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副団長 サミュエル Ⅴ
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「サミュエルさん。ありがとうございます、とても温まりました。お洋服まで貸していただいて、お礼は改めてしますね」
アリスはサミュエルの出してくれた、薄いブルーで長めの丈の肌触りの良い服と、下は黒のゆったりめのパンツを着て出てきた。風呂上がりのアリスは、普段のサミュエルの香りとアリス自身の匂いが、ふんわりと混ざり、何とも耐え難い気分のサミュエルだが、それを隠し。
「悪いね。新品の服がこれしか無かったんだよ。下は以前サイズを間違えて、購入した物だからそんなに大きく無いと思うけど。上は流石に大きいな。洗濯もそんなにかからないと思うから、その間少し話さないか?」
そう言って、サミュエルはアリスに椅子を進めた。自分も向かいに座って、暖かいミルクをアリスに渡し、自身も同じ物を目の前に置いた。
「美味しいから飲んでみてくれ、このミルクは搾りたてを毎日、近くの子供達が運んでくれているんだ。」
「では、いただきます」
アリスは一口飲み、その後嬉しそうに全て飲み干した。
「これすっごく美味しいです。ほんのり甘くて、いつも飲むミルクとは違います」
「だろう!子供達が一生懸命、毎朝乳搾りして運んでくれてるから美味しいんだ。私も、子供の頃やっていたんだが、なかなか大変な仕事だよ」
サミュエルは、得意そうに少し寂しそうに話した。
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。だが今は、それよりもアリスの話だ。アリスはいつ頃この街に来たんだ?」
アリスは思い返しながら。
「先程話したように、一年前祖父が亡くなり森を出ました。海を目指して旅をして、この街で3ヶ所目です。この街は、一カ月前に着きました。住み込みで働ける所を探していたら、ルイ亭さんを紹介されたのです」
「両親の顔や名前は判るのか?騎士団に私は所属しているから、この国にいるなら探せるが、どうする?」
「そうですね。私は顔も知らない両親を探せるのでしょうか?祖父が亡くなり、私1人になって寂しくて家族が居ればと、あてもなく探して来ましたが。
隣国では、私の髪と瞳は珍しいものでした。此方の国に入ってからは、別に誰も気にする事は無いみたいでしたから、やはり私は何かしらの獣人なのでしょうか?
私は知識が無く、自分の事も判らない…今はもっと色々な知識と、私自身の事を知ってみたいと思います。
両親の事は、自身の事が判れば、自ずと何らかの事が判る様な気がするので、今はこの街できちんと暮らしていきたいです」
アリスはハッキリと言い切り、新たな希望に満ちた瞳をしていた。
「そうか…アリスの海に誘われる事と、潜って居られる事は。騎士団に詳しそうな奴が居るから、明日にでも聞いてみるから、不安に思うな。原因が判れば対処法も判るんだよ。安心しろ何の獣人かも、多分其奴なら調べられると思うぞ。明日一緒に、騎士団に行ってみるか?」
アリスは少し考えて、微笑み頭を下げて。
「宜しくお願いします、サミュエルさん」
「やめてくれ。そんな事されると、続きの話ができなくなるからな。
アリス落ち着いて聞いてくれるか?」
「はい…大丈夫です。サミュエルさん」
お互い真剣な表情になり。
「アリス、ハッキリ言うが君は私のつがいだ。アリスがどう感じているのか判らないが、私には君の匂いが特別なんだ。
つがいの判別方法は、個々に違うが大鷹の獣人の私は、アリスの匂いと存在につがいであると確信がある。
私はつがいは強制的なものだと思うんだ。アリスは獣人の事も何も判っていないのだろう。だから私はアリスと、恋人からはじめたい!もしも私の事が、嫌いではないのなら、私と恋人として付き合って下さい」
サミュエルは立ちあがり、頭を下げてアリスの前に手を差し出した。その手は微かに震えていた。
アリスはびっくりして、その後真っ赤に染まった。
「えっと…私はつがいとかよく判らなくて…でも貴方の事は、とても気になっていて…上手く言えないのですが…好きです」
アリスは立ちあがり、サミュエルの手を優しく包み込んだ。そのままサミュエルは、アリスに近づきアリスの肩に、自身の頭を置いた。
2人は暫くそのまま動けなかった…いや。動かなかった。
(ありがとう…アリス…私は君を幸せにする)
アリスはサミュエルの出してくれた、薄いブルーで長めの丈の肌触りの良い服と、下は黒のゆったりめのパンツを着て出てきた。風呂上がりのアリスは、普段のサミュエルの香りとアリス自身の匂いが、ふんわりと混ざり、何とも耐え難い気分のサミュエルだが、それを隠し。
「悪いね。新品の服がこれしか無かったんだよ。下は以前サイズを間違えて、購入した物だからそんなに大きく無いと思うけど。上は流石に大きいな。洗濯もそんなにかからないと思うから、その間少し話さないか?」
そう言って、サミュエルはアリスに椅子を進めた。自分も向かいに座って、暖かいミルクをアリスに渡し、自身も同じ物を目の前に置いた。
「美味しいから飲んでみてくれ、このミルクは搾りたてを毎日、近くの子供達が運んでくれているんだ。」
「では、いただきます」
アリスは一口飲み、その後嬉しそうに全て飲み干した。
「これすっごく美味しいです。ほんのり甘くて、いつも飲むミルクとは違います」
「だろう!子供達が一生懸命、毎朝乳搾りして運んでくれてるから美味しいんだ。私も、子供の頃やっていたんだが、なかなか大変な仕事だよ」
サミュエルは、得意そうに少し寂しそうに話した。
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。だが今は、それよりもアリスの話だ。アリスはいつ