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シェニー視点

距離

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◇◇◇
 
昼休みに彼女に
自分から話しかけてみよう。
そう思いながら授業終わり教師に頼まれて教材を準備室に運んでいた時、
丁度サラさんが階段から降りてきた。
 
目が合うと一瞬気まずい空気なる。
 
だめ。ここでいつものように会釈だけして通り過ぎてはこの関係は進展しないわ。
 
「サラさん。おはようございます。」
 
ビクッと一瞬彼女の肩が揺れる。
 
「シェニー様。おはようございます。えっと・・それ手伝います。」
 
そういって私の両手に抱えている教材を少し持ってくれた。
 
「サラさん!そんな大丈夫です。私ひとりで運べます!」

 
少し強い口調でいってしまい、はっとする。
 
「いえ、少しシェニー様とお話がしたくて。だからついでに。」
 
そういうと階段を下りていく彼女に慌ててついていく。
 
「サラさん、お話というのは。」
 
横に歩く彼女は私よりも
少し背が低く細い腕に
何冊もの本がのせられて
腕が折れてしまうのではと少し心配してしまう。
 
「お話。というか謝りたくて。」
 
「え?」
 
「私のせいでシェニー様に嫌な噂が流れてしまって。すみません。」
 
今にも泣きそうな彼女。
 
「そんな!
サラさんが謝ることではないわ。
・・それにサラさんはその噂通り私がしているとか思ったりしませんの?」
 
歩いていた足をとめてしまう。
 
「そんなこと!全然思ったことないです!アインス様もシェニー様がそんなことする人じゃないって言っていたし私はそれを信じています。」
 
ちくりと胸が痛む。
私の知らないところでふたりは信頼関係を順調に築いている。
それが例え自分のことだとしても。
 
「アインス様が。ありがとうございます。でもこの噂が流れたのは
私の落ち度でもあります。今までサラさんと向き合わなかったために
こういう事態になったのだと
深く反省しています。
サラさん、ごめんなさい。」
 
重い荷物を抱えたまま私は頭を下げた。
 
「そんな!それはシェニー様ひとりのせいではなく私も向き合わなかったので私にも非はあります!だから謝らいでください!頭をあげてください!」

「私のほうこそごめんなさい!」
 
といってサラさんも勢いよく頭を下げた。
 
「サラさんが頭を下げることではないですわ!」
 
慌てて言うと
 
「シェニー様だって頭を下げる必要ありません!」
 
ふん!と
サラさんは鼻息を荒くして
言うものだから
思わずふっと噴き出してしまった。
 
「ふふ。」
 
と笑うとサラさんも「へへ」と可愛らしい声で笑った。
 
そしてそれが途端に面白くなって
私たち二人は人目も憚らずワハハと笑いあった。
 
「・・お前ら何笑ってるんだ。」
 
階段の下でアインス様が私たちを見つけてあきれたように声をかけてきた。
 
サラさんと目を合わせて
 
「「秘密です。」」
 
と言うとアインス様は訝しげな顔をしていた。
 
 
サラさんとこんな風に笑いあうなんて
もっと早くこうしていればよかった。
 
心がぽかぽかとしてきた瞬間。
 
階段を先に降りようとしていた
サラさんの背中を
私の後ろからドンと誰かが押した。
 
その瞬間ドサドサと音がして
サラさんは階段から落ちた。
 
「サラ!」
 
「サラさん!!」
 
 
 
たまたま階段の下にいた
アインス様が腕を伸ばして
彼女を抱きとめる。
 
安心した瞬間、
バッと後ろを振り返るとバタバタと廊下を走っていく女の後姿を見つけた。
 
「待ちなさ「シェニー様がサラさんを突き飛ばしたわ!」
 
階段下から大きな声で誰かが叫んだ。
 
「そんな!私じゃ・・・」
 
否定しようと周りを見渡すと人だかりができみんなの鋭い視線が浴びせられる。
 
階段下ではアインス様はサラさんに大丈夫か!?と声をかけている。
 
 
どうして。
 
「シェニー様の噂マジだったんだ。」
 
「ひでぇ。ここまでするか普通。」
 
そんな非難の声が耳に響いていく。
持っていた教材が足元に落ちていく。
 
私はこの光景を知っている。
急にめまいに襲われそうになる。
私は居たたまれなくなってその場から走った。
 
「逃げたぞ!やっぱりシェニー様の仕業だったんだ!」
 
そんないろんな声が聞こえてきても私は走った。
 
「シェニー!!」
 
アインス様が私の名前を呼んでいることもわかって
その場から私は逃げた。
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