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第一章 数学の賢者
数学の発展しない世界
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「起きて……起きてよグラル!!」
一也は目を覚ますと、文明国だった日本の家具や窓が一切見当たらないこの光景に目を白黒させていた。
目にかかっている髪の色も見慣れた黒髪ではなく薄いカーキ色であり、自分がどうなってしまったのか、とかなり混乱していた。
「グラル、すごい熱があったのに……! もう、熱はないみたいね……」
「何を言ってんだ、俺の名前は葛木一也だ──ハッ!」
一也は何かを思い出したように顔をはっとさせて、微かに覚えている先程までのやり取りを頭に浮かべた。
※※※
「あれ……ここは? さっきまで俺はジェットコースターに乗って積分を──あっ!」
一也の目の前には人知を超えた美しさをもつ女性の姿があった。
美しい魅惑の肢体を白銀の羽衣で包み、神々しさに加えて妖艶さをも醸し出している。
何故人知を超えているかと聞かれれば、一也はこう答えるだろう。
──顔のパーツの大きさと比率が一つの完成形になっている、と。
「まさか貴方に褒めてもらえるとは思っていませんでしたよ……数学にしか興味の無かった貴方に」
「初対面に失礼だなおい!!」
「私の名前はピタラス。見ての通り女神です。……さて、ここへ喚んだ要件ですが──葛木一也さん、貴方には数学がまだ発展していない世界へ転生してもらいたいのです。その世界には科学の代わりに魔法というものがありまして……それに頼りすぎた分数学もそうですが、科学も未発達なのです。それで……異論は認めますが、どうしますか?」
「いやいやいや、異論だらけだろうが」
「こほんっ、その様子だと異論は無さそうですね。では──」
「異論だらけって言ってるだろうが。話を先に進めてどうすんだよ……。第一、俺はどうなったんだよ」
一也はまるで話を分かっていないピタラスに自分はどうなったのかを聞くべく、話をストップさせた。
「貴方は日本のネズミの国の海にあるジェットコースターから転落してお亡くなりになられました。きっと由香里さんも泣いていることでしょうね……。まあ、由香里さんの想いが貴方をここに呼び寄せたも同然なのですがね。だいたいはこんな感じです。これで内容的に満足いただけましたでしょうか……?」
「やっぱ死んだのか……ってか喚んだのはそっちのくせによくそんな台詞が吐けるな……!! まあ、分かったけどよ。何故俺が数学の発展していない世界に転生しなければいけないんだよ……まず、数学が無いんだろ? その時点でそんな世界に行きたくねぇ」
「それでは転生してから7歳になったとき洗礼というものがありますから、そこで【積分魔法】を授けましょう。これで引き受けてもらえますか?」
「はい」
一也、即答である。
積分魔法というからには積分することに特化した魔法であるに違いない、とグラルは考えた。
それはつまり、「ジェットコースターをも積分可能」ということに他ならない。
「勿論、あちらの世界で数学を発展させるために送り込むのですからそれ相応の家に転生させますが──今なんと?」
「即答しただけだか……【積分魔法】があらゆるものを積分する能力なら転生してやってもいいぞ」
「そうでしたか、それは良かった。万が一の時を考えて一応、他の魔法も使えるようにしておきますね?」
「分かった」
そしてピタラスは一也のステータスの称号設定欄に【賢者】という言葉を書き加えた。
「では最後に、あちらの世界では人間以外にも、人は人でも沢山の種族が存在しています。ですので数学が世界全体に広まるようにお願いしますね! それでは、5歳までに記憶を取り戻すようにしましたので……行ってらっしゃいませ!!」
──そして葛木一也はグラル、グラル・フォン・インテグラとして転生したのだった。
※※※
「もう……心配させないでよ? 取り敢えずまだ休んでいなさい」
「は、はい」
熱が治まるとグラルとして生きていた5年間の記憶と葛木一也としての記憶が一つに融合する。そしてグラルは目の前の女性が自分の母親であることを思い出した。
「休んでいても暇だから、自分で問題でも作るか……!」
グラルは脳内で数学の問題を考えてそれを自分で解く。
葛木一也だった頃はこうすることで新たな発見がいくつも見つけることが出来たのだ。
「…………」
何一つ発見がないことにがっかりしたグラルは暇をどのように潰すかで頭を悩ませるのだが、不意に視線を感じて部屋のドアの方を見ると、隙間から覗く二つの眼光があった。
(えーっと、確かメリクだったかな……?)
グラルの記憶にあった彼の妹──メリク・フォン・インテグラはグラルとの視線が合うとドアを開けてグラルに体調を尋ねた。
「お兄ちゃん、体調は大丈夫です?」
(ぐはっ……! お、俺が“お兄ちゃん”……だと!?)
葛木一也に弟または妹はいなかった。──いたのは大学生の兄が一人だけであり、妹に“お兄ちゃん”と呼ばれる事など一度たりともなかった。
その新鮮な感覚にグラルは──
「メリク……もう一度! もう一度呼んでくれないか……?」
「お兄ちゃん……どうしたんです?」
「人と関わるのって楽しいものなのかもな……! メリク、お前もそう思わないか?」
「お兄ちゃん、何言ってるのかよく分からないです。えっと、お兄ちゃんはお馬鹿さんなんですか?」
今更になって人と関わることの楽しさに気がついたグラルは妹のメリクから呆れられていることにも気がつかず、日本であまり人と関わらなかったことを後悔していた。
しかし今の身体はまだまだ5歳であるから、この時ばかりはピタラスに感謝してその日は眠りについたのだった。
──そして翌日になると、グラルの記憶もしっかりと定着して自分を取り巻く環境について理解が及んだ。
グラルの家名はインテグラ、父親がエフダッシュ領の辺境伯をしているインテグラ家の次男坊がグラルであり、上に一人ずつ兄と姉がいる。
因みにメリクも次女であり、グラルの2歳下である。それに加えて言うならば、上に長女がいるがその下に妹はいない。
──そして今、グラルは自室で数学の発展していないこの世界に転生してしまったことに、ぽっかりと穴の空いたような虚しさを覚えていた。
「数学が無いだけでこんなにも虚しいとは……」
「数学って何です?」
「っ!? め、メリクか……驚かさないでくれ」
「ドッキリ大成功です!!」
「な、何故その番組を知っている……!?」
メリクがドアを開けてグラルの部屋にいることに気がつかずに驚くが、それ以上に驚かせる言葉がメリクの口から出てきてしまった。
──“ドッキリ大成功”、と。
グラルは日本のドッキリを企画する番組に登場する赤色の看板を思い浮かべて首を横に振った。
「朝食が出来たようですので、お呼びに参りました。グラル様、メリク様……!」
「……分かった」
「分かりました。直ぐに行きます!」
朝食の準備が終わったことをメイドを通して知ると、グラルとメリクはリビングへと足を運んだのだった。
「それにしても……グラルの急な発熱は何だったのだろうな」
そう呟いたのはグラルの父親で辺境伯のディクス・フォン・インテグラ・エフダッシュだ。因みに、エフダッシュの名前を名乗ることの出来る者はその貴族家の当主のみであるため、エフダッシュを名乗れるのはただ一人である。
恐らく、その発熱とは記憶が戻るときの副作用のようなものなのだろうがグラルは打ち明けるべきか迷っていた。
──もし共に生活を送っていれば、誰かが違和感を覚えて中身がグラルではないことを悟られてしまうかもしれない。それよりかははるかに良いのだが、このまま打ち明けなければ、申し訳なさがグラルの胸の内に込み上げてくることだろう。
「そうねぇ、どうしたのかしら……? 本当に」
──グラルの母親、プリムラ・フォン・インテグラは心配そうに視線をグラルへと移してグラルの顔色を窺った。
「っ……!? お、俺は別に体調も全快したしもう大丈夫なんだが……」
「万が一のためにもう少しだけ休んでおきなさい」
「はい」
グラルの療養はまだ続きそうであったが。
(──そういえばあいつ、今頃どうしてるんだろうな……?)
