上 下
4 / 9

*【記録4】そんな報告要らないから……

しおりを挟む
 部屋に戻って隅っこに縮こまっていると、リレイがやけに上機嫌で戻ってきた。
「ハーファ」
「な、なに……なんだよ……」
 いつもより割り増しでニコニコしててちょっと不気味だ。こういう時の相棒はちょっと意地悪な時があるから。
「上司殿にキス以上の手ほどきをして欲しいと頼んだんだってな?」
 笑顔から降ってきた言葉にぎくりと体が固まった。ばれないようにしたかったのに。
「……い、イチェストの奴っ……喋りやがったな……!?」
「何故イチェストに言った? それは俺に言ってくれれば良かっただろ」
「だ、って……オレ何も知らないから……何もかもリレイにお任せなのはカッコ悪いだろ……」
 上手く行かない。リレイが姿を消して探し回った時も、結局自分は何も出来ずに足を引っ張って助けられてしまった。普段もワースみたいな頭のいい立ち回りは出来ないし、イチェストみたいに一芸に秀でてる訳じゃない。
 だからちょっとくらい……リレイに良いところを見せたかったのに。
「ハーファはキスすら初めてだったんだ。その先を何も知らないのは当たり前だろう」
「……うう……だって……」
 近付いてきた相棒の顔はにんまりと笑っている。触れた手がゆるゆると頬を撫でてきてくすぐったい。

 しばらく撫でられていると指先が頬から顎の下に移動して、猫にするみたいな撫で方になる。
「ハーファの恋人は俺だろう? なのに俺を差し置いて他の男なんかに触らせようとして……悪い子だ」
 猫になった気分でうっとりしてた所に目の前の微笑みがふっと消えて、ドキリとした。
「リレ、イ……うわっ」
「それで? この間はぐらかされた相談のお返事は?」
 真顔のまま押し倒されて、じっとリレイの瞳が見つめてくる。答えられずに逃げ出してしまったあの時間の、続きを求めて。
「う……。し、たい……オレも、キス以上のこと……トルリレイエと、したい……っ」
「っ……ハーファ……!」
 ガバッと覆い被さってきたリレイはぎらぎらした目になっていた。深いキスをしたと思ったら、唇が耳たぶを食んで、舌が耳の中に入ってきて。
「んぁ……っ」
 耳の中を何かが蠢いて響く水音に背筋がぞくぞくする。
 慣れない感触に身動きが取れずにいると、手が服の中に入ってきてすりすりと腹を撫で始めた。段々その手が上へ上がってきて、ずり上がった服の隙間から触れる空気が少しひやりとしてる。
 リレイの唇が耳から首筋へ移って、時々舌で撫でられて。
「ハーファ……」
「あ、っ……」
 ぱくりと、乳首がリレイの口の中に収められていた。
「んぅっ……! んっ、んっく、ァ……ッ!」
 唇がもぞもぞと肉を食んで、先端を小刻みに吸い上げられる。感じたことのない違和感に体が跳ねた。
 
 鳩尾を撫でてた手が背中に回ったと思ったら今度は下へ降りてくる。下着の中に手が入り込んできて、やわやわと尻を揉み始めた。
「ひ、っあ……!? ちょっ」
 下着をズボンごとずるりと引き下ろされて丸出しになった下半身を、起き上がったリレイがじっと見てる――そう思うとかあっと顔が熱くなってきた。指が滑るみたいに足の付け根をなぞる。
「あ……ぁッ……」
 普段人前で出したりしない、触られたりしない場所。リレイにそっと触れられたそこがじくじくと熱く感じる。
「り、れいっ……んっ! んんっ……!」
 するりとリレイの唇が固くなってきたオレのモノをくすぐる。自分で出す時みたいな触り方じゃない。ふわふわふわふわ、優しいけど凄く意地悪な触り方だ。
「ふ……ッ、うぅっ」
 まどろっこしくて仕方なくて自分で触ろうとしたけど、その手を掴み上げられた。何か魔術でも使ってるのか力が入らない。
 
 驚いて見上げた先の相棒は手早く自分の服を脱いでいく。
「うわっ! ぉあ……ッ!?」
 全部脱ぎ去ったリレイはオレをうつ伏せにしてのし掛かってきた。背中やうなじに舌や唇の感触がして、耳元で小さな声が名前を呼んで、荒い吐息が聞こえてきて。
 固くて熱い、オレのじゃないのが尻の割れ目に当たってきて、ゆさゆさと身体を揺すられる度に熱を擦り付けてくる。
「ハーファ……ハーファっ……!」
「ぅひぇ……っ!? っあ、う、あ、ぁ、あぁぁッ……!」
 擦られてるだけなのに、ぞわぞわっと背筋をよく分からない違和感が駆け上がってくる。
「あぅっ! あ、っ……こすっ……ひぁ……っ」
 前後に揺れながらリレイの手がオレのを包んだ。ゆっくりゆっくり、まるで見えてるみたいな動きで気持ちいい所を指先が撫でてくる。
 上下に手の平で擦られて、時々先端を指の腹がくすぐって。リレイが耳に流し込んでくる声と吐息が増えてくるのに引きずられるみたいにして、どくどくと心臓がうるさく騒ぎ始める。
 ただでさえ熱い体がどんどん熱くなって……何も考えられなくなってきた。
「っひ、あっ、う……! アっ、りれ、リレイっ……りれっ……とる、りれ、ぃえぇっ……っ」
「ふふ、他人に触られると気持ちいいだろ……好きな時にイっていいぞ」
「っう……ひ……っ! あッ、や、う……あ、う、ぁ、んあぁぁッ――!」
 ついには限界がきて。
 どぷっとオレのが熱を吐き出したと思ったら、リレイの熱が当たっていた尻の割れ目にもたらたらと液体が滴り始めた。


「リレイ、やっぱりそういう事する相手居たんだと思うんだよな……めちゃくちゃ手際よかったし、何かあっという間に気持ちよくさせられたし……」
 むすっと少しむくれた様子で椅子に座っているハーファに、頭を抱えていたイチェストは過去一番かという程に深いため息を吐いた。
「……今の赤裸々体験談は聞きたくなかったなぁ、俺……」
 やけに深刻そうな顔だったから止めずに聞いてみたけれど、結局こういうオチだった。何が悲しくて仲間の夜の体験を聞かされる羽目になってるんだろうか。
 乙女のようにとは言わないけど恥じらえよ、もうちょっと。
「まぁ……多感なお年頃を冒険者として過ごしたんなら居たんじゃないか? 恋人の一人や二人三人四人」
 ちょっと意地悪を込めて言うと、うう、とハーファは唸りながらイチェストを睨む。
 いや、睨まれても。冒険者は神殿と違い、色恋どころか性欲にも開けっ広げだ。男相手でも女相手でも酒場にそういう商売が平然とあるし、美人な給仕係や冒険者のお姉さんからの誘惑もある。
 逆にハーファが何でこの環境で未経験だったのかが不思議だ。やっぱり子供っぽさが滲み出てるんだろうか。
  
 黙り込んでしまったハーファは、分かるけど、分かるけど、と消えそうな声でブツブツ呟いている。
「ううう――ッ、やっぱ悔しい! やられっぱなしじゃ嫌だ、リレイを驚かせるのに何かねぇのかよイチェスト!」
「知るかーっ! だから男同士の事なんか知らないって言ってるだろ! 専門外なんですーっ!」
 仲間に頼られるのは嬉しいけど守備範囲外すぎてどうにもならない。
 そもそも神官兵は武力に相当する能力を持っている故に、教会や信徒の人間に手を出す事はアウトに近い。そういう事をした神官兵が居たんだろう、襲われたと濡れ衣を着せられないための不文律になっているのだ。
 恋人になるとしたら同じ神官兵くらいでしか相手が居ないけれど、少ない異性の争奪レースにイチェストは乗れてすらいなかった。色恋沙汰の手管は無いかと言われても出てくる訳がない。
「お前得意だっただろ、大書庫とかの本探し! すげぇテキパキ資料見つけてたじゃねーか!」
「俺のレファレンススキルを何だと思ってんだ! エロ本捜索用じゃないんだぞ! 欲しいなら自分で探せ!」
「んだよケチ!!」
「ケチとは何だケチとは! 神殿の大書庫は蔵書が管理されてるからレファレンスできんの! 街の沢山の本屋の蔵書なんて分かるわけないだろ!」
 ハーファはふてくされた顔でこっちを見てくるけれど、無い袖は振れない。やがて諦めたのか外歩いてくると言い残して部屋を出ていった。
 
