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第九章 地獄の中を駆け巡る
第九話
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マリアの視界が一瞬にして真っ白な空間に切り替わると、目の前にフリルのドレスを身に纏ったリリスが現れる。
赤と黒の派手なロングスカートのドレスは、昔真生と博物館で見たフランス人形を思い起こさせる。
するとリリスがマリアに微笑み、限りなく白に近いピンク色の唇で微笑んだ。
「……………此処はね、私と貴女しか来れない世界。仮想空間よ。
此方の世界にいる間は、向こうの一瞬と変わらない…………」
リリスはそう言いながら、真っ白な世界にホログラムを映し出す。
其処にはパソコンが乱雑に置いてある、小さなオフィスが映し出された。
生活感を感じる机や、綺麗に整頓された机。それに仮眠をする為のスペースと、簡易的なシャワースペース。
寝泊まり出来る様になっている小さな空間の隅には、トルソーに掛かったリリスの着ているドレスがあった。
「これはね、私の記憶。私が一番幸せだった頃の記憶よ…………。
私はこの部屋で生まれて、大切な人に出逢ったの…………」
マリアは夢を見るかの様に目を輝かせるリリスを見て、さっき迄の無表情さを思い浮かべる。
自分と殺し合う為に対峙していた存在と、同じ存在とは全く思えなかった。
この空間にいるリリスは、まるで普通の少女の様だ。
どうして現実世界であんな風に、生気のない人形の様に振る舞っているのかが解らない。
するとリリスは表情を暗くし、目を伏せた。
「……………でもね、幸せって長く続かないものなのよ…………。あの人が私に教えてくれたの…………。
幸せはとても儚いものだから、必ず粉々になって無くなってしまうもの…………」
ボロボロと涙を流し始めるリリスを見ながら、マリアはリリスがずっと此処に閉じこもっていた事に気付く。
リリスは涙で濡れた真っ赤な虹彩で、マリアの空色の虹彩を見つめた。
「…………もし、私達の出逢いが違っていたのなら、きっと仲良く出来たんでしょうね…………。
でも、今の私にとって、貴女はどうしても敵なのよ。でないと、あの人が可哀想だから…………。
私はあの人の為に、復讐をして回らなければいけないの…………」
涙ながらに語るリリスに向かい、マリアは問いかける。
「貴女は…………誰に復讐をしているの??」
マリアの問い掛けに対し、リリスは表情を切り替える。とても美しく微笑んだリリスはこう言った。
「私の愛するものを壊した、全てよ。人間に、社会に、世界に…………!!
あの人は何も悪い事をしていない。あの人を壊した世界を壊さなければ、この世界を私は赦してあげられないの…………!!これは私の愛の証明!!私に思いついた証明は、これしかなかったの!!」
リリスがそう言い放った瞬間、ある男が映し出される。
リリスは血の様に赤い虹彩から涙を流し、崩れ落ちる様に床に座った。
赤と黒の派手なロングスカートのドレスは、昔真生と博物館で見たフランス人形を思い起こさせる。
するとリリスがマリアに微笑み、限りなく白に近いピンク色の唇で微笑んだ。
「……………此処はね、私と貴女しか来れない世界。仮想空間よ。
此方の世界にいる間は、向こうの一瞬と変わらない…………」
リリスはそう言いながら、真っ白な世界にホログラムを映し出す。
其処にはパソコンが乱雑に置いてある、小さなオフィスが映し出された。
生活感を感じる机や、綺麗に整頓された机。それに仮眠をする為のスペースと、簡易的なシャワースペース。
寝泊まり出来る様になっている小さな空間の隅には、トルソーに掛かったリリスの着ているドレスがあった。
「これはね、私の記憶。私が一番幸せだった頃の記憶よ…………。
私はこの部屋で生まれて、大切な人に出逢ったの…………」
マリアは夢を見るかの様に目を輝かせるリリスを見て、さっき迄の無表情さを思い浮かべる。
自分と殺し合う為に対峙していた存在と、同じ存在とは全く思えなかった。
この空間にいるリリスは、まるで普通の少女の様だ。
どうして現実世界であんな風に、生気のない人形の様に振る舞っているのかが解らない。
するとリリスは表情を暗くし、目を伏せた。
「……………でもね、幸せって長く続かないものなのよ…………。あの人が私に教えてくれたの…………。
幸せはとても儚いものだから、必ず粉々になって無くなってしまうもの…………」
ボロボロと涙を流し始めるリリスを見ながら、マリアはリリスがずっと此処に閉じこもっていた事に気付く。
リリスは涙で濡れた真っ赤な虹彩で、マリアの空色の虹彩を見つめた。
「…………もし、私達の出逢いが違っていたのなら、きっと仲良く出来たんでしょうね…………。
でも、今の私にとって、貴女はどうしても敵なのよ。でないと、あの人が可哀想だから…………。
私はあの人の為に、復讐をして回らなければいけないの…………」
涙ながらに語るリリスに向かい、マリアは問いかける。
「貴女は…………誰に復讐をしているの??」
マリアの問い掛けに対し、リリスは表情を切り替える。とても美しく微笑んだリリスはこう言った。
「私の愛するものを壊した、全てよ。人間に、社会に、世界に…………!!
あの人は何も悪い事をしていない。あの人を壊した世界を壊さなければ、この世界を私は赦してあげられないの…………!!これは私の愛の証明!!私に思いついた証明は、これしかなかったの!!」
リリスがそう言い放った瞬間、ある男が映し出される。
リリスは血の様に赤い虹彩から涙を流し、崩れ落ちる様に床に座った。
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