13 / 109
第二章 人間とアンドロイドの「最期の一線」
第三話
しおりを挟む
巨大なスクリーンの光に照らされたマリアが、ハンカチを片手に空色の瞳から、ボロボロと涙を流して泣いている。
真生はマリアの横顔を眺めながら、そんなに泣く程この映画は良いものなんだろうかと思う。
とりあえずピンク色の毛玉と黄色の毛玉が主人公な事は解ったが、その二つの得体がさっぱり解らない。
普段から番組を観ている人向けの映画なのか、と考えながら毛玉の得体について考察を繰り返す。
真生はそれが余りにも気になりすぎて、映画に全く集中出来ないでいた。
ふと周りを見渡すと、他の客席の人もハンカチを片手に目頭を押さえている。
この場では自分が一番、感情が足りて無い様に見える。そう感じた真生は少し慌てる。誤魔化す様に眼鏡をぐっと指で押し上げ、また画面を凝視する。
映画が終わったらパンフレットを買い、せめて大筋がどんなものなのかを、ちゃんと学ぼうと感じた。
ピンク色の毛玉と黄色の毛玉が、色とりどりの毛玉に囲まれ大団円を迎える。
映画は其処で終わりを迎え、明るいメロディーの音楽が流れる。
エンドロールの文字が流れてゆくのを見ながら、やっと映画が終わったと真生は思う。
真生の頭の中に映画の事は全く入ってこなかったが、マリアはご機嫌な様子で真央の腕に腕を絡ませた。
肩が出るタイプのミニスカートの、白いセーターワンピースと、ガーターで止まるタイプの薄手のストッキング。
この日のマリアは何時もより可愛らしい服を着て、ハーブティー独特の匂いを漂わせていた。
スクリーンの明かりに照らされたマリアは、余りにも綺麗だ。映画館に連れてきた事は正解だった、と真生は思う。
客席全てが明るく照らされてしまう前に、マリアの顎を掴んで顔を近付ける。
暗闇の中でキスを交わし終えると、辺りは一気に明るくなった。
「…………行こうか」
真生がそう言うとマリアは小さく頷く。
二人は恋人同士の様に手を繋ぎ、売店の方へと歩きだした。
***
どうやらピンク色の毛玉と黄色の毛玉は宇宙人で、さっきの映画はその宇宙人の生まれた惑星での事らしい。
パンフレットを細かく読み込みながら、ご機嫌な様子で語るマリアに、真生は懸命に耳を傾ける。
結局真生はパンフレットを手にしても、マリアの解説が無ければ、映画の内容を読み込めないでいた。
「エドワード君は実はモコモコ星の王子様なんです………!!だから本当は二人は、友達でいるのも駄目なんです………!!」
「…………マリア、エドワード君は何色??」
「あ、ピンクです。黄色はマルグリット」
雰囲気のある喫茶店でお茶を飲み、中身のない会話を延々と二人は繰り返す。
けれど真生には、そのやり取りがとても心地が良かった。
ご機嫌な様子で笑うマリアを見ながら、ふと他に出かけたい場所は無いのだろうかと思う。
出来れば今日はマリアの行きたい場所や、したいことをさせてあげたい。
丁度話のキリが良いところで、真生はマリアにこう言った。
「ねぇマリア、他に行きたいところはある??普段こんな風にさ、俺と出かけるなんてないだろ??」
真生がそう問いかけると、マリアは空色の虹彩をキラキラと輝かせる。
それからほんの少しだけ頬を染め、恥ずかしそうに視線を逸らした。
真生はマリアの様子を見ながら、不思議そうに首を傾げる。
マリアは周りをきょろきょろと見回し、真生の耳に手を宛てた。
真生はマリアの横顔を眺めながら、そんなに泣く程この映画は良いものなんだろうかと思う。
とりあえずピンク色の毛玉と黄色の毛玉が主人公な事は解ったが、その二つの得体がさっぱり解らない。
普段から番組を観ている人向けの映画なのか、と考えながら毛玉の得体について考察を繰り返す。
真生はそれが余りにも気になりすぎて、映画に全く集中出来ないでいた。
ふと周りを見渡すと、他の客席の人もハンカチを片手に目頭を押さえている。
この場では自分が一番、感情が足りて無い様に見える。そう感じた真生は少し慌てる。誤魔化す様に眼鏡をぐっと指で押し上げ、また画面を凝視する。
映画が終わったらパンフレットを買い、せめて大筋がどんなものなのかを、ちゃんと学ぼうと感じた。
ピンク色の毛玉と黄色の毛玉が、色とりどりの毛玉に囲まれ大団円を迎える。
映画は其処で終わりを迎え、明るいメロディーの音楽が流れる。
エンドロールの文字が流れてゆくのを見ながら、やっと映画が終わったと真生は思う。
真生の頭の中に映画の事は全く入ってこなかったが、マリアはご機嫌な様子で真央の腕に腕を絡ませた。
肩が出るタイプのミニスカートの、白いセーターワンピースと、ガーターで止まるタイプの薄手のストッキング。
この日のマリアは何時もより可愛らしい服を着て、ハーブティー独特の匂いを漂わせていた。
スクリーンの明かりに照らされたマリアは、余りにも綺麗だ。映画館に連れてきた事は正解だった、と真生は思う。
客席全てが明るく照らされてしまう前に、マリアの顎を掴んで顔を近付ける。
暗闇の中でキスを交わし終えると、辺りは一気に明るくなった。
「…………行こうか」
真生がそう言うとマリアは小さく頷く。
二人は恋人同士の様に手を繋ぎ、売店の方へと歩きだした。
***
どうやらピンク色の毛玉と黄色の毛玉は宇宙人で、さっきの映画はその宇宙人の生まれた惑星での事らしい。
パンフレットを細かく読み込みながら、ご機嫌な様子で語るマリアに、真生は懸命に耳を傾ける。
結局真生はパンフレットを手にしても、マリアの解説が無ければ、映画の内容を読み込めないでいた。
「エドワード君は実はモコモコ星の王子様なんです………!!だから本当は二人は、友達でいるのも駄目なんです………!!」
「…………マリア、エドワード君は何色??」
「あ、ピンクです。黄色はマルグリット」
雰囲気のある喫茶店でお茶を飲み、中身のない会話を延々と二人は繰り返す。
けれど真生には、そのやり取りがとても心地が良かった。
ご機嫌な様子で笑うマリアを見ながら、ふと他に出かけたい場所は無いのだろうかと思う。
出来れば今日はマリアの行きたい場所や、したいことをさせてあげたい。
丁度話のキリが良いところで、真生はマリアにこう言った。
「ねぇマリア、他に行きたいところはある??普段こんな風にさ、俺と出かけるなんてないだろ??」
真生がそう問いかけると、マリアは空色の虹彩をキラキラと輝かせる。
それからほんの少しだけ頬を染め、恥ずかしそうに視線を逸らした。
真生はマリアの様子を見ながら、不思議そうに首を傾げる。
マリアは周りをきょろきょろと見回し、真生の耳に手を宛てた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる