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学園編一年目

14話 学園編一年目ⅩⅠ

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俺以外の皆は銃をリブルスに向けてリブルスを撃ち抜こうとしている。
「皆、逃げろ!俺達はまだこの武器の反動に慣れていない!下手をしたら銃に目を付けられるかもしれない……!」
(待てよ、まさかこれが目的なんじゃ……!だとしたら、【鬼砂族】の手に銃が渡ってしまったら不味い!)
「皆!銃を渡しちゃだめだ!!あいつは恐らく銃を狙っている」
「もう遅い……死ね……!」
背後から殺気を感じ、俺はリブルスの攻撃を避ける──が、動きが速すぎて対応が遅れる。

その結果──

「うわぁぁぁあ!!」
俺の脚の皮が少し切れていた。それなのに……、何故こうも痛い……!!よくよく見ると、切られたところの色が紫色に変色している。
【鬼砂縛鎖】のような色──つまりは触れたら死ぬという呪い、というか元の世界日本に存在しない物質なのかもしれない。
(あ!間に合ったのですよ~♪間一髪だったのてすよ~)
「え!?神様!?」
皆が俺をヤバい奴を見るような目で見ているがそれどころではない。

(言い忘れていたので~伝えに来たのですよ~♪私があなたに与えたギフト──抗体について流石に面倒だったので、転生させるときに転生先の身体のB細胞さんに抗体の情報だけインプットさせてしまったのですよ~こればかりは謝らなくてはならないのですよ~!本当にごめんなさいなのですよ~!!私はこれで失礼するのですよ~♪)

そうか、そうだったのか。道理で直ぐに抗体が反応しなかったわけだ。というか謝るためだけに話かけてくるなよ。
つまり、【鬼砂縛鎖】には触れたら死ぬけどそれは元素魔法で鎖に含まれる鉄等の原子間の結合を切断した訳だから直接触れたと思っていたが実際は、触れていなかったということだ。……要するに、単なる俺の勘違いだった。

──そして、【鬼砂族】の【暗黒魔法】等は呪いではなく、この世界に存在する物質──なんだろう……触れただけで死ぬ。直ぐに死ぬ。……ショック死?てことはアレルギーか何かだろうか……?

俺の身体には抗体──厳密にはB細胞に存在する抗体のデータを持っているため、仮にアレルギーだとしても何とかなるだろう。だが、抗体は皆に分け与えることが出来てもB細胞自体は分け与えることが出来ない。抗体が作られた頃にはもう既に手遅れになっているだろう。
だから俺は何としても皆を死守する必要があった。

──俺は覚悟を決めた!

「はぁ……もういいよ、目的は果たしたし。あ~あ、つまんない!!僕はもうお暇させてもらうとするよ。あはっ!あはははははっ!」
一体、何がしたかったんだ……。
「今日は早く寮に戻ろうか……」
「「「「「分かった(わ)……」」」」」
さて俺も戻ろうとしたところで違和感があった。俺の懐から銃のコツンッといった金属音がしないのだ。
(っ!?……まさかッ!)
俺はなんてことをしてしまったのだろうか。

──懐を見ると、俺とライラ嬢の銃が二つとも盗まれていた。



☆☆☆



「クソッ!……【鬼砂族】の手に渡ってしまうなんて……。俺はなんという失態を仕出かしたんだ!」
俺は……どうすればいいのだろうか……。
周りの皆も自分達の仕出かしてしまったことを理解したのだろう、顔を青ざめさせている。

「ロジーク君、何か他の対抗手段はないのかい?」

グリコールがいつでも冷静でいてくれるおかげで俺は何とか砕けた心を支えられているが、今にも俺の心は壊れそうだ。──この世界とは異なる世界の兵器がよりによって敵の手に渡っていまったのだから。
俺は悩み続けなければならなかった。


二日後──

「ライラ先輩、あなたのために贈ろうとした護身用の武器が【鬼砂族】に奪われてしまいました……。本当にごめんなさい」
「えっ!?な、何の話……?」
俺は二日前の出来事を包み隠さず話した。
「いや、謝られても困るんだけど……。何も知らなかったし、だからって言うのもなんだけど気にしないでよ」
あ、話していなかったんだった……。
「このためだけにこのクラスを訪れて、なんか……すみません……」
「あー、うん。本当にそこまで気にやむ必要はないと思うよ」

──俺はライラ嬢のクラスを後にした。



「……俺には今、何が出来るんだろう」
思えば、俺は前世では研究職の薬剤師だった。薬学は人を救うものであって、人を痛めつけるものではない。主作用、副作用の境は患者の症状に効くものが主作用であり、それ以外は副作用である。──薬学をもってしても、【鬼砂族】に勝てる見込みはない。

「俺の知識で出来ること……そうか!!」
俺はもとより研究職だった。それならば、研究を重ねれば良いじゃないか!

「俺にそれが出来るのか……」

そこで神様から与えられたギフトが重要になってくる。神様が俺の体内のB細胞に与えたこの世界の害悪な物質のデータを元素魔法を用いて調べれば良い。場合によっては薬学と魔法を組み合わせたような新たな魔法体系も作らなければならないかもしれない。

──俺は研究者だった……!成すべきことを成す!



☆☆☆



「そろそろ試験の時期だから、お前ら勉強しとけよー!」
一週間後、2組の担任であるツベルク先生がとんでもないことを告げてきた。
(定期試験だと……!こんなときに限ってッ……!)
俺は研究を始めなければならない。この世界に銃という兵器をもたらした落とし前をつけるために。

「……先生、その試験……全て満点を取ったら授業を免除して頂けませんか?」

俺は勝負に出た。
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