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第1章
第6話
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「何階かな?」
エントランスでわざわざ私のために
インターホンを押そうとしてくれる彼が
優しすぎてつい頬が緩んでしまう。
こんなにイケメンなのに
その見た目通り優しいなんて
中途半端にイケメンの癖に偉そうで傲慢なやつらよりも何倍もステキだ!
パネルに触れようと人差し指を指すのだけど
(指まで綺麗なんだけど!)
「あ、えっと…○○○です!」
スマホを確認してから部屋の番号を言うと
彼の指がピクリと動き
パネルに視線を向けていたのが
瞬時に私の方に振り向いて目を見開いている。
「え?あの○○○です。」
聞こえなかったのかな?と訝しながらも
再度部屋の番号を言った瞬間。
「…マジかよ。」
途端に反対の方を向いて大きなため息を吐き出した。
何?
「…あの?」
そしてまた私の方に目を向けると
足の先から頭の先まで何度も目線が往復する。
ちょっと!なに!?
爽やかイケメンにこんなにジロジロ
見られることある!?
羞恥で顔が赤くなりかけた頃
「大和のやつ、ついにブスを寄越したか。」
なにやら聞き捨てならない
不快な言葉が届いた。
…ブスだと?
(今この人私を見てブスって言ったよね。)
は?
大和っていう名前を口にしたけど
大和っていう人は礼奈の彼氏の名前と同じである。
………。
「おい、さっさと行くぞ。ついてこい。」
そう言って胸ポケットから
カードを取り出してさっと当てると
エントランスの扉が開いた。
そして私の腕をガシッと掴むと
そのまま扉を超えてエレベーターまで
ずんずんと進んでいった。
さっきの優しい掴み方とは対照的な
強引な掴み方に驚いてしまう。
それに入る前の言葉遣い。
数分前との違和感に慄く。
もしかすると…
もしか…
「なにやってんだ!さっさと上がれブス!」
いや!もしかしなくても!
完全に!
完全に二重人格!!!!
しかもおそらく彼が雇い主だ!!!!
強引に引っ張られ部屋に連れ込まれてしまう。
玄関でさっと靴を脱ぐとまた私の腕を掴んで
奥の部屋に連れて行こうとするので
思わず私も慌てて靴を脱いだ。
(強引に連れてこられたけど大丈夫かな!?何かされたりしないよね!?)
長い廊下を歩いた先にリビングが
出てきてそのままソファのところで
乱暴に腕を放された。
「今日からよろしく。掃除は主にこの部屋、客室、書斎、浴室、トイレ、キッチンなど。食事は朝は抜きで夜は接待がない日はよろしく。特に栄養バランスの良い献立をよろしく。それから…「ちょっと待って!」
いきなり連れて来られて
お茶も出されずに
立ちっぱなしで仕事内容を淡々と
言われ始めて思わず遮ると
小さくチッと言う舌打ちが聞こえてきた。
(さっきと全然態度違いすぎる!)
「なんだ。一回じゃ覚えられないのか?」
少し馬鹿にした言い方に
温厚な性格の私ですら
流石に少しカチン!ときた。
「覚える前にこんな急に知らない男の人の家に連れ込まれて動揺してるのにいきなり仕事内容聞かされたって頭に入るわけないじゃない!」
「安心しろ。俺はブスは食わん。」
その言葉にぷつん!と
何かが切れる音がして
後先考えずに彼の頬をそりゃあもう
思いっきり叩いた。
ばっちーーん!
「イケメンだからって偉そうにしないで。
ブスにだって心はあるんだから!」
下唇を噛んで鋭い視線で彼を睨む。
確かに私は美人ではない。
礼奈のように洗練されてもいないし
体型だって中肉中背。
それでもこんなに偉そうに
言われる筋合いはない!
前髪で隠れいて下から見上げても
彼の目は見えない。
少しすると肩が震え出すのが見えた時
急に頭が冷えて冷静になった。
(やってしまった!)
あわあわとしだす私とは対照的に
肩が殊更に震えだしたかと思うと
彼は声を出して笑い出した。
しまいにはお腹を抱える始末で
私は呆気にとられてしまった。
(なんなの?!)
言い過ぎな彼も悪いが
頭に血が上ってそりゃあもう思いっきり
頬を打ったし
その頬は赤みを帯びている。
かなり痛いはずなのにどうして笑えるのか。
(Mなの!?)
