思いっきり頬ぶったけど
大丈夫か!?私!!!

もう呆気にとられすぎて
反応できずにいたら天宮社長から
質問が投げかけられた。

「山川 音羽。27歳で実家暮らし。〇〇大卒業で3年前にバイトを辞めてからニート。まちがいないか?」

う。こんなハイスペック社長さまの口から
"ニート"って言われると
殊更に胃がキリキリしてしまう。
たった3歳しか歳違わないのに
この差よ。


「まちがいないです…。」

居たたまれなくてつい俯きがちに返答する。
そして恐らく次にくる質問は…

「どうして就職しなかったんだ?」

う、やっぱり。

「えっと…特に…その、自分が社会に出て仕事をしているイメージがわかなくて…そのまま…」

我ながら言っていて情け無い。

どこかの会社で仕事してる
イメージが掴めなくて色んな会社説明会に行ったり一応面接を受けたりはしていた。

だけど面接官に
[どうしてうちで働きたいと思ったのですか?]
という質問に答えることが難しかった。

そんなの適当に御社のここが好きで。とか
御社の経営理念がとか。
言えばいいのに私は真面目にも
そんな思ってもいないことなんて言えなかったのだ。

私の返答に面接官たちはうーん。と唸ったり
この子はないな。という露骨な反応ばかりを
みたせいかやる気がどんどん損なって
結局最後の方は就活をせずに卒業してしまった。

どこの企業もやる気のない子を
採用しようなんて思わない。
当たり前だ。

最悪今働いているアルバイト先に
社員にしてもらおうかと考えてたのに
居づらくなってしまって辞めてしまった。


「まぁわからなくもないか。俺もそうだったしな。」

その言葉に天宮社長の表情を伺ってしまう。

同じなの?

「俺もどっかの誰かの下で働くイメージがつかなくて在学中に起業したのがうまくいったって感じだ。」

在学中に起業って。

全くいないわけではないが
ごく稀だよ。

しかも大成功じゃん。

「…すごいですね。」

つい口からこぼれた。

「まぁな。俺は天才だと自分でも思ってる。」

やっぱりこういう人って中身はアホなんだな。
と思って諦念の顔を浮かべて彼をみた。

「なんだよ。…とりあえずお前は甘い!甘すぎる!」

ジトリ目でみられたかと思うと急にぴしりと指を刺されて言われてしまう。

「大学卒業したてならまだわかる。わかるがお前今いくつだ?27だろ!?いい加減自立しろ!」

大きな声で言われて思わずびくりと肩が揺れる。

ごもっともです!!!!

「とりあえずお前のためではないが住み込みでよかったな。」

たしかに天宮社長の言う通りだ。
今までぬくぬくと実家に暮らしてきた
私にこの住み込みでの仕事は
自立できるチャンスだ。

お給金が高いし生活費は彼持ちだから
本当に自立といえるのか疑問だけど…

それでもここまできたからには
自分の実になるように頑張ろう!

小さく握りこぶしをして
ふん!と鼻息を荒くしていると
天宮社長が右手を差し出して
爽やかスマイルを向けてきた。

「じゃあ音羽。これからよろしくな!」

私も左手で彼の手を握り返した。

「はい!天宮社長!」

「ほかに気になることや質問があれば……」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる? 「年下上司なんてありえない!」 「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」 思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった! 人材業界へと転職した高井綾香。 そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。 綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。 ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……? 「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」 「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」 「はあ!?誘惑!?」 「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

蕩ける愛であなたを覆いつくしたい~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されてます~

泉南佳那
恋愛
梶原茉衣 28歳 × 浅野一樹 25歳 最悪の失恋をしたその夜、茉衣を救ってくれたのは、3歳年下の同僚、その端正な容姿で、会社一の人気を誇る浅野一樹だった。 「抱きしめてもいいですか。今それしか、梶原さんを慰める方法が見つからない」 「行くところがなくて困ってるんなら家にきます? 避難所だと思ってくれればいいですよ」 成り行きで彼のマンションにやっかいになることになった茉衣。 徐々に傷ついた心を優しく慰めてくれる彼に惹かれてゆき…… 超イケメンの年下同僚に甘く翻弄されるヒロイン。 一緒にドキドキしていただければ、嬉しいです❤️

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※完結済み、手直ししながら随時upしていきます ※サムネにAI生成画像を使用しています

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」 突然、降って湧いた結婚の話。 しかも、父親の工場と引き替えに。 「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」 突きつけられる契約書という名の婚姻届。 父親の工場を救えるのは自分ひとり。 「わかりました。 あなたと結婚します」 はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!? 若園朋香、26歳 ごくごく普通の、町工場の社長の娘 × 押部尚一郎、36歳 日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司 さらに 自分もグループ会社のひとつの社長 さらに ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡 そして 極度の溺愛体質?? ****** 表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...