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第九章 地獄の中を駆け巡る
第五話★
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真生の記憶の中のアダム社のエレベーターホールは、とても清潔で綺麗だった。
それなのに今目の前に広がっている光景は、おぞましい程に陰惨なものだ。
真っ白い床は変色して赤黒くなった血に塗れて、禍々しい鉄の臭いを漂わせているのだ。
エレベーターホールの壁の隅には、元々人間だったであろう肉塊が積み上げられて、乱雑に其処に置かれている。
どれくらいの人間が此処で、無残にも殺されたのだろうと真生は思う。
真生は鉄の臭いの漂うエレベーターホールから目を逸らし、カードキーを翳した。
エレベーターに乗り込み、リリスのいる場所へと真生とマリアは向かう。
床は血の付いた靴で踏みしめたであろう足跡に塗れ、赤黒く汚れている。
余りにも過酷すぎると真生は思いながら、アダム社の強化ガラスの窓のエレベーターに目を向けた。
何時も見ていたビルの洪水は輝き、今日に限って異様に眩く真生には映る。
ふと、隣にいるマリアの横顔を見ると、空色の虹彩にその輝きを映し出していた。
真生はマリアの瞳の輝きから、シンギュラリティ科学賞の授賞式の夜を思い返す。
とても平和で幸せだった時代の、懐かしい交わり。
これが終わったらあの時みたいなホテルに、マリアを連れ出してあげたい。
もっと綺麗なドレスを身に纏わせて、綺麗に着飾らせてあげたい。そして夜に愛し合う時は、愛していると伝えたい。
愛していると伝えられるだけでなく、自分の口からちゃんと、マリアに愛していると伝えたい。
真生はそう思いながら、開くエレベーターの前で銃を構える。
扉が開くのと同時に、血に塗れたメグが現れた。
真生はメグに付いている血液が、東郷のものではないかと感じる。
メグは警察署のアンドロイドの様に素早く動き、エレベーターの中に飛び込んできた。
こんなに速度の速いアンドロイドが、アダム社の中にいたのかと、真生は思わず凍り付く。
自分に向かって飛んでくるメグを見て、真生は全く身動きが取れなくなっていた。
マリアはメグの腕に掴み掛かり、真生の前に立つ。
吹き飛ばされたメグは無表情なまま、首をゆっくりと回した。
「…………ご主人様!!このアンドロイド、武術がインストールされてる!!!」
アンドロイドに武術をダウンロードさせることにより、ボディーガードとして使う人間は少なくない。
東郷はボディーガードが必要になる立場の人間だ。
互角で戦うマリアとメグを見ながら、マリアに応戦できる方法を考える。
するとマリアはメグの身体を床に叩き付けた。
ハァハァと荒い呼吸をするマリアは、メグの頭を床に押し付けた儘で真生を見る。
真生はマリアの持つ小型の銃を手にし、メグの額に銃口を付けた。
アンドロイドの要の頭を、鋼鉄の弾丸で打ち抜く。ドンッ、という音が響き、メグの頭がビクンと跳ねる。
メグはそれから、一切動かなくなった。
AIを殺す日がくるなんて思わなかった、と真生は思う。真生は震える手をグッと握り締め、リリスのいる部屋の前に立った。
それなのに今目の前に広がっている光景は、おぞましい程に陰惨なものだ。
真っ白い床は変色して赤黒くなった血に塗れて、禍々しい鉄の臭いを漂わせているのだ。
エレベーターホールの壁の隅には、元々人間だったであろう肉塊が積み上げられて、乱雑に其処に置かれている。
どれくらいの人間が此処で、無残にも殺されたのだろうと真生は思う。
真生は鉄の臭いの漂うエレベーターホールから目を逸らし、カードキーを翳した。
エレベーターに乗り込み、リリスのいる場所へと真生とマリアは向かう。
床は血の付いた靴で踏みしめたであろう足跡に塗れ、赤黒く汚れている。
余りにも過酷すぎると真生は思いながら、アダム社の強化ガラスの窓のエレベーターに目を向けた。
何時も見ていたビルの洪水は輝き、今日に限って異様に眩く真生には映る。
ふと、隣にいるマリアの横顔を見ると、空色の虹彩にその輝きを映し出していた。
真生はマリアの瞳の輝きから、シンギュラリティ科学賞の授賞式の夜を思い返す。
とても平和で幸せだった時代の、懐かしい交わり。
これが終わったらあの時みたいなホテルに、マリアを連れ出してあげたい。
もっと綺麗なドレスを身に纏わせて、綺麗に着飾らせてあげたい。そして夜に愛し合う時は、愛していると伝えたい。
愛していると伝えられるだけでなく、自分の口からちゃんと、マリアに愛していると伝えたい。
真生はそう思いながら、開くエレベーターの前で銃を構える。
扉が開くのと同時に、血に塗れたメグが現れた。
真生はメグに付いている血液が、東郷のものではないかと感じる。
メグは警察署のアンドロイドの様に素早く動き、エレベーターの中に飛び込んできた。
こんなに速度の速いアンドロイドが、アダム社の中にいたのかと、真生は思わず凍り付く。
自分に向かって飛んでくるメグを見て、真生は全く身動きが取れなくなっていた。
マリアはメグの腕に掴み掛かり、真生の前に立つ。
吹き飛ばされたメグは無表情なまま、首をゆっくりと回した。
「…………ご主人様!!このアンドロイド、武術がインストールされてる!!!」
アンドロイドに武術をダウンロードさせることにより、ボディーガードとして使う人間は少なくない。
東郷はボディーガードが必要になる立場の人間だ。
互角で戦うマリアとメグを見ながら、マリアに応戦できる方法を考える。
するとマリアはメグの身体を床に叩き付けた。
ハァハァと荒い呼吸をするマリアは、メグの頭を床に押し付けた儘で真生を見る。
真生はマリアの持つ小型の銃を手にし、メグの額に銃口を付けた。
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メグはそれから、一切動かなくなった。
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