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第七章 リリスとマリア
第三話
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真生はシンプルな白いシャツに、細身の黒いパンツスーツを合わせる。
マリアは清楚な白いワンピースを身に纏い、真っ赤なオープンカーに乗り込んだ。
黄色のギンガムチェックの派手なスーツを身に纏った東郷は、舐める様な視線でマリアの観察を続けている。
助手席に腰かけたマリアは、作り笑いを浮かべながら、髪を耳に掛けた。
「…………君がマリアちゃん…………。凄いね、所作がまるで人間……………」
「お誉めに預かり恐縮です。初めまして東郷様。AIのマリアと申します…………」
深々とお辞儀をするマリアに対し、東郷は拍手をしながら満面の笑みを浮かべる。
東郷はマリアの手を取り、手の甲に唇を押し付けた。
「ふふっ!!ブラボーだよマリア……………!!そんなに畏まらないで??様だなんて、そんな堅いの良いからさ?
……………昔から知っている友達同士みたいに、僕と語り合おう………??」
マリアは作り笑いを浮かべ、東郷の出方を見ている。真生とマリアはこの時、アダム社の様子を偵察に来たのだ。
真生としてはマリアを東郷に会わせるのは、正直不安しか無かった。
けれど今のマリアはアダム社の状態を、自分自身の目で見なければ納得いかないのだろう。
真生はそれを余り良しとは思わなかったが、少しだけ引っ掛かるものが心の中にあったのだ。
確かにエナもロイも、LILITH6をダウンロードしてから狂暴化を迎えている。気にならないといったら嘘になる。
マリアはロイの事件があって以来、ずっとアダム社について調べていた。
そして真生に頼み込み、東郷に会いに来たのだ。
「………うふふ!!東郷さんって、とってもお茶目な人なのね!!」
そう言って微笑むマリアは、東郷の肩にしなだれ掛かる。まるで夜の繁華街の光景を見せられているようだと、真生は呆気に取られていた。
そういえばホステスの接客マナーデータを、ダウンロードしていた形跡がパソコンにあったなと、向かい風に吹かれながら真生は思い出す。
マリアは今日、本気でスパイの真似事をするつもりなんだろうと感じた。
東郷と仲睦まじく話すマリアの後ろ姿を眺めながら、改めて真生は先日の自分の発言を後悔する。
あんなに酷く叱咤していなければ、アダム社に一緒に行きたい等と、マリアは言わなかったかもしれない。
口は本当に災いの元であると、真生は深く溜め息を吐いた。
けれどマリアの着眼点は、とても的を射ていると真生は思う。
世間は今、AIアンドロイドが狂暴化する事件に対し、新しいコンピューターウイルスの仕業であると睨んでいる。
アダム社に注視しているメディアは何処にも無い。けれど一連の事件は総て、LILITH6が発売されてから起きている事である。
マリア曰く、真生から聞いていた狂暴化したアンドロイドの情報を、アルゴリズムを整理して導き出した共通項だ。
AIなだけあり、共通項を導き出す速度は誰よりも速かった。勿論真生よりもずっと。
気が気じゃない真生と、猫を被っているマリア。そしてご機嫌な東郷を乗せたオープンカーは、アダム社のビルの前に辿り着く。
ビルの上にある球体を見上げ、真生はリリスの事を思い返した。
マリアは清楚な白いワンピースを身に纏い、真っ赤なオープンカーに乗り込んだ。
黄色のギンガムチェックの派手なスーツを身に纏った東郷は、舐める様な視線でマリアの観察を続けている。
助手席に腰かけたマリアは、作り笑いを浮かべながら、髪を耳に掛けた。
「…………君がマリアちゃん…………。凄いね、所作がまるで人間……………」
「お誉めに預かり恐縮です。初めまして東郷様。AIのマリアと申します…………」
深々とお辞儀をするマリアに対し、東郷は拍手をしながら満面の笑みを浮かべる。
東郷はマリアの手を取り、手の甲に唇を押し付けた。
「ふふっ!!ブラボーだよマリア……………!!そんなに畏まらないで??様だなんて、そんな堅いの良いからさ?
……………昔から知っている友達同士みたいに、僕と語り合おう………??」
マリアは作り笑いを浮かべ、東郷の出方を見ている。真生とマリアはこの時、アダム社の様子を偵察に来たのだ。
真生としてはマリアを東郷に会わせるのは、正直不安しか無かった。
けれど今のマリアはアダム社の状態を、自分自身の目で見なければ納得いかないのだろう。
真生はそれを余り良しとは思わなかったが、少しだけ引っ掛かるものが心の中にあったのだ。
確かにエナもロイも、LILITH6をダウンロードしてから狂暴化を迎えている。気にならないといったら嘘になる。
マリアはロイの事件があって以来、ずっとアダム社について調べていた。
そして真生に頼み込み、東郷に会いに来たのだ。
「………うふふ!!東郷さんって、とってもお茶目な人なのね!!」
そう言って微笑むマリアは、東郷の肩にしなだれ掛かる。まるで夜の繁華街の光景を見せられているようだと、真生は呆気に取られていた。
そういえばホステスの接客マナーデータを、ダウンロードしていた形跡がパソコンにあったなと、向かい風に吹かれながら真生は思い出す。
マリアは今日、本気でスパイの真似事をするつもりなんだろうと感じた。
東郷と仲睦まじく話すマリアの後ろ姿を眺めながら、改めて真生は先日の自分の発言を後悔する。
あんなに酷く叱咤していなければ、アダム社に一緒に行きたい等と、マリアは言わなかったかもしれない。
口は本当に災いの元であると、真生は深く溜め息を吐いた。
けれどマリアの着眼点は、とても的を射ていると真生は思う。
世間は今、AIアンドロイドが狂暴化する事件に対し、新しいコンピューターウイルスの仕業であると睨んでいる。
アダム社に注視しているメディアは何処にも無い。けれど一連の事件は総て、LILITH6が発売されてから起きている事である。
マリア曰く、真生から聞いていた狂暴化したアンドロイドの情報を、アルゴリズムを整理して導き出した共通項だ。
AIなだけあり、共通項を導き出す速度は誰よりも速かった。勿論真生よりもずっと。
気が気じゃない真生と、猫を被っているマリア。そしてご機嫌な東郷を乗せたオープンカーは、アダム社のビルの前に辿り着く。
ビルの上にある球体を見上げ、真生はリリスの事を思い返した。
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