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第十一章 うさぎだって怒る
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「だったらいいや。もう、いい。ごめん、時間取らせちゃって。あと、二度と話しかけたり同じ学校だったなんて言わないから安心して。メールも辞めるから」
え? サツキちゃんの目を見たら、ゴシゴシと流れていた涙をこすって。
「私、トイレに行ってから戻るね。吉居先輩には、仲直りできたって言っておいてくれる?」
「なんで、そんな」
「いいから! 吉居先輩に心配かけたくないし。それに、仲直りしたくないのに、無理やりさせられちゃうの、ウイちゃんは嫌でしょ? 仲直りできなかったって言ったら、吉居先輩にまた迷惑かけそうなんで」
「サツキちゃん……」
「じゃあね、話せて良かった。ごめんね、ずっと」
言い逃げるみたいに、生徒会室を出て行くサツキちゃんを引き留めることができなかった。
あまり遅くなったら、吉居先輩が変に思うかもしれない。考えながら体育館に向かう。
『ウイちゃんと同じだった。ウイちゃんがいなくなってから、ずっと』
あれは、どんな意味なの?
『あやまらなきゃ、って思うのに、何度も声をかけようとしたのに。ウイちゃん、逃げちゃうんだもん。謝らせてももらえないんだもん、ズルイ』
サツキちゃんは、私に謝ろうとしていたの? あの最後の日も?
「うさぎちゃん?」
戻ってきた私に吉居先輩が心配そうに駆け寄ってきた。
「前川は?」
「あの、えっと、仲直りして」
「できたんだ、良かった! 前川、六年間ずっとうさぎちゃんのこと忘れられなくて、やっと会えたって泣いてたから」
「え?」
「あれ? 聞いてない?」
やっと会えた、なんて聞いてない。
フルフルと首を振った私は、正直に話す。
「本当は仲直りなんかしてないです。私が許せなかったから」
「……、そっか。そうだよな、うさぎちゃんだってずい分傷ついたんだし。だけど、あとでちょっとだけ話せるかな? 前川は、絶対に言葉が足りてない気がするからオレから補足させて」
お願い、と顔の前で手をあわせる吉居先輩に嫌とはいえず……。
え? サツキちゃんの目を見たら、ゴシゴシと流れていた涙をこすって。
「私、トイレに行ってから戻るね。吉居先輩には、仲直りできたって言っておいてくれる?」
「なんで、そんな」
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「サツキちゃん……」
「じゃあね、話せて良かった。ごめんね、ずっと」
言い逃げるみたいに、生徒会室を出て行くサツキちゃんを引き留めることができなかった。
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