 去った災難の予感にイチェストはほっと胸を撫で下ろす。けれど少しだけ、ほんの些細な疑問が沸き立ってきた。
「アイツどこで探す気なんだ……?」
 大書庫ですら資料を探せなかったハーファがまともなものを探せるのだろうか。多分エロ本を探しに行った、と、思う……けれど。そもそもそうでない本との見分けがつくんだろうか。
 普段本の類は申し訳程度にしか読んでいないであろう仲間に段々と不安になってくる。
「……何か……えっぐいニッチな本見つけてそう……」
 まともな本を見つけられなさそうだという不安が勝り、結局イチェストも外の本屋に繰り出していったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チラウラ

青空びすた
BL
チラシの裏に書いたような短編集 高校生×高校生 時系列はバラバラ。 気まぐれに増える予定。 →一旦完結しました。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

チート魔王はつまらない。

碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王 ─────────── ~あらすじ~ 優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。 その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。 そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。 しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。 そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──? ─────────── 何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*) 最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`) ※BLove様でも掲載中の作品です。 ※感想、質問大歓迎です!!

お前じゃないとダメなんだ

むらくも
BL
パーティを組まずに単独で活動している魔術師リレイの前に現れたのは、同じく単独で旅をしている格闘家のハーファ。 ハーファの特殊能力に気付いたリレイは好奇心からパーティを組もうと提案する。 組んだ相棒は強がりで……想定以上にウブだった。 *RPG的な世界が舞台の冒険ファンタジー風BL。 *魔物や一部対人で戦闘描写が入るので、流血と欠損描写があります。 *「アンタじゃないとダメなんだ(格闘家視点)」の魔術師(攻め)視点。  格闘家(受け)視点の元になった話のため、少し短めです。

記憶喪失の君と…

R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。 ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。 順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…! ハッピーエンド保証

らりぱっぱっぱっぱ

68
BL
ドラッグ×セックスBL リバ・暴力・薬物・小スカ他ご注意ください。 薬を使ってDKとエロいことした灯が、脅されたり報復されたりたまに純愛したり 「楽しくて気持ち良ければいいじゃん」 らりぱっぱBL 登場人物 紺野向葵(こんのあおい) 紅谷灯(べにやあかり) 緑島三十里(りょくしまみどり) 紺野翅庵(こんのしあん) 黄野稀路(こうのきいろ) 白杜見来(はくとみるく) 黒森虚(くろもりうつろ) 銀咲イブシ(ぎんざきいぶし) 紅谷金烏(べにやかなと) 鳶色小豆(とびいろあずき) 浅葱愛露(あさぎあいろ) 持部宮助主(もぶみやじょしゅ) ハピエン・最終カプは確定要素です。 ご期待に添えない可能性があります。申し訳ありません。 ※メリバ・死にエンドにはしません あとがきはブログにて http://ushironityui.blog.fc2.com/blog-entry-2.html コメとかもらえたら嬉しいです ブログにエピローグを追加しました。 ※エピローグは全4編あり、J庭45で頒布する同人誌に収録されます ※アルファポリスでは完結済みだと次話投稿が出来ない為ブログへの掲載お知らせです

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

男鹿一樹は愛を知らないユニコーン騎士団団長に運命の愛を指南する?

濃子
BL
おれは男鹿一樹(おじかいつき)、現在告白した数99人、振られた数も99人のちょっと痛い男だ。 そんなおれは、今日センター試験の会場の扉を開けたら、なぜか変な所に入ってしまった。何だ?ここ、と思っていると変なモノから変わった頼み事をされてしまう。断ろうと思ったおれだが、センター試験の合格と交換条件(せこいね☆)で、『ある男に運命の愛を指南してやって欲しい』、って頼まれる。もちろん引き受けるけどね。 何でもそいつは生まれたときに、『運命の恋に落ちる』、っていう加護を入れ忘れたみたいで、恋をする事、恋人を愛するという事がわからないらしい。ちょっとややこしい物件だが、とりあえずやってみよう。 だけど、ーーあれ?思った以上にこの人やばくないか?ーー。 イツキは『ある男』に愛を指南し、無事にセンター試験を合格できるのか?とにかく笑えるお話を目指しています。どうぞ、よろしくお願い致します。

処理中です...