上 下
33 / 84
第6章 街コンカップリングパーティ

フリータイムの先陣を切る

しおりを挟む
 時計を見ると、もうすぐ一人当たりの会話時間である十分が経過する。

 アリサは、手に持ったハンドベルを鳴らして、声をかける。


「はい、お話は以上です!
 プロフィールカードを相手にお返しし、男性は一つ大きな番号の席にご移動をお願いしまーす!」


 盛り上がっていた二人は、短いですね、また後で話しましょう、などと会話をしている。
 礼を言い合って、男性は一つ隣の席に移動する。

 そして、向かい合って座った次の女性に挨拶をし、改めてプロフィールカードを交換するのだ。


(三人ともうまくお話しできているみたいだし、街コン自体も盛り上がってるわ。よかった)


 カフェのいたるところから、笑い声が上がっている。
 異世界でも街コンは通用するわ、とアリサは自信が付いた。

 参加者が全員の異性と、十分間ずつ初対面で話し合うのが終わる。

 ずっと喋り通していたので、少し休憩時間をとり、ソフトドリンクを配る。

 各々、最初の席に戻り、水分補給をしながら簡単に相手の情報を書いたメモを読み返している。

 アリサは、休憩時間の終了を告げるベルを鳴らす。


「さあ、次はフリータイムです! 
 もう少し話したかったな、という異性の方にぜひ話しかけに行ってください!
 10分が3回ございますので、3人の方とお話ができます」


 その言葉に、全員が静かに目配せをする。

 いいな、と思った異性三人、誰にしようか。

 どういう順番で話しかけようか、どんな話で好印象を持ってもらえたら良いか、と瞬時に考えているようで、暖かかった空気が途端に張り詰める。

 ここで話かけられたら、少なからず自分に好意を持ってくれたんだな、と思ってキュンとするし、逆に盛り上がったと思っていた相手が他の異性に話しかけに行ってしまったら、がっかりしてしまう、期待と不安が表裏一体なフリータイムだからだ。


 そしてフリータイムでの行動が、最後のカップリングタイムの結果につながる。


「それでは、みなさんご自由にお楽しみくださいませ!」


 リンリン、とベルの音が響き渡る。
 アリサの言葉に、意を決してクレイとケビンが立ち上がった。

(さあフリータイムの始まりよ! 
 人気女性はすぐに他の人に話しかけられちゃうから、頑張ってアタックしないとね)

 アリサが全体を見渡しながら、こじらせ男子三人の動向を見守る。


 立ち上がって、あの子に話しかけに行きたいけど、好意がバレるし恥ずかしいな、と全員が少しもじもじしていたが、クレイの動きは早かった。


 立ち上がると、周りの目も気にせず、好印象を持ったらしき4番の女性の席へと一直線で向かい、


「もしよろければ、お話ししてもいいでしょうか?」


 優しく微笑んで、フリータイムの相手に選んでほしいと立候補した。

 その大胆かつスマートな行動に、4番の女性は驚き、頬を染める。


「ええ。ぜひ」


 了承を得たことを確認し、クレイは嬉しそうに微笑むと向かいの席に座った。

 4番の女性は、上品でおっとりした大人で、クレイがタイプだと言っていた雰囲気だ。


(おお! 積極的かつ紳士的! その調子よ)


 一番話したかった女性からフリータイムの時間をもらえ、クレイは自分から熱心に話しかけている。

 その様子に触発されたのか、男性陣は皆こぞって立ち上がり、気になった女性の元へ足を進めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に捨てられましたが

水川サキ
恋愛
婚約して半年、嫁ぎ先の伯爵家で懸命に働いていたマリアは、ある日将来の夫から告げられる。 「愛する人ができたから別れてほしい。君のことは最初から愛していない」 浮気相手の女を妻にして、マリアは侍女としてこのまま働き続けるよう言われる。 ぶち切れたマリアはそれを拒絶する。 「あなた、後悔しますわよ」

婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。

恋愛
セラティーナ=プラティーヌには婚約者がいる。灰色の髪と瞳の美しい青年シュヴァルツ=グリージョが。だが、彼が愛しているのは聖女様。幼少期から両想いの二人を引き裂く悪女と社交界では嘲笑われ、両親には魔法の才能があるだけで嫌われ、妹にも馬鹿にされる日々を送る。 そんなセラティーナには前世の記憶がある。そのお陰で悲惨な日々をあまり気にせず暮らしていたが嘗ての夫に会いたくなり、家を、王国を去る決意をするが意外にも近く王国に来るという情報を得る。 前世の夫に一目でも良いから会いたい。会ったら、王国を去ろうとセラティーナが嬉々と準備をしていると今まで聖女に夢中だったシュヴァルツがセラティーナを気にしだした。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

【完結】試される愛の果て

野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。 スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、 8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。 8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。 その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、 それは喜ぶべき縁談ではなかった。 断ることなったはずが、相手と関わることによって、 知りたくもない思惑が明らかになっていく。

私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。

Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。 そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。 二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。 自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

王妃だって有休が欲しい!~夫の浮気が発覚したので休暇申請させていただきます~

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
【書籍発売記念!】 1/7の書籍化デビューを記念いたしまして、新作を投稿いたします。 全9話 完結まで一挙公開! 「――そう、夫は浮気をしていたのね」 マーガレットは夫に長年尽くし、国を発展させてきた真の功労者だった。 その報いがまさかの“夫の浮気疑惑”ですって!?貞淑な王妃として我慢を重ねてきた彼女も、今回ばかりはブチ切れた。 ――愛されたかったけど、無理なら距離を置きましょう。 「わたくし、実家に帰らせていただきます」 何事かと驚く夫を尻目に、マーガレットは侍女のエメルダだけを連れて王城を出た。 だが目指すは実家ではなく、温泉地で有名な田舎町だった。 慰安旅行を楽しむマーガレットたちだったが、彼女らに忍び寄る影が現れて――。 1/6中に完結まで公開予定です。 小説家になろう様でも投稿済み。 表紙はノーコピーライトガール様より

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

処理中です...