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第6章 共に夢を叶えよう

46.朝考えると

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学園の女子寮、ベッドの上で朝目覚めたレベッカは、寝起きの頭で考える。

 まるでおとぎ話のように、豪華で綺麗で夢のような舞踏会。

 素敵な銀髪の青年の手を取り踊り、星空の下のテラスでひざまづいてキスをされた。

 思い出すだけで、うっとりとため息が出てしまう。
 そして、冷徹公爵のクロードはレベッカのことが好きで、自分と結ばれるために何度も繰り返しているという。

 そこから抜け出したいと心を悩ませているのだと。
 レベッカと舞踏会で共に踊れたこと、ユリウスに奪われなかったこと、追放令が出されなかったこと。

 それが嬉しくて、テラスの手すりにもたれ、涙を浮かべてしまうほどだとは。


(なぜループするのか、その原因を探さなきゃいけないわよね……)


 休日の朝なので、レベッカはベッドでゴロゴロしながら、前世でのゲームのストーリーについて思い出す。


 この乙女ゲーム、『カルテット・シンデレラ』は、名前の通り4人の青年が攻略対象だ。

 王子のユリウス、公爵のクロード、あとは伯爵と騎士がいるのだが、クロードの攻略ルートのストーリーを思い返す。

 クールでつっけんどんな態度の彼に、試験勉強を教えてもらったり、委員会の手伝いを手伝ってもらったりして少しずつ仲を深めていく。

 そして、舞踏会の時にダンスのパートナーとして踊り、彼のルートが確定する。

 ただこれは、ヒロインのリリアでプレイするのが前提だ。

 悪役令嬢のレベッカは、始終ユリウスの取り巻きをしているので、クロードルートでは序盤の「廊下で突き飛ばされる」イベント以来ほとんど出番はなかったはずだ。


 とりあえずそこは置いておいて、彼のルートになってからは、彼のコンプレックスである「ライネル公爵家」と戦うストーリーだ。

 ヒロインのリリアは、まだ社交界に出たばかりのため、両親から反感を買わないように説得をしなければならなかったはずだ。

 格式高いライネル家のご両親を前に、俺の運命の女性だ、と啖呵を切るクロードは、とても男らしかった。

 そうして晴れて結ばれたリリアとクロードは、教会の鐘の下で口付けをする。


『もう、なにも後悔は無い。君を愛している』


 というストレートな愛の言葉に、帰りの満員電車の中で悶絶したのを覚えている。


「……後悔、か」


 その言葉に引っかかり、レベッカの頭の中には一本の道筋が見えた。

 彼は勉強会の帰りの場面を何度も何度も繰り返していると言っていた。

 同じシーンをやり直すなんて、まるでゲームのセーブデータの場所からやり直すみたいだな、と生粋のゲーマーなレベッカは思う。


 じゃあ、自分がゲームを「やり直す」時って、どんな時だろう。


  RPGなら、装備やレベル上げが甘くてボスに勝てなかった時。

恋愛ゲームなら、選択肢を間違えて、攻略対象キャラの好感度が上がらなかった時。


間違ってしまったと『後悔』した時に、セーブデータからやり直すのでは無いだろうか。

クロードがレベッカと結ばれたいのならば、彼の望む通りの道筋を進み、一度も『後悔』しなければいいのではないか?

追放令が出たレベッカを救えなかった。好きでも無いリリアと結婚した。

ユリウスにレベッカが奪われた。

彼が望まない展開のため、何度もセーブ地点である勉強会の帰りのベンチからやり直してるとしたら。
まるで根拠のない仮説だが、試してみる価値はありそうだ。


レベッカはベッドから立ち上がると、一時間後にはクロードとのデートの時間のため、急いで支度を始める。

寝癖のついた髪を梳き、自分のパーソナルカラーに合ったマットなリップを塗る。

深紅の髪に似合う、ダークブルーのワンピースを着て、鏡を見つめて意気込む。

今日は初めてのクロードとのデートだ。
自分らしく楽しもうと、頬を軽く叩く。


*  *  *



休日の午前中、温かい日差しが降り注ぐ、城下町。

待ち合わせ場所である城下町の入り口の街灯の前に容姿端麗な銀髪の青年が立っていた。

ボルドー色のジャケットを着た、高貴な公爵令息。


(かっ…………こよすぎる………!
 改めて、あんなイケメンと並んで歩けることに感謝します神様……!)


 現実ではあり得ないシチュエーションに、レベッカは思わず感激する。


「おはよう、レベッカ」

 手を上げてクロードがこちらを向いた。


「……私が、必ず助ける」

「? 何か言ったか?」

「い、いえ! なんでもないですわ!」


 思わず、覚悟が小さな声で漏れてしまった。

 レベッカは、私が転生したからには、もう彼に後悔はさせないと強く心に誓った。
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