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第四章 心変わりは人の世の常
第一話
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東京都渋谷区。LILITH6が発売され大々的に広告が出回っている。
街中で見かける大きなモニター画面の中で、LILITH6のCMが流れてゆく。
先日博嗣がエナを、LILITH6にグレードアップしたと意気揚々と話していた。
真生はLILITH6と聞いた瞬間に、アダム社で見たリリスの顔を思い浮かべる。真生は適度にその話を聞き流す。
あの日以来、真生は後味の悪いものをずっと引きずっていた。
「…………どうしましたかご主人様??」
マリアの声に我に返ると、空色の虹彩が真生の視界に入る。
この日の真生はマリアを連れて、繁華街に出て来ていた。マリアのメンテナンス関係の備品を買うのが目的である。
マリアは半場デートの様な様子で、時折何時もの鼻歌を口ずさんでいる。
さっき偶然にも先日みた、アニメ映画のキャラクターのぬいぐるみを見付け、買ってあげたばかりだった。
「ん??LILITH6のCM見てただけ。最近よく見るなぁってさ。博嗣の所のエナもさ、LILITH6にアップグレードしたってこないだ言ってたよ」
真生はマリアの手を引きながら、人込みの中を進んでゆく。行き交う人の中に紛れ込んでいる、沢山のAIアンドロイド。
気が付けば人間社会には、かなりな人数のAIアンドロイドが紛れ込む様になっていた。
アンドロイドを使った商売も増え、人よりも働くアンドロイドの姿を見る方が多くなった。
そのうち本当に人間はいらなくなるかもしれないと、真生は思うのだ。
「…………そうですね。確かによく見かけます。ところでお茶でもしませんか??
ご主人様今、三時間近く歩きまわっていますよ?」
マリアはそう言いながら微笑み、アダム社の話をしない様に促す。
勘の良いマリアは真生がアダム社に呼ばれた日以来、様子がおかしい事に気が付いていた。
アダム社での話をしたがらない事に気付いたマリアは、アダム社という言葉を意識的に避け始めている様だ。
けれどマリアはアダム社の事を、調べて居ない訳では無い。それなりに情報を仕入れている気配だけを、真生は肌で感じていた。
「ん、ああ。そんなに歩き回ってたのか…………じゃあ、少し一緒に休もうか」
真生はそう言って、その土地で贔屓にしている喫茶店に向かい歩き始める。
その喫茶店は植物園の様な造りをしており、周りに生花が咲き乱れていて美しい。ハーブティーが他の店よりも豊富にある。
マリアと一緒に楽しめるお店を探していた時に、その喫茶店に出逢ったのだ。
ほんの少しだけ繁華街から外れた所に向かい、二人は歩き出す。その途中には先日二人で行ったホテルのある、如何わしい通りがあった。
その通りの辺りを通過するのが、一番早い近道である。その通りを行き交う人の顔を密かに見ながら、喫茶店へと進んでゆく。
様々な人とすれ違う。仲睦まじい恋人同士や、アンドロイドを連れてゆく人。明らかに商売目的で其処に佇んでいる人々。
様々な人生を垣間見ている様な、不思議な気持ちで道を進む。
その時にふと、真生の視界に見覚えのある顔が入って来た。
古びたホテルから出てきたのは、紛れもない博嗣だった。博嗣は何時もの様にヘラヘラと笑っておらず、緊張した面持をしている。
真生は博嗣を見付けた瞬間に、思わず自分の身を隠した。
博嗣がホテル街から出てくるなんて一切イメージがない。真生は眼鏡を直しながら、懸命に心を落ち着ける。
博嗣といえばアンドロイドオタクで、誰よりも先にアンドロイドと性的な接触を持っていた様な男だ。
それがラブホテルから出てくるというのは、真生にとっては衝撃だった。
一体相手の女は何処の誰なんだと思いながら、博嗣の様子を見ている。
すると遅れてホテルの出入り口から、頬を上気させた女性が出てきた。それは紛れもなく美桜だったのだ。
街中で見かける大きなモニター画面の中で、LILITH6のCMが流れてゆく。
先日博嗣がエナを、LILITH6にグレードアップしたと意気揚々と話していた。
真生はLILITH6と聞いた瞬間に、アダム社で見たリリスの顔を思い浮かべる。真生は適度にその話を聞き流す。
あの日以来、真生は後味の悪いものをずっと引きずっていた。
「…………どうしましたかご主人様??」
マリアの声に我に返ると、空色の虹彩が真生の視界に入る。
この日の真生はマリアを連れて、繁華街に出て来ていた。マリアのメンテナンス関係の備品を買うのが目的である。
マリアは半場デートの様な様子で、時折何時もの鼻歌を口ずさんでいる。
さっき偶然にも先日みた、アニメ映画のキャラクターのぬいぐるみを見付け、買ってあげたばかりだった。
「ん??LILITH6のCM見てただけ。最近よく見るなぁってさ。博嗣の所のエナもさ、LILITH6にアップグレードしたってこないだ言ってたよ」
真生はマリアの手を引きながら、人込みの中を進んでゆく。行き交う人の中に紛れ込んでいる、沢山のAIアンドロイド。
気が付けば人間社会には、かなりな人数のAIアンドロイドが紛れ込む様になっていた。
アンドロイドを使った商売も増え、人よりも働くアンドロイドの姿を見る方が多くなった。
そのうち本当に人間はいらなくなるかもしれないと、真生は思うのだ。
「…………そうですね。確かによく見かけます。ところでお茶でもしませんか??
ご主人様今、三時間近く歩きまわっていますよ?」
マリアはそう言いながら微笑み、アダム社の話をしない様に促す。
勘の良いマリアは真生がアダム社に呼ばれた日以来、様子がおかしい事に気が付いていた。
アダム社での話をしたがらない事に気付いたマリアは、アダム社という言葉を意識的に避け始めている様だ。
けれどマリアはアダム社の事を、調べて居ない訳では無い。それなりに情報を仕入れている気配だけを、真生は肌で感じていた。
「ん、ああ。そんなに歩き回ってたのか…………じゃあ、少し一緒に休もうか」
真生はそう言って、その土地で贔屓にしている喫茶店に向かい歩き始める。
その喫茶店は植物園の様な造りをしており、周りに生花が咲き乱れていて美しい。ハーブティーが他の店よりも豊富にある。
マリアと一緒に楽しめるお店を探していた時に、その喫茶店に出逢ったのだ。
ほんの少しだけ繁華街から外れた所に向かい、二人は歩き出す。その途中には先日二人で行ったホテルのある、如何わしい通りがあった。
その通りの辺りを通過するのが、一番早い近道である。その通りを行き交う人の顔を密かに見ながら、喫茶店へと進んでゆく。
様々な人とすれ違う。仲睦まじい恋人同士や、アンドロイドを連れてゆく人。明らかに商売目的で其処に佇んでいる人々。
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その時にふと、真生の視界に見覚えのある顔が入って来た。
古びたホテルから出てきたのは、紛れもない博嗣だった。博嗣は何時もの様にヘラヘラと笑っておらず、緊張した面持をしている。
真生は博嗣を見付けた瞬間に、思わず自分の身を隠した。
博嗣がホテル街から出てくるなんて一切イメージがない。真生は眼鏡を直しながら、懸命に心を落ち着ける。
博嗣といえばアンドロイドオタクで、誰よりも先にアンドロイドと性的な接触を持っていた様な男だ。
それがラブホテルから出てくるというのは、真生にとっては衝撃だった。
一体相手の女は何処の誰なんだと思いながら、博嗣の様子を見ている。
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