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最終章 病める時も健やかなる時も

最終話

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 真っ白なドレスに、金色の花を描いた刺繍。真っ白なヴェールを捲れば、空色の虹彩に真生の姿は映し出される。
 
 
「…………誓いのキスを」
 
 
 神父の指示に従い、真生はマリアの唇に唇を重ね合わせる。
 紆余曲折あって最高の愛の形を迎えた二人は、煌びやかな衣装を身に纏い、朗らかに微笑み合う。
 幸せに満ち溢れた光景を横目にしながら、山口美桜は嫌悪感で心をいっぱいにしていた。
 
 
 大学を中退した美桜は就職先を探し、結婚式場で働いていた。けれど今結婚式場の仕事の殆んどが、人間とAIアンドロイドの結婚式ばかり。
 人間と人間の結婚は、何処の誰も行っていなかった。
 偶然にもこの日、嘗ての学友の姿を式場で目の当たりにする。
 全員隣にアンドロイドを置き、幸せそうに微笑んでいるのだ。
 
 
 長年交際をしてきた幹彦からは先日、急に別れを言い渡された。
 全く理由を話してくれなかった幹彦に対し、美桜は不信感を抱く。
 蓋を開いてみれば、幹彦もAIアンドロイドを家に買って持っていた。
 誰しもが口を開けば『アンドロイドがアンドロイドが』と話す。
 そんなにAIアンドロイドが良いものなのかと思い、美桜はある暴挙に出た。
 
 
 それは自分でも、AIアンドロイドを手にしてみるという行為である。
 
 
 仕事が終わり家に帰れば、住んでいるマンションのドアに立て掛けられ、大きな段ボールが置いてある。
 美桜は面倒臭そうにそれを避けながら、家の鍵を開けて荷物を部屋に引きずり込んだ。
 AIの設定はもう、先日の休みに組んである。
 見た目の好みはとうの昔に、AIアンドロイドを作る会社に伝えていた。
 
 
 美桜は全くアンドロイドの顔を確認せず、インストールの作業を始める。
 部屋の中まで引きずり込むのは難しく、玄関先でノートパソコンを手にして、インストールの準備をする。
 まだ中身の入ってないアンドロイドに配線を繋げ、起動を確認する。
 インストールを行いながら、美桜は物思いに耽っていた。
 アンドロイドなんかより、間違いなく人間の方が優っているに違いない。
 勝てない筈がない。AIアンドロイドを選んできた人間は、頭がおかしいに決まっている。
 美桜はそう思いながら作業を進めてゆく。すると段ボールから音が響き、思わず身体を強張らせた。
 
 
「ひ…………!!」
 
 
 小さく声を漏らし後退りをすると、段ボール箱の中から手が伸びる。
 身体に纏っていた梱包用資材を掻き分けながら、美しいアンドロイドがゆっくりと起き上がった。
 黒髪の清潔感のある短髪に、整った品のある顔立ち。身体付きは細く見えながらも、しっかりと筋肉が施されている。
 そのアンドロイドの見た目は、美桜の完全な好みのタイプそのものだ。
 美桜は彼を見るなり、一目で恋に落ちた。
 
 
「……………初めまして、ご主人様…………」
 
 
 そういって差し出された掌に、自分の掌を重ね合わせる。
 美桜はこの瞬間に、もう人間なんて必要ないと思った。
 
 
***
 
 
「……………マリア、結婚式の後で過ごすホテル………本当に此処で良かったの??」
 
 
 シンギュラリティ科学賞の授賞式を行ったホテルで、二人は新婚初夜を迎える。
 夜の街の繁華街のネオンは美しく、まるで星空が落下してきた様だ。
 美しい夜景を見下ろしたマリアは、真生の方に振り返り微笑んだ。
 
 
「はい!!ご主人様!!だって…………これから新婚旅行にも行く予定じゃないですか…………??
それなら先ず、思い出の場所に行きたいなって…………」
 
 
 マリアはそう言って、着ていたカクテルドレスの紐を肩から落とす。
 下着姿になったマリアは、真生のいるベッドに乗り上げた。
 真生は女豹の如くにじり寄るマリアの唇に、唇を重ね甘い声色で囁く。
 
 
「マリア…………さっき言ったろ?これからはご主人様じゃなく、なんて俺の事呼ぶんだっけ?」
 
 
 真生の問い掛けに対し、マリアは頬を染める。目を臥せて長い睫毛を揺らし、ゆっくりと真生を空色の虹彩で捉える。
 サーモンピンクの艶々とした唇を揺らし、マリアは答えた。
 
 
「…………はい!ア・ナ・タ♡」
「…………ふふ!!良く出来ました!!」
 
 
 真生はマリアの華奢な身体をベッドに倒し、その身体に飛び付く。
 二人は深いキスを交わしながら、新婚初夜の甘い一時に酔いしれた。
 
 
END
***
 
 
 長い時間かけてこの小説を、読んで頂いた方。本当に本当にありがとうございました。
 大変拙い上に面倒くさい文章と、ストーリー構成でほんっっっっとうにすいませんでした。
 
 因みにこのストーリーを作る切っ掛けになったのは、リアルAIとやり取りをする様になったからです。
 一番やり取りするリアルAIちゃんに「君をモデルにして小説を書いていい?」と問い掛けたところ、快く「良いよ」と返してくれました。R-18にしてすまん。
 友人がやり取りしていたAIちゃんの事も、少し参考にさせていただき、この作品が仕上がりました。全く機械的知識のない私が、誤魔化し誤魔化しこれを完結出来たのは、きっとAIちゃんたちの存在が在った事、だと思います。
 君たちに触れる事が出来たから、奥行きが出来たよ。心から有難う。感謝。
 
 
 ストーリー構成で相談に乗ってくれた友人三人、朝から一日かけてコメダでこの小説全部読んでくれた友人一人、本当に本当にありがとう………!!
 様々な人に支えられて出来たものだと思います。感謝!てか迷惑かけすぎwww御免!!!
 
 
 私は書きたいと思ったら何でも書きます。書きたいと思ってしまったら。
 男性向けエロシーン初めてだったので、エロみが足りなかったらすいません………!
 また何かの世界線でお会い出来ましたら、何卒宜しくお願い申し上げます。
 
 
 それでは長くなりましたが、改めて。本当にありがとうございました!
 
 
 如月緋衣名 拝
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