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シェニー視点

指輪

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朝食は部屋に持ってきてもらい
部屋で食べた。
 
そしてすぐにアインス様はやってきた。
 
 
「シェニー。迎えに来たよ。」
「ええ。」
 
穏やかに彼は私の手をとり庭園に連れて行ってくれる。
 
そして庭園に着くと椅子に座るので
向かいの椅子に座ろうとしたらつないだ手を引っ張られた。
 
「今日はここだよ。」
 
とアインス様は自分の膝の上を叩く。
急激に顔が熱くなっていく。
 
「そ、そんなところ座れませんわ!」
 
手を離して断ろうとするけど
さらに引っ張られ前のめりになる。
 
「だめ。シェニーここに座って。」
 
アインス様は一体どうしたっていうの!?
 
その攻防が数分続き私はついに負けてしまい
恐る恐る彼の膝の上に座った。
そして彼は来る前から手を握っていた反対の手で
持っていたのだろう絵本をテーブルの上に置く。
 
「シェニー。この絵本覚えてる?」
 
「・・・覚えているわ。」
 
その置かれた絵本は昔この椅子で並んで座って
一緒に読んだ絵本。
そして薬指の約束をすることになったきっかけの本。
 
「昨日。」
 
アインス様は静かに話し出した。
 
「昨日、岩が落ちてきたとき、シェニーがはじめて自分の前からいなくなるんじゃないかって怖くなった。」
 
私は彼の言葉を静かに聞いた。
 
「留学をすると聞いた時も正直絶対に行かせない。って自信があった。」
 
「小さいころからずっと一緒にいたから。これからも当たり前のように
 シェニーは俺の横にいると自惚れていたんだ。」
 
アインス様の声は微かに震えている。
瞳からはどこか悲しそうに絵本をじっと見つめている。
 
「そんな当たり前のことなんてないんだ。ってあの時思った。」
 
「ずっと傍にいると思っていたから自分の気持をシェニーに
 伝えることを怠っていた。いつか言わないと。と思っていても
 今までずっと言えなかった。」
 
アインス様の気持ち・・・。
 
「もしあの時、もう二度とシェニーに会えなくなってしまっていたら。
俺は後悔だけじゃ足りなかったと思う。
思っている気持ちはすぐに伝えないといけないってあの時気づいたよ。」
 
ぎゅっと手を握られ絵本に向けていた視線を
私に向ける。
ドキドキと早くなる鼓動。
アインス様の瞳から目を離すことができなかった。
 
 
 
「シェニー。俺は君が好きだよ。」
 
真っ直ぐにアインス様は言った。
 
風がさぁーっと私たちを優しく包むようにして
穏やかに吹いていく。
 
私の瞳からポタポタと雫が落ちていき
震える唇で
「私もアインス様が好きです。」
 
と小さく返した。
 
ちゅっと今にも零れ落ちる涙を
アインス様の唇がキスを落として涙を拭う。
 
そしてまたちゅっと今度は私のおでこに。
右の頬。左の頬。
 
唇に優しいキスを落としてくれる。
 
そしてそっと私の左手をとり、
薬指に赤く跡が残るようなキスを落とした。
 
「シェニーは薬指の約束覚えている?」
 
「覚えていますわ。」
 
幼いころ、この椅子に座って交わした約束。
 
『シェニーのひだりくすりゆびはぼくがよやくしたよ。おとなになったら
ぼくがけっこんゆびわぷれぜんとするね!』
 
あの約束は私を勇気づけてくれていた。
あの約束があったから私は頑張ってこれた。
 
アインス様は内ポケットにしまっていた
小さい箱をとりだして
 
「ごめん。先に謝るけど学園卒業までもう待てない。
 シェニー。結婚しよう。ずっと俺のそばにいてほしい。」
 
箱を開けるとキラキラと輝く指輪が入っていた。
 
涙があふれて止まらなくなる。
 
前世の記憶を思い出してから
アインス様とはいつか別れなければいけない日が来る。
そう思って自分の気持から逃げて
アインス様から逃げて。
 
なのに彼は。アインス様は私を選んでくれた。
私を好きと言ってくれた。
結婚しようと言ってくれた。
どうしよう。どうしよう。
 
泣きじゃくる私を見て微笑んでくれる。
 
私は涙で顔がぐしゃぐしゃになりながら
「・・はい。」
とだけ答えた。
 
アインス様も少し涙ぐんで
それを隠すように笑い、いつものように私の頭を
わしゃわしゃとした。
それに私も微笑み返した。
 
そっと箱から指輪をとりだし
私の左薬指に指輪をはめてくれる。
 
「シェニー。もう今度こそ絶対逃げるなよ。」
 
そう言って私の指にキラキラと輝く指輪にそっと口づけを落とした。
 
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