心の片隅で由香里のことを思い浮かべながら月日が経ち、グラルは7歳にまで成長した。
そして待ちに待った7歳の洗礼の日が訪れたのだった。
一也は目を覚ますと、文明国だった日本の家具や窓が一切見当たらないこの光景に目を白黒させていた。
目にかかっている髪の色も見慣れた黒髪ではなく薄いカーキ色であり、自分がどうなってしまったのか、とかなり混乱していた。
「グラル、すごい熱があったのに……! もう、熱はないみたいね……」
「何を言ってんだ、俺の名前は葛木一也だ──ハッ!」
一也は何かを思い出したように顔をはっとさせて、微かに覚えている先程までのやり取りを頭に浮かべた。
※※※
「あれ……ここは? さっきまで俺はジェットコースターに乗って積分を──あっ!」
一也の目の前には人知を超えた美しさをもつ女性の姿があった。
美しい魅惑の肢体を白銀の羽衣で包み、神々しさに加えて妖艶さをも醸し出している。
何故人知を超えているかと聞かれれば、一也はこう答えるだろう。
──顔のパーツの大きさと比率が一つの完成形になっている、と。
「まさか貴方に褒めてもらえるとは思っていませんでしたよ……数学にしか興味の無かった貴方に」
「初対面に失礼だなおい!!」
「私の名前はピタラス。見ての通り女神です。……さて、ここへ喚んだ要件ですが──葛木一也さん、貴方には数学がまだ発展していない世界へ転生してもらいたいのです。その世界には科学の代わりに魔法というものがありまして……それに頼りすぎた分数学もそうですが、科学も未発達なのです。それで……異論は認めますが、どうしますか?」
「いやいやいや、異論だらけだろうが」
「こほんっ、その様子だと異論は無さそうですね。では──」
「異論だらけって言ってるだろうが。話を先に進めてどうすんだよ……。第一、俺はどうなったんだよ」
一也はまるで話を分かっていないピタラスに自分はどうなったのかを聞くべく、話をストップさせた。
「貴方は日本のネズミの国の海にあるジェットコースターから転落してお亡くなりになられました。きっと由香里さんも泣いていることでしょうね……。まあ、由香里さんの想いが貴方をここに呼び寄せたも同然なのですがね。だいたいはこんな感じです。これで内容的に満足いただけましたでしょうか……?」
「やっぱ死んだのか……ってか喚んだのはそっちのくせによくそんな台詞が吐けるな……!! まあ、分かったけどよ。何故俺が数学の発展していない世界に転生しなければいけないんだよ……まず、数学が無いんだろ? その時点でそんな世界に行きたくねぇ」
「それでは転生してから7歳になったとき洗礼というものがありますから、そこで【積分魔法】を授けましょう。これで引き受けてもらえますか?」
「はい」
一也、即答である。
積分魔法というからには積分することに特化した魔法であるに違いない、とグラルは考えた。
それはつまり、「ジェットコースターをも積分可能」ということに他ならない。
「勿論、あちらの世界で数学を発展させるために送り込むのですからそれ相応の家に転生させますが──今なんと?」
「即答しただけだか……【積分魔法】があらゆるものを積分する能力なら転生してやってもいいぞ」
「そうでしたか、それは良かった。万が一の時を考えて一応、他の魔法も使えるようにしておきますね?」
「分かった」
そしてピタラスは一也のステータスの称号設定欄に【賢者】という言葉を書き加えた。
「では最後に、あちらの世界では人間以外にも、人は人でも沢山の種族が存在しています。ですので数学が世界全体に広まるようにお願いしますね! それでは、5歳までに記憶を取り戻すようにしましたので……行ってらっしゃいませ!!」
──そして葛木一也はグラル、グラル・フォン・インテグラとして転生したのだった。
※※※
「もう……心配させないでよ? 取り敢えずまだ休んでいなさい」
「は、はい」
熱が治まるとグラルとして生きていた5年間の記憶と葛木一也としての記憶が一つに融合する。そしてグラルは目の前の女性が自分の母親であることを思い出した。
「休んでいても暇だから、自分で問題でも作るか……!」
グラルは脳内で数学の問題を考えてそれを自分で解く。
葛木一也だった頃はこうすることで新たな発見がいくつも見つけることが出来たのだ。
「…………」
何一つ発見がないことにがっかりしたグラルは暇をどのように潰すかで頭を悩ませるのだが、不意に視線を感じて部屋のドアの方を見ると、隙間から覗く二つの眼光があった。
(えーっと、確かメリクだったかな……?)
