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拗らせ王子視点

未定

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「シェニー!大丈夫なのか?!」

急いでベッドで寝ている
シェニーの元に向かった。
そして侍女長のマアヤからそっと
シェニーの細い手を取り両手で強く握った。

弱々しく俺の手を握り返してくるシェニーに俺は柄にもなく泣きそうなる。

「アインス様。大丈夫です。申し訳ございません。」

「いや俺が君の体調に早く気づいてやれればよかったんだ。」

更にギュッと彼女の手を握る手に力を込めた。

と同時にアンシュタイン公とシェニーの母も息を切らして部屋に入ってきた。

「シェニー!目を覚ましたんだな!心配したんだぞ!さぁ早く先生に診てもらいなさい。」

アンシュタイン公から遅れてやってきた
この国随一の名医に彼女の容態を診てもらった。
まだ微熱と少しの頭痛があるだけでこれから一週間安静にしつつ軽くリハビリをするということになった。

とりあえず大丈夫みたいだ。
本当によかった。

一安心してから
もう少しシェニーのとこにいたかったが
アンシュタイン公が
全然寝もしない俺を気遣って強制的に城に帰らされた。

そしてその日は城の俺専属の従事達に
強制的にベッドまで連れていかれ私室から出してもらえずそのまま次の日を迎えた。

とりあえず一安心したことだし
3日も休んだんだ。
授業も出ないとな。
それにシェニーは一週間安静だ。
その分の授業のノートを取ってあげないと。
そう思い俺は支度をして学園に向かった。

そのまま授業に突入し、時間は過ぎて
昼になる。
もういつもの日課になっている
サラとの昼食はやっぱり少し面白くなかった。

シェニーのいない学園は静かで物足りなくこんなにもシェニーがいるのといないのとじゃ違うものかと
彼女は俺の中でやっぱり大きな存在なんだと思い知る。

昼も終わり午後の授業。
耳心地いい教師の声をぼーっと聞きながら改めてシェニーが起きた時を思い出す。

何年も何年も握ってなかった
シェニーの手はいつのまにか俺より小さくなってちょっと本気を出せば折れるほど細い指。

途端、一気に顔に熱を帯びていくのがわかった。
本当に心配していたとはいえ柄にもなく自らシェニーの手を握るなんて。

恥ずかしすぎる!

今更その羞恥を感じてしまっては
堂々とシェニーの顔を見るのが恥ずかしく
放課後、毎日シェニーの屋敷の門の前で
右往左往するだけで勇気が持てず一度もお見舞いに行けないままあっという間に一週間が過ぎていったのだ。

シェニーに対してだけは人一倍独占欲が強くそれなのに臆病になってしまう。


今日からシェニーは学園に戻ってくる。
一週間見舞いにも行かない俺をきっと
怒ってるだろうな。
さすがにここは俺から声を掛けよう。
一週間分の授業のノートも渡そう。
教室の扉の前で決意をし教室の扉を開いた。


扉を開くとすでにシェニーは教室にいたが誰も彼女に近寄るものはいなかった。
それは俺が作った環境だった。
少し胸につくものを抱えながら
シェニーに思い切って声を掛けようとした。

「シェニー、もう大「大丈夫ですわ。」

俺が言い切るうちに
シェニーは言葉を被せてそっぽを向き
そのまま席に着いた。

俺はその行動に驚き数秒固まってしまった。
それ以上声をかける勇気を失い自分の席についてシェニーの小さな背中をじっと見つめるしかなかった。

それから休み時間になってもシェニーは
俺の元には来ず、
昼休みになってもサラと一緒にシェニーを待ったが一向に姿を現さなかった。

心配になってサラと一緒に教室まで戻ろうとした時
ケラケラと中で楽しそうに喋るシェニーを見つけた。

なんで。

その瞬間激しい感情に支配された。

俺はサラの手を掴んで教室に入った。
周りはざわざわとしているがそんなことはどうでもよかった。

なんでシェニーは俺のとこに来ない?
見舞いに行かなかったことにそんなに怒った?

周りのざわめきで気づいたのか後ろに振り向いた。
一瞬シェニーと目があった。
が、その顔は無機質でそこに一切の感情をなくそのまま視線を元に戻した。

ズキリ。

今まで一度だって俺のちょっかいや
俺の行動に無視なんかしてこなかった彼女なのに。

どうして、。


ドクドクと心臓が早鐘を打つ。

これだけは、
それだけは言っちゃいけない。

そう思うのに。

「今日の昼はゆっくり過ごせたな。一週間しかふたりだけでのんびりできないと思ったが今日もできたと思うと今日は最高の日だな。」

思った以上に教室に俺の声が響いた。


直後、俺は後悔した。
握っていたサラの手をより強く握ることしかできなかった。
サラはただ黙って悲痛な顔の俺を下から心配そうに見上げていた。
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