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*心に降る雨*
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「空人が『合格したら』なんて言わなきゃ、あの時からきっと二人は付き合ってたんだろうな」
二人にはきっと真宙くんも知らないもっと色んなエピソードがあるんだろう。
空人くんが言っていた、お互いに小さい頃に入院していた時期や病院が一緒だったこと。
お守りをくれたことを尋ねたら『私じゃないよ』と笑ってたって。
そんな何気ない会話の中で、二人は少しずつ距離を縮めて同じ高校に空人くんが入学して、そうして晴れて付き合いだせたというのに。
春香先輩も、ずっと空人くんのことを待っていたのに。
「真宙くん、どうしたら二人は元に戻るんだろう? 春香先輩は今もまだ空人くんのこと好きだよ」
「……、ハナちゃんは二人に戻って欲しいの?」
「え?」
「本当にそれでいいの? 春香先輩と空人が元に戻ったら、きっともう皆で遊べなくなるかもしれないよ?」
真宙くんの真っすぐな視線に捉えられて、私は一瞬口ごもる。
二人が元に戻ったならば、今度こそ私は友達でもいられなくなってしまうかもしれない。
「好きなんでしょ? ハナちゃんも、空人のことが」
「……」
「なのに、元に戻してあげたいなんて、なんで?」
なんで、だろう? 負い目かもしれない。
私のせいで、って。あの日から罪悪感がずっと消えないままだ。
好きって気持ちを自分だけの心の中に封じ込め切れてなかった。
春香先輩が側にいない時、ほんの少しでも空人くんの近くにいたいと思ってしまった。
そんなずるいことばかり考えて春香先輩の気持ちを考えてなかった私の後ろめたい心が、せめて春香先輩の望みを叶えてあげられないかな、と方法を考えている。
『空人を返して』
ごめんなさい、先輩の涙を思い出す度に心が痛くなる。
「先輩に約束しちゃったんだよ、真宙くん」
『空人をとらないで』
頷くしかなかったもん。
「元に戻れるかどうかは空人次第だと思う。空人の気持ちがまだ春香先輩にあるかは俺だって知らないから」
どちらか片方の気持ちだけでは付き合えないんだよ、と真宙くんは困ったように笑う。
私より真宙くんはよっぽど大人だ。
私たち四人の中ではいつだって一番ふざけた会話をしている人なのに、きちんと色んな人の気持ちを考えていることに驚いた。
「ただ、空人が今気になってる人が誰なのかは知ってる」
「え?」
そんな人が空人くんにいるの?
驚き、その次の言葉が出ないでいる私の顔を、真宙くんはゆっくりと指を差した。
「多分、ハナちゃんのことが気になってる。俺、空人とは付き合い長いからね、何となくそういうのは気づいちゃう」
それはない、そんなことはない、と笑って首を振っても。
「俺にはわかるの、だから。ハナちゃんが今しようとしていることは自分のチャンスを潰すことになるかもしれないってことなんだよ?」
何とも言えない顔をした真宙くんに、それでも私は小さく首を振り続けた。
だって、そんなことがあってはいけない。
私が春香先輩をもっと追い込む原因になるなんて、あってはいけないんだ。
約束したんだから。
二人にはきっと真宙くんも知らないもっと色んなエピソードがあるんだろう。
空人くんが言っていた、お互いに小さい頃に入院していた時期や病院が一緒だったこと。
お守りをくれたことを尋ねたら『私じゃないよ』と笑ってたって。
そんな何気ない会話の中で、二人は少しずつ距離を縮めて同じ高校に空人くんが入学して、そうして晴れて付き合いだせたというのに。
春香先輩も、ずっと空人くんのことを待っていたのに。
「真宙くん、どうしたら二人は元に戻るんだろう? 春香先輩は今もまだ空人くんのこと好きだよ」
「……、ハナちゃんは二人に戻って欲しいの?」
「え?」
「本当にそれでいいの? 春香先輩と空人が元に戻ったら、きっともう皆で遊べなくなるかもしれないよ?」
真宙くんの真っすぐな視線に捉えられて、私は一瞬口ごもる。
二人が元に戻ったならば、今度こそ私は友達でもいられなくなってしまうかもしれない。
「好きなんでしょ? ハナちゃんも、空人のことが」
「……」
「なのに、元に戻してあげたいなんて、なんで?」
なんで、だろう? 負い目かもしれない。
私のせいで、って。あの日から罪悪感がずっと消えないままだ。
好きって気持ちを自分だけの心の中に封じ込め切れてなかった。
春香先輩が側にいない時、ほんの少しでも空人くんの近くにいたいと思ってしまった。
そんなずるいことばかり考えて春香先輩の気持ちを考えてなかった私の後ろめたい心が、せめて春香先輩の望みを叶えてあげられないかな、と方法を考えている。
『空人を返して』
ごめんなさい、先輩の涙を思い出す度に心が痛くなる。
「先輩に約束しちゃったんだよ、真宙くん」
『空人をとらないで』
頷くしかなかったもん。
「元に戻れるかどうかは空人次第だと思う。空人の気持ちがまだ春香先輩にあるかは俺だって知らないから」
どちらか片方の気持ちだけでは付き合えないんだよ、と真宙くんは困ったように笑う。
私より真宙くんはよっぽど大人だ。
私たち四人の中ではいつだって一番ふざけた会話をしている人なのに、きちんと色んな人の気持ちを考えていることに驚いた。
「ただ、空人が今気になってる人が誰なのかは知ってる」
「え?」
そんな人が空人くんにいるの?
驚き、その次の言葉が出ないでいる私の顔を、真宙くんはゆっくりと指を差した。
「多分、ハナちゃんのことが気になってる。俺、空人とは付き合い長いからね、何となくそういうのは気づいちゃう」
それはない、そんなことはない、と笑って首を振っても。
「俺にはわかるの、だから。ハナちゃんが今しようとしていることは自分のチャンスを潰すことになるかもしれないってことなんだよ?」
何とも言えない顔をした真宙くんに、それでも私は小さく首を振り続けた。
だって、そんなことがあってはいけない。
私が春香先輩をもっと追い込む原因になるなんて、あってはいけないんだ。
約束したんだから。
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