グラルの記憶にあった彼の妹──メリク・フォン・インテグラはグラルとの視線が合うとドアを開けてグラルに体調を尋ねた。
「お兄ちゃん、体調は大丈夫です?」
(ぐはっ……! お、俺が“お兄ちゃん”……だと!?)
葛木一也に弟または妹はいなかった。──いたのは大学生の兄が一人だけであり、妹に“お兄ちゃん”と呼ばれる事など一度たりともなかった。
その新鮮な感覚にグラルは──
「メリク……もう一度! もう一度呼んでくれないか……?」
「お兄ちゃん……どうしたんです?」
「人と関わるのって楽しいものなのかもな……! メリク、お前もそう思わないか?」
「お兄ちゃん、何言ってるのかよく分からないです。えっと、お兄ちゃんはお馬鹿さんなんですか?」
今更になって人と関わることの楽しさに気がついたグラルは妹のメリクから呆れられていることにも気がつかず、日本であまり人と関わらなかったことを後悔していた。
しかし今の身体はまだまだ5歳であるから、この時ばかりはピタラスに感謝してその日は眠りについたのだった。
──そして翌日になると、グラルの記憶もしっかりと定着して自分を取り巻く環境について理解が及んだ。
グラルの家名はインテグラ、父親がエフダッシュ領の辺境伯をしているインテグラ家の次男坊がグラルであり、上に一人ずつ兄と姉がいる。
因みにメリクも次女であり、グラルの2歳下である。それに加えて言うならば、上に長女がいるがその下に妹はいない。
──そして今、グラルは自室で数学の発展していないこの世界に転生してしまったことに、ぽっかりと穴の空いたような虚しさを覚えていた。
「数学が無いだけでこんなにも虚しいとは……」
「数学って何です?」
「っ!? め、メリクか……驚かさないでくれ」
「ドッキリ大成功です!!」
「な、何故その番組を知っている……!?」
メリクがドアを開けてグラルの部屋にいることに気がつかずに驚くが、それ以上に驚かせる言葉がメリクの口から出てきてしまった。
──“ドッキリ大成功”、と。
グラルは日本のドッキリを企画する番組に登場する赤色の看板を思い浮かべて首を横に振った。
「朝食が出来たようですので、お呼びに参りました。グラル様、メリク様……!」
「……分かった」
「分かりました。直ぐに行きます!」
朝食の準備が終わったことをメイドを通して知ると、グラルとメリクはリビングへと足を運んだのだった。
「それにしても……グラルの急な発熱は何だったのだろうな」
そう呟いたのはグラルの父親で辺境伯のディクス・フォン・インテグラ・エフダッシュだ。因みに、エフダッシュの名前を名乗ることの出来る者はその貴族家の当主のみであるため、エフダッシュを名乗れるのはただ一人である。
恐らく、その発熱とは記憶が戻るときの副作用のようなものなのだろうがグラルは打ち明けるべきか迷っていた。
──もし共に生活を送っていれば、誰かが違和感を覚えて中身がグラルではないことを悟られてしまうかもしれない。それよりかははるかに良いのだが、このまま打ち明けなければ、申し訳なさがグラルの胸の内に込み上げてくることだろう。
「そうねぇ、どうしたのかしら……? 本当に」
──グラルの母親、プリムラ・フォン・インテグラは心配そうに視線をグラルへと移してグラルの顔色を窺った。
「っ……!? お、俺は別に体調も全快したしもう大丈夫なんだが……」
「万が一のためにもう少しだけ休んでおきなさい」
「はい」
グラルの療養はまだ続きそうであったが。
(──そういえばあいつ、今頃どうしてるんだろうな……?)
心の片隅で由香里のことを思い浮かべながら月日が経ち、グラルは7歳にまで成長した。
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