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第十二章 うさぎが応援したいのは

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『うさぎちゃん、予備ホイッスルあったっけ?』
『あります、私が管理してます』
『オッケー! 次、二年二組と五組がステージ側ね、三年五組と六組もスタンバイしておいてね』
『了解です』
『わかりました~』

 明日香先輩の的確な指示がインカム越しに生徒会役員に聞こえてくる。

『相原くんのクラスが勝つか、吉居のクラスが勝つのか直接対決楽しみね』
『俺、審判ですが公平に応援しますんで』

 大樹くんの声に皆クスクス笑ってる。
 残念ながら私は次の試合は隣のコートで審判なので、直接の応援はできない。

『私は相原くんの応援しておこうかな』
『え?』

 なっちゃん先輩の声だ。

『だって、ホラ、吉居くんの応援団多そうじゃない? 相原くん、可哀そうじゃない?』

 なっちゃん先輩の容赦ようしゃない辛辣しんらつな言葉に噴き出す明日香先輩。

『ちょっと、どういう意味ですか、夏海先輩! まあ、応援はありがたいですが』

 だよね、会長ってば嬉しそう。

『なっちゃん先輩が会長を応援するなら、私は吉居先輩を応援しますね』
『え?』

 私の声に、複数の『え?』が返ってきた。その中に会長の声も聞こえた気がする。

『めずらしいね、うさぎちゃんが会長を応援しないなんて』

 驚く明日香先輩の声に同意するように、なっちゃん先輩や大樹くんの『うん』が聞こえた。

『だってホラ、明日香先輩もきっと公平に応援するだろうから、そうしたら吉居先輩だけを応援する人いなくなっちゃいますし』
『やばい、うさぎちゃんに同情されちゃった。ありがとう、めっちゃうれしいわ』

 吉居先輩の声にどっと笑い声が聞こえてくる。
 その時体育館の隅にいた会長と視線があった。
 一秒、二秒、三秒……、きっとそれは十秒にも満たなかったかもしれないけれど。
 会長はじっと私の目を見て、そして最後に。
 ベエッと舌を出したのだ。

『はあ?』

 私の声がインカムに響く。

『どうした? うさぎちゃん』

 吉居先輩の声に『なんでもないです』とだけ答えた。


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