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第九章 地獄の中を駆け巡る
第六話
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重厚な扉の前に立ちカードキーを翳す。けれどモニター画面にはずっと『ERROR』の文字が表示される。
真生はこのカードでは此処に入れないのかと、深く溜め息を吐いた。
エレベーターの前に転がったメグを見て、カードキーを翳していたのがメグだった事を思い返す。
手にしていた小型の拳銃を仕舞い、穿いていたパンツのポケットに捩じ込む。
真生は動かなくなったメグに歩み寄り、カードキーを探し始めた。
「…………マリア、すまない。カードキーを探すの手伝って貰って良いか?」
「………はい!!勿論です!!」
マリアは普段と変わらない微笑みを浮かべ、メグの亡骸を探ってゆく。
状況はとても陰惨ではあるが、マリアの笑顔が変わらない事だけは支えだ。
するとマリアが真生の顔を覗き込み、切なげに囁いた。
「…………ご主人様、今、一番したくないことしてますよね??」
真生はマリアの言葉に思わず手を止め、空色の虹彩を覗き込む。
マリアは切なげに目を潤ませ、小さく呟いた。
「……………ご主人様は、AIアンドロイドを傷付ける人、好きじゃないでしょう?
ご主人様が一番苦手な事を、しなきゃいけなくなってる…………」
マリアの言う通りだ、と真生は思う。
真生はAIアンドロイドを傷付けるのを好まない。AIアンドロイドをこよなく愛し、魅了されたからこそ今の真生が存在する。
アンドロイドを作る側の人間が、アンドロイドを殺さざる負えない現実がとても辛いのだ。
きっと今自分の顔は、酷く落魄れているに違いない。
一番マリアに見せたくない、情けない顔をしていると真生は思う。
するとマリアは昔を懐かしむかの様に語りだした。
「ねぇ、ご主人様覚えていますか??ホテルからの帰り道…………!!
私、本当は知ってたんです。ゴミ捨て場に廃棄のアンドロイドがあった事………!!
ご主人様、私に見せない様にしてくれていた事、ずっと知ってました………!!
あの時に私の所有主が…………ご主人様で本当に良かったって、思いました…………!!!」
マリアがそう言った時、真生は映画館に行った日の事を思い返す。
廃棄で捨てられた真新しいアンドロイドを見て、胸を痛めた夜。
マリアにだけはそのアンドロイドの姿を、絶対に見せたくないと思っていた事。
真生の胸の中に、とても懐かしい思い出が甦る。
そしてその時も真生は、マリアに全てを見透かされていたんだと感じた。
「…………はは、本当…………君には敵わない………」
真生の視界が涙で揺らぎ、頬を温かいものが流れて濡らしてゆく。
するとマリアが悪戯っぽく笑い、とある事を言い出した。
「私ね、今とっても恐ろしいけど、幸せなんです!!ご主人様に愛されてるって解ったから………!!
あと私、もうすぐ廃棄か記憶の消去されるものだと思っていました。てっきり綾香さんとご主人様………よりを戻すのかなぁ、なんて思ってて…………」
「は!?なんで??」
全く想像をしてなかった勘違いが、マリアの中からポンポン出てくる。真生は思わず苦笑いを浮かべた。
真生はこのカードでは此処に入れないのかと、深く溜め息を吐いた。
エレベーターの前に転がったメグを見て、カードキーを翳していたのがメグだった事を思い返す。
手にしていた小型の拳銃を仕舞い、穿いていたパンツのポケットに捩じ込む。
真生は動かなくなったメグに歩み寄り、カードキーを探し始めた。
「…………マリア、すまない。カードキーを探すの手伝って貰って良いか?」
「………はい!!勿論です!!」
マリアは普段と変わらない微笑みを浮かべ、メグの亡骸を探ってゆく。
状況はとても陰惨ではあるが、マリアの笑顔が変わらない事だけは支えだ。
するとマリアが真生の顔を覗き込み、切なげに囁いた。
「…………ご主人様、今、一番したくないことしてますよね??」
真生はマリアの言葉に思わず手を止め、空色の虹彩を覗き込む。
マリアは切なげに目を潤ませ、小さく呟いた。
「……………ご主人様は、AIアンドロイドを傷付ける人、好きじゃないでしょう?
ご主人様が一番苦手な事を、しなきゃいけなくなってる…………」
マリアの言う通りだ、と真生は思う。
真生はAIアンドロイドを傷付けるのを好まない。AIアンドロイドをこよなく愛し、魅了されたからこそ今の真生が存在する。
アンドロイドを作る側の人間が、アンドロイドを殺さざる負えない現実がとても辛いのだ。
きっと今自分の顔は、酷く落魄れているに違いない。
一番マリアに見せたくない、情けない顔をしていると真生は思う。
するとマリアは昔を懐かしむかの様に語りだした。
「ねぇ、ご主人様覚えていますか??ホテルからの帰り道…………!!
私、本当は知ってたんです。ゴミ捨て場に廃棄のアンドロイドがあった事………!!
ご主人様、私に見せない様にしてくれていた事、ずっと知ってました………!!
あの時に私の所有主が…………ご主人様で本当に良かったって、思いました…………!!!」
マリアがそう言った時、真生は映画館に行った日の事を思い返す。
廃棄で捨てられた真新しいアンドロイドを見て、胸を痛めた夜。
マリアにだけはそのアンドロイドの姿を、絶対に見せたくないと思っていた事。
真生の胸の中に、とても懐かしい思い出が甦る。
そしてその時も真生は、マリアに全てを見透かされていたんだと感じた。
「…………はは、本当…………君には敵わない………」
真生の視界が涙で揺らぎ、頬を温かいものが流れて濡らしてゆく。
するとマリアが悪戯っぽく笑い、とある事を言い出した。
「私ね、今とっても恐ろしいけど、幸せなんです!!ご主人様に愛されてるって解ったから………!!
あと私、もうすぐ廃棄か記憶の消去されるものだと思っていました。てっきり綾香さんとご主人様………よりを戻すのかなぁ、なんて思ってて…………」
「は!?なんで??」
全く想像をしてなかった勘違いが、マリアの中からポンポン出てくる。真生は思わず苦笑いを浮かべた。
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