悪役令嬢はゲーム通りに進まず猫になりました。

悪役令嬢は猫になる

第六話

「今年魔術師団に入った新人がすでに当時の私と同じかあるいはそれ以上に魔法の扱い
に長けたやつがいる。」

「あぁ例の新人か。それがどうしたんだ？」

訝しむトーマスだがそれはイヴも同じだった。

王宮魔術師団稀代の新人。

今代…いや数代遡ってみても一度も現れることのなかった
真っ黒い髪の持ち主。

人はそれぞれその身に宿す魔力の量は違う。
膨大な魔力を持てば持つほど髪の色に影響が出て
濃くなるのだがそのほとんどが限りなく“黒に近い“
髪色だ。
純粋な黒髪は古い書物に記されているくらいで
誰もみたことはなかった。

しかし彼が表舞台に現れるまでは。

聞いた節によると彼を発見したのは
今目の前にいるアルフォンスなのだが
十年前まだ幼い彼をスラム街で保護をしてから
ずっと彼はこの魔術師団の塔に隔離されていた。

膨大すぎる魔力を制御できずにいた為
この塔の地下にある魔力を抑える部屋に
完全制御できるまで軟禁されていたそうなのだが
つい先日完全コントロールを成功させた彼が
魔術師団に新人としてはいったのだ。

最初彼をみたものはその暗く染まる真っ黒い髪に
恐怖を覚えたそう。

しかしその髪の色は伊達ではなく高難易度の魔法も
指先一つで展開できるのだそうだ。

ちなみに魔法を展開する際は基本杖か魔法書が必要である。
一般に使う魔法などは基本的に杖を使うことが多い。
特殊な魔法や家を立てるなど大掛かりなものは魔法書を使うことが基本だ。

指先一つで魔法を使えるのは魔術師団の中でも稀中の稀で
そのほとんどが大貴族出身だ。

貴族は一般庶民に比べて魔力量は多いが階級によってその差は異なる。

大貴族と一般庶民の差は歴然。

故にその新人が黒髪の持ち主で膨大な魔力量を持つのに
発見された場所がスラムだというのだから
どこかの大貴族が神話レベルの黒髪の子を恐れて
スラムに捨てたのではないかと実しやかに囁かれている。

イヴの中ではその噂は本当なのではないかと
目の前のアルフォンスを盗み見た。

「彼なら僕が習得できなかったあの書の魔法を使うことが
できるかも知れない。」

「確かに魔力量が桁外れで魔法の才もずば抜けているがまだお前よりも若すぎる。
今のお前でできないのにそんな新人ができるのか？」

「魔法に歳の差は関係ない。経験や知識量では確かに違うが魔法を展開する上では歳の差よりも素質だからね。」

「まぁ確かにそうだが…。」

魔法はその人の持つ魔力量で使える魔法が変わってくる。
またそれぞれに火だったり水だったりと得意な属性も変わる。

火の属性が得意な人が水の魔法を使う際に
水の属性が得意な人よりも多く魔力を消費したりするため


より多くの魔法を使うには魔力量が多くなければならない。
その時点でまず少なければ話にならないが
魔力量だけが多いだけでも意味がない。
魔法を展開する際に魔法構築するために必要な