「まさかブスに叩かれるとはな。」
ひとしきり笑い終えたのか
目尻に涙がたまったのを指先ですくってから
ボソリとなにか呟いたが聞き取れなかった。
エントランスでわざわざ私のために
インターホンを押そうとしてくれる彼が
優しすぎてつい頬が緩んでしまう。
こんなにイケメンなのに
その見た目通り優しいなんて
中途半端にイケメンの癖に偉そうで傲慢なやつらよりも何倍もステキだ!
パネルに触れようと人差し指を指すのだけど
(指まで綺麗なんだけど!)
「あ、えっと…○○○です!」
スマホを確認してから部屋の番号を言うと
彼の指がピクリと動き
パネルに視線を向けていたのが
瞬時に私の方に振り向いて目を見開いている。
「え?あの○○○です。」
聞こえなかったのかな?と訝しながらも
再度部屋の番号を言った瞬間。
「…マジかよ。」
途端に反対の方を向いて大きなため息を吐き出した。
何?
「…あの?」
そしてまた私の方に目を向けると
足の先から頭の先まで何度も目線が往復する。
ちょっと!なに!?
爽やかイケメンにこんなにジロジロ
見られることある!?
羞恥で顔が赤くなりかけた頃
「大和のやつ、ついにブスを寄越したか。」
なにやら聞き捨てならない
不快な言葉が届いた。
…ブスだと?
(今この人私を見てブスって言ったよね。)
は?
大和っていう名前を口にしたけど
大和っていう人は礼奈の彼氏の名前と同じである。
………。
「おい、さっさと行くぞ。ついてこい。」
そう言って胸ポケットから
カードを取り出してさっと当てると
エントランスの扉が開いた。
そして私の腕をガシッと掴むと
そのまま扉を超えてエレベーターまで
ずんずんと進んでいった。
さっきの優しい掴み方とは対照的な
強引な掴み方に驚いてしまう。
それに入る前の言葉遣い。
数分前との違和感に慄く。
もしかすると…
もしか…
「なにやってんだ!さっさと上がれブス!」
いや!もしかしなくても!
完全に!
完全に二重人格!!!!
しかもおそらく彼が雇い主だ!!!!
強引に引っ張られ部屋に連れ込まれてしまう。
玄関でさっと靴を脱ぐとまた私の腕を掴んで
奥の部屋に連れて行こうとするので
思わず私も慌てて靴を脱いだ。
(強引に連れてこられたけど大丈夫かな!?何かされたりしないよね!?)
長い廊下を歩いた先にリビングが
出てきてそのままソファのところで
乱暴に腕を放された。
「今日からよろしく。掃除は主にこの部屋、客室、書斎、浴室、トイレ、キッチンなど。食事は朝は抜きで夜は接待がない日はよろしく。特に栄養バランスの良い献立をよろしく。それから…「ちょっと待って!」
いきなり連れて来られて
お茶も出されずに
立ちっぱなしで仕事内容を淡々と
言われ始めて思わず遮ると
小さくチッと言う舌打ちが聞こえてきた。
(さっきと全然態度違いすぎる!)
「なんだ。一回じゃ覚えられないのか?」
少し馬鹿にした言い方に
温厚な性格の私ですら
流石に少しカチン!ときた。
「覚える前にこんな急に知らない男の人の家に連れ込まれて動揺してるのにいきなり仕事内容聞かされたって頭に入るわけないじゃない!」
「安心しろ。俺はブスは食わん。」
その言葉にぷつん!と
何かが切れる音がして
後先考えずに彼の頬をそりゃあもう
思いっきり叩いた。
ばっちーーん!
「イケメンだからって偉そうにしないで。
ブスにだって心はあるんだから!」
下唇を噛んで鋭い視線で彼を睨む。
確かに私は美人ではない。
礼奈のように洗練されてもいないし
体型だって中肉中背。
それでもこんなに偉そうに
言われる筋合いはない!
前髪で隠れいて下から見上げても
彼の目は見えない。
少しすると肩が震え出すのが見えた時
急に頭が冷えて冷静になった。
(やってしまった!)
あわあわとしだす私とは対照的に
肩が殊更に震えだしたかと思うと
彼は声を出して笑い出した。
しまいにはお腹を抱える始末で
私は呆気にとられてしまった。
(なんなの?!)
言い過ぎな彼も悪いが
頭に血が上ってそりゃあもう思いっきり
頬を打ったし
その頬は赤みを帯びている。
かなり痛いはずなのにどうして笑えるのか。
(Mなの!?)
「まさかブスに叩かれるとはな。」
ひとしきり笑い終えたのか
目尻に涙がたまったのを指先ですくってから
ボソリとなにか呟いたが聞き取れなかった。
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