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第1章 ハーディス王の国王
お戯れがすぎる
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食事を食べ終わり、デザートと紅茶も楽しんだ後、カティ達は各々の仕事へと戻って行った。
最後に立ちあがり扉の外に出ると、近衛隊長のレナードがまさに騎士の鑑、といったような直立不動の態勢で、扉の横に立ち王の食事時間を警護をしているのが見えた。
その横を通り過ぎようとすると、
「本当に彼をカティに?」
レナードが視線も向けずに尋ねてくる。
「そうだ。今後手厚く扱うように」
「―――はっ」
レナードは右手の握り拳を左胸に添える敬礼をして、軽く頭を下げた。
「……何か言いたそうな顔だな?」
前髪から覗く眉間に一本の皺が寄っていることを見逃さなかったナギリは、挑発するように問いかける。
しかし、レナードはゆっくりと半身を起こすと、いえ、と答えてすぐに無表情に戻った。
レナードは背が高いのでナギリからは見上げる形になるが、腕を組みながらじっと上目使いで覗きこむ。
腕を組むのは、ナギリが人をからかう時の癖である。
「何度も言っているだろう。
誰よりも優秀なお前が望むなら、お前もカティにしてやるとな、レナード。
毎回の夜伽の度に部屋の外で護衛をしているだけなのは飽きただろう?」
普段は小言を言いながらも従順なレナードだが、その時ばかりは目を細めて奥歯を噛みしめた。
心底怒っている時の顔だ。
「……お戯れが過ぎますぞ」
「ふん」
ナギリはつまらなそうに鼻で笑うと、壁際に立っていたシュジュから料理を乗せたトレイを受け取って歩き出す。
「どちらへ」
「ベネディクトに持っていく。
ティナの奴、ほとんど残したからな。
せっかくの料理を捨てるのはもったいない」
そう言って、レナードからは見えない角度でシュジュにウインクをしてやる。
巻き毛の少年は驚いたような顔をしたが、頬を染め、レナードの手前すぐに会釈をした。
「午後の音楽会には遅れないようにお願い致しますよ」
「わかっている」
料理を片手に颯爽と階段を昇って行く王の後ろ姿を、しばらく見つめていた後、レナードは小さくため息をついた。
最後に立ちあがり扉の外に出ると、近衛隊長のレナードがまさに騎士の鑑、といったような直立不動の態勢で、扉の横に立ち王の食事時間を警護をしているのが見えた。
その横を通り過ぎようとすると、
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レナードが視線も向けずに尋ねてくる。
「そうだ。今後手厚く扱うように」
「―――はっ」
レナードは右手の握り拳を左胸に添える敬礼をして、軽く頭を下げた。
「……何か言いたそうな顔だな?」
前髪から覗く眉間に一本の皺が寄っていることを見逃さなかったナギリは、挑発するように問いかける。
しかし、レナードはゆっくりと半身を起こすと、いえ、と答えてすぐに無表情に戻った。
レナードは背が高いのでナギリからは見上げる形になるが、腕を組みながらじっと上目使いで覗きこむ。
腕を組むのは、ナギリが人をからかう時の癖である。
「何度も言っているだろう。
誰よりも優秀なお前が望むなら、お前もカティにしてやるとな、レナード。
毎回の夜伽の度に部屋の外で護衛をしているだけなのは飽きただろう?」
普段は小言を言いながらも従順なレナードだが、その時ばかりは目を細めて奥歯を噛みしめた。
心底怒っている時の顔だ。
「……お戯れが過ぎますぞ」
「ふん」
ナギリはつまらなそうに鼻で笑うと、壁際に立っていたシュジュから料理を乗せたトレイを受け取って歩き出す。
「どちらへ」
「ベネディクトに持っていく。
ティナの奴、ほとんど残したからな。
せっかくの料理を捨てるのはもったいない」
そう言って、レナードからは見えない角度でシュジュにウインクをしてやる。
巻き毛の少年は驚いたような顔をしたが、頬を染め、レナードの手前すぐに会釈をした。
「午後の音楽会には遅れないようにお願い致しますよ」
「わかっている」
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