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シェニー視点

悲しい笑顔

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◇◇◇
 
そんな日々も1ヶ月が過ぎ
今日アインス様は国王様と宰相様の下で
次期国王になるために
政務の補佐にいっているため
学園には来ていなかった。
シェニーも休め。って言われたけど最近はよく休んでいたから
アインス様のお言葉は
無視させていただきました。

後でバレたら怒られます。きっと。
 
アインス様がいない
お昼休みなんてなかなかない。
いつも一緒に過ごしていたから、
少し寂しい気持ちもあったけど
何より今はどうしても見たいものがあった。
 
アインス様もいないのに
サラさんとマーケル様の三人で
昼食を食べるのもどうかと思ったので
二人には昼休み前に一言
言って今日は教室で食べた。

教室で食べようとしたらクラスの方たちが、一緒に食べましょうと
言ってくれたので2回目の
皆様との楽しいお昼休みを過ごした。
 
昼休みを早めに切り上げて
図書館に向かった。
前に演説会を休んでしまって
聞き逃してしまったから
せめて資料だけでもと思い向かったのだ。
以前、昼食の時にマーケル様が
演説会の話をしてくれて
すごく興味深いものだったので、
ちゃんと資料を読みたくて
アインス様が休みの今日を狙ってきたのだ。
 
資料をみたいから
図書館に行くって言ったら
あいつの資料なんか見なくていい。
って怒られて図書館に一歩も入らせてくれなかった。
 
そんなに彼を嫌わなくてもいいのに
どこがそんなに気に食わないのか。




図書館は王宮図書館に比べると
少し小さいが貴族専用の学園なだけ
あっていろんな種類の本がたくさんある。
試験期間でもない限り
少しうす暗い湿った空気の
この図書館に来る人は少なかった。
 
席に座って本を読んでいる人もまばらで
その一番後ろの少しだけ日が差す席に私は資料をもって腰を下ろした。
 
演説会後、演説で使った資料は
この図書館に保管され
誰でも見られるようになっていた。
 
パラパラと資料に目を通していく。
どの人の資料も見ごたえ抜群で
どうして演説会に出なかったんだろうと後悔した。
 
その中でもやっぱりとても興味深かったのがマーケル様の資料。

海の向こうの大国で十数年過ごしてきた彼だからこそ、見える世界が違っていて
彼の見ようとしている、この国の未来はどんなものになっていくのだろう
 
アインス様も
どの演説もすごくよかったけど
マーケル様の演説はずば抜けて
よかったと言っていた。
"演説だけはな"って
強調してたけど・・。
 
ふたりが仲良く手を取り合って
国の繁栄を担ってくれたいいのに。
 
ひとりで論文片手に苦笑いをしてしまった。
 
「何か面白いことでも書いてました?」
 
 
後ろから声を掛けられ驚いて振り向くと
そこにはマーケル様がいた。
物思いにふけってしまっていたのか、
声を掛けられるまでは気づかなかった。

「あ、いえ。少し思い出し笑いを。」
 
「あー、王太子様のことですか?」
 
え!と驚く。なんでわかるのだろうか。
 
彼は私にその問いの返答を聞かずに
「座ってもよろしいでしょうか?」
と再度、訪ねてきた。
 
「どうぞ。」

ありがとうございます。と言って静かに私の前の椅子を引きそっと席に座る。
ただそれだけの行動なのに
穏やかでだけど優雅に見えて
彼もまた女性を魅了してしまうほどの
魅力の持ち主なんだと思ってしまう。
たった3歳差なのにこんなに大人に見えるのもまた彼の仕草や動作が
それを助長しているのだろう。
 
「資料どうでしたか?」
 
「ええ。とても興味深くおもしろかったです。この資料の通りになれば、この国はさらにいい方向に発展するともいます。」
 
「ありがとうございます。これが実現できるよう僕ももっと頑張るつもりです。」
 
「はい。私も少なからず何かお手伝いできることがあれば、是非おっしゃってください。」

図書館には人が少なく私たちは少し小声で話した。
 
彼と二人きりで話すのはこれで2回目だ。
あまり婚約者のいる令嬢が
ほかのご子息様と話すのは
よくないことだけど
人の少ない図書館だからいいかと気を許してしまう。
 
「シェニー様は本当にお優しいですね。はは。どうして彼より先に出会わなかったのかな。」
 
穏やかに笑っていたのに
そういうと彼は途端に悲しい笑顔になる。
 
「マーケル様?」
 
今にも泣きそうな顔のマーケル様は机の上にある
自分の手を見つめる。
 
少しの間が開いた後、

「王太子様のことは好きですか?」
 
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