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第9話 婚約の復活
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天使様はゲルハルド王子とイザベラ様の関係を元に戻すために、イザベラ様の魂から愛の矢を作ることにされた。
「じゃあイザベラちゃん、ゲルハルド王子のどこが好きなのか教えて。なるべく感情をこめる感じで」
「王子を正気へと戻す愛の矢を作成するには必要な情報です。正直に答えてください」
国を跨いだ婚姻というのは国同士の同盟関係の強化や国益を求めた政略結婚であることが多い。イザベラ様はゲルハルド王子をどの程度愛されているのだろうか。
「そうですね、少し恥ずかしいですけど。まず、ゲルハルド王子の声が好きです。それは中の人推しだったわけですが、彼の声は聞いているだけで胸の辺りが締め付けられてキュンとして、甘いケーキを食べたときのようにニヤニヤが止まらず、口元が緩んでよだれが溢れてきて、ヘッドホンで聞いて頭の中に彼の声が響くと耳が幸せで、例えるとするなら耳から吸引する麻薬みたいなもので、一日中聞き続けても足りなくて、それどころかどんどん量を増やしていって、彼の声が登場する作品ならB級映画の吹き替えでも、地方局でしか流れないコマーシャルのナレーションでも収集して、ソシャゲーのキャラで登場したのならガチャに家賃までなら投資として払って、優しい彼の声で責められて罵ってもらうために乙女ゲーの悪役令嬢になりたいと──」
「冥界奇跡『霊魂の矢』」
話を遮るかのようにアズラエル様はイザベラ様の魂から溢れ出る人を愛する感情から光の矢をお作りになられた。
「ご協力感謝します。これ以上は矢に封じられた愛が重すぎて爆発する恐れがあります」
「あ、ありがとうね、イザベラちゃん。もう大丈夫だよ」
「そうですか。もう少し聞いて欲しかったですけど、仕方ないですね」
イザベラ様はゲルハルド王子を深く愛されているご様子だった。うらやましい。私もイザベラ様のように好きな人を一途に深く愛したいと思った。
その時、部屋の外で鎧の音と男性の声が聞こえてきた。
「そこの侍女よ、こちらにイザベラ様がお見えになられなかったか?」
「我々護衛の兵も付けず先ほどからお姿が見えないのだ」
「あっ、イザベラ様でしたら右から二番目の部屋にいらっしゃるはずです」
「ふむ、この城の侍女に知り合いでもいらしたのか」
「それより侍女さん。俺はゼルドーラ帝国から来た騎士なんだけど夜は時間あるかい? 良ければ食事でもどう?」
「えー? どうしよっかなー」
「おい、抜け駆けするな。ナンパは仕事終わってからにしろ」
どうやら騎士達がイザベラ様を探しているらしい。
「私の家来たちが探していますのでそろそろ失礼させて頂きます。エルゼさん、そして、ガブリエルさん、アズラエルさん。この世界で皆さんにお会いできたこと嬉しく思います。それではごめんあそばせ」
イザベラ様は完璧な淑女の礼をされて部屋を出ていかれた。
「よし、何はともあれ愛の矢は手に入ったから、あとは王子様のハートを射止めるだけだね」
「ゲルハルド王子ならバルコニーにいるのをさきほど空から確認しました。騒ぎが広まらないうちに事態を収めましょう」
「私が王子を誘う囮になりますからその間に弓矢で狙ってください」
私と天使様はバルコニーに向かった。
「エルゼ・モーレ嬢探したぞ。君はバルコニーで天へよく祈ってると聞いてここに来たんだ。僕と結婚し、誰にも邪魔されない地で暮らそう」
「そうですか、私と結婚を。それなら一つだけ聞いていただきたいお願いがあります」
「なんだ? どんな望みも叶えてあげるぞ」
「その場でしばらく動かないでください」
「なんだって?」
「今です」
「とりゃあ!」
ヒュンッ! ドスッ!
イザベラ様の魂から作った愛の矢は王子の心臓へと見事に命中した。王子は膝をつき頭を両手で抑えた。
「ぐ、ぐあ……。頭が……。あ、頭が割れる……! うっ、うああああああぁぁーっ!! イ、イザベラ! イザベラーっ! 僕は君だけを愛すっ! うあああぁぁーっ!!」
王子は白目をむいて絶叫するとどこかへ走っていた。
「成功ですね。ガブリエルは恋愛を司る大天使の才能がありますよ」
「アズラエルちゃんの奇跡のおかげだよ。あとで愛の矢を作る奇跡を私にも教えてくれる?」
「じゃあイザベラちゃん、ゲルハルド王子のどこが好きなのか教えて。なるべく感情をこめる感じで」
「王子を正気へと戻す愛の矢を作成するには必要な情報です。正直に答えてください」
国を跨いだ婚姻というのは国同士の同盟関係の強化や国益を求めた政略結婚であることが多い。イザベラ様はゲルハルド王子をどの程度愛されているのだろうか。
「そうですね、少し恥ずかしいですけど。まず、ゲルハルド王子の声が好きです。それは中の人推しだったわけですが、彼の声は聞いているだけで胸の辺りが締め付けられてキュンとして、甘いケーキを食べたときのようにニヤニヤが止まらず、口元が緩んでよだれが溢れてきて、ヘッドホンで聞いて頭の中に彼の声が響くと耳が幸せで、例えるとするなら耳から吸引する麻薬みたいなもので、一日中聞き続けても足りなくて、それどころかどんどん量を増やしていって、彼の声が登場する作品ならB級映画の吹き替えでも、地方局でしか流れないコマーシャルのナレーションでも収集して、ソシャゲーのキャラで登場したのならガチャに家賃までなら投資として払って、優しい彼の声で責められて罵ってもらうために乙女ゲーの悪役令嬢になりたいと──」
「冥界奇跡『霊魂の矢』」
話を遮るかのようにアズラエル様はイザベラ様の魂から溢れ出る人を愛する感情から光の矢をお作りになられた。
「ご協力感謝します。これ以上は矢に封じられた愛が重すぎて爆発する恐れがあります」
「あ、ありがとうね、イザベラちゃん。もう大丈夫だよ」
「そうですか。もう少し聞いて欲しかったですけど、仕方ないですね」
イザベラ様はゲルハルド王子を深く愛されているご様子だった。うらやましい。私もイザベラ様のように好きな人を一途に深く愛したいと思った。
その時、部屋の外で鎧の音と男性の声が聞こえてきた。
「そこの侍女よ、こちらにイザベラ様がお見えになられなかったか?」
「我々護衛の兵も付けず先ほどからお姿が見えないのだ」
「あっ、イザベラ様でしたら右から二番目の部屋にいらっしゃるはずです」
「ふむ、この城の侍女に知り合いでもいらしたのか」
「それより侍女さん。俺はゼルドーラ帝国から来た騎士なんだけど夜は時間あるかい? 良ければ食事でもどう?」
「えー? どうしよっかなー」
「おい、抜け駆けするな。ナンパは仕事終わってからにしろ」
どうやら騎士達がイザベラ様を探しているらしい。
「私の家来たちが探していますのでそろそろ失礼させて頂きます。エルゼさん、そして、ガブリエルさん、アズラエルさん。この世界で皆さんにお会いできたこと嬉しく思います。それではごめんあそばせ」
イザベラ様は完璧な淑女の礼をされて部屋を出ていかれた。
「よし、何はともあれ愛の矢は手に入ったから、あとは王子様のハートを射止めるだけだね」
「ゲルハルド王子ならバルコニーにいるのをさきほど空から確認しました。騒ぎが広まらないうちに事態を収めましょう」
「私が王子を誘う囮になりますからその間に弓矢で狙ってください」
私と天使様はバルコニーに向かった。
「エルゼ・モーレ嬢探したぞ。君はバルコニーで天へよく祈ってると聞いてここに来たんだ。僕と結婚し、誰にも邪魔されない地で暮らそう」
「そうですか、私と結婚を。それなら一つだけ聞いていただきたいお願いがあります」
「なんだ? どんな望みも叶えてあげるぞ」
「その場でしばらく動かないでください」
「なんだって?」
「今です」
「とりゃあ!」
ヒュンッ! ドスッ!
イザベラ様の魂から作った愛の矢は王子の心臓へと見事に命中した。王子は膝をつき頭を両手で抑えた。
「ぐ、ぐあ……。頭が……。あ、頭が割れる……! うっ、うああああああぁぁーっ!! イ、イザベラ! イザベラーっ! 僕は君だけを愛すっ! うあああぁぁーっ!!」
王子は白目をむいて絶叫するとどこかへ走っていた。
「成功ですね。ガブリエルは恋愛を司る大天使の才能がありますよ」
「アズラエルちゃんの奇跡のおかげだよ。あとで愛の矢を作る奇跡を私にも教えてくれる?」
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