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【spin-off】bittersweet first love
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「まさか、藤澤がうちの会社に入るとは思わなかった。どういう心境の変化?」
田山が慣れた手つきで灰皿にタバコの灰を落とす。大学時代に初めて吸って噎せたのが嘘のようにその仕草は堂に入っていた。
「どういうって...大学の恩師にもっと広い視野を持てって言われた。それにお前の会社だったのは、その人に推薦されたからだよ。心境の変化は何もない」
「へぇ、それはすごい偶然。じゃあ、入社したら俺の方が先輩だな!ビシバシしごいてやるから覚悟しておけよ(笑)」
先輩面しているが職種が違うので、田山の指導はノーサンキューとあしらうと吉岡がトイレに立つ。建物の構造上ココはトイレが外。ビールを飲みながら目配せで見送ると、田山がウイスキーを片手に人目を気にするように、どういうわけか小声になる。
「...なあ、気づいてるか?」
「何が?」
「さっきからあの子達こっち見てる気がしない?」
そう言われて、視線だけでカウンター席を伺うとOL2人組。たまたまその1人と目が合ってしまい、向こうが慌てて顔をそらした。
「...そうかもな」
「だろ?お前が来る前から結構目が合うんだよな。もしかして、お近づきになれるかも♡」
外見はスマートな社会人になっても中身は学生時代のまま相変わらず。俺は田山みたいに乗り気にならず、面倒くさいというスタンスを取っていたのだが、吉岡が戻ってきて、田山がまた彼に同じよう話を向けると「いいじゃん」と合意。
...ったく、多数決かよ。
2対1となり、少数派の俺の意見は無視され、嬉々として田山が声をかけに行く。こういう時、田山が率先して声をかけにいくが、殆ど断られたことがなかった。
...ますます、話が上手くなって。
田山の初対面の女性にも臆せずに話しかけられる話術に呆れつつも感心し、誘われた彼女たちは俺たちの席に加わる。即席合コンさながらに簡単な自己紹介が始まり、ノリノリに明るく楽しい自己紹介がなされ、俺だけテンション低め。2対3なので乗り気でないと判断されて溢れたかったからだ。
「皆さんは、どういったご関係なんですか?」
「昔からの同級生」
「えー、じゃあ、会社も一緒なんですか?」
「いや、違うよ。俺と吉岡は会社員で藤澤は大学院生。はい、名刺あげる。吉岡も出して出して」
田山は意図したわけではないだろうが、2人の名刺は彼女たちの興味をそそったらしい。2人ともわりと名の知れた企業で、一介の大学院生とは比べものにならないくらいのステータスがある。その後の展開は思惑通り、俺はあぶれる事に成功した。
...でかした、田山。
心の中で拍手喝采を送り、ビールを飲みつつ、生温く二組のカップリングを観察していた。それなのに、田山となんとなくカップルになりつつある子が俺にも気を使ってなのか、話しかけてくる。
「藤澤さんってどちらの大学に行かれているんですか?」
本当のことを答えるのが面倒くさかった俺は、「関西のしがない大学ですよ」と適当に口を濁すと彼女には興味を持たれなかったらしい。また、田山と話し始めようとしていたのだが、適度に酔いが回り始めた吉岡がさっきの会話を聞いており、とんでも無いことを口走った。
「何言ってんの?お前、京大じゃねぇか。しがなくないだろ??それに来年卒業してから田山のトコに就職するし。俺らの中じゃ藤澤が1番優秀だよな、田山」
彼は人の個人情報を勝手に暴露し、田山に同意を求める。田山も「そうそう」なんて相槌を打ってくれたので、さっきの女の子は、また、話しかけてきた。ただ、今度は。
「京大なんて、すご~い。藤澤さんって頭いいんですね」
心なしか1オクターブ声の高さが上がっている。
「は、はあ、どうも...」
そのテンションの高さに少しひいた。
田山が慣れた手つきで灰皿にタバコの灰を落とす。大学時代に初めて吸って噎せたのが嘘のようにその仕草は堂に入っていた。
「どういうって...大学の恩師にもっと広い視野を持てって言われた。それにお前の会社だったのは、その人に推薦されたからだよ。心境の変化は何もない」
「へぇ、それはすごい偶然。じゃあ、入社したら俺の方が先輩だな!ビシバシしごいてやるから覚悟しておけよ(笑)」
先輩面しているが職種が違うので、田山の指導はノーサンキューとあしらうと吉岡がトイレに立つ。建物の構造上ココはトイレが外。ビールを飲みながら目配せで見送ると、田山がウイスキーを片手に人目を気にするように、どういうわけか小声になる。
「...なあ、気づいてるか?」
「何が?」
「さっきからあの子達こっち見てる気がしない?」
そう言われて、視線だけでカウンター席を伺うとOL2人組。たまたまその1人と目が合ってしまい、向こうが慌てて顔をそらした。
「...そうかもな」
「だろ?お前が来る前から結構目が合うんだよな。もしかして、お近づきになれるかも♡」
外見はスマートな社会人になっても中身は学生時代のまま相変わらず。俺は田山みたいに乗り気にならず、面倒くさいというスタンスを取っていたのだが、吉岡が戻ってきて、田山がまた彼に同じよう話を向けると「いいじゃん」と合意。
...ったく、多数決かよ。
2対1となり、少数派の俺の意見は無視され、嬉々として田山が声をかけに行く。こういう時、田山が率先して声をかけにいくが、殆ど断られたことがなかった。
...ますます、話が上手くなって。
田山の初対面の女性にも臆せずに話しかけられる話術に呆れつつも感心し、誘われた彼女たちは俺たちの席に加わる。即席合コンさながらに簡単な自己紹介が始まり、ノリノリに明るく楽しい自己紹介がなされ、俺だけテンション低め。2対3なので乗り気でないと判断されて溢れたかったからだ。
「皆さんは、どういったご関係なんですか?」
「昔からの同級生」
「えー、じゃあ、会社も一緒なんですか?」
「いや、違うよ。俺と吉岡は会社員で藤澤は大学院生。はい、名刺あげる。吉岡も出して出して」
田山は意図したわけではないだろうが、2人の名刺は彼女たちの興味をそそったらしい。2人ともわりと名の知れた企業で、一介の大学院生とは比べものにならないくらいのステータスがある。その後の展開は思惑通り、俺はあぶれる事に成功した。
...でかした、田山。
心の中で拍手喝采を送り、ビールを飲みつつ、生温く二組のカップリングを観察していた。それなのに、田山となんとなくカップルになりつつある子が俺にも気を使ってなのか、話しかけてくる。
「藤澤さんってどちらの大学に行かれているんですか?」
本当のことを答えるのが面倒くさかった俺は、「関西のしがない大学ですよ」と適当に口を濁すと彼女には興味を持たれなかったらしい。また、田山と話し始めようとしていたのだが、適度に酔いが回り始めた吉岡がさっきの会話を聞いており、とんでも無いことを口走った。
「何言ってんの?お前、京大じゃねぇか。しがなくないだろ??それに来年卒業してから田山のトコに就職するし。俺らの中じゃ藤澤が1番優秀だよな、田山」
彼は人の個人情報を勝手に暴露し、田山に同意を求める。田山も「そうそう」なんて相槌を打ってくれたので、さっきの女の子は、また、話しかけてきた。ただ、今度は。
「京大なんて、すご~い。藤澤さんって頭いいんですね」
心なしか1オクターブ声の高さが上がっている。
「は、はあ、どうも...」
そのテンションの高さに少しひいた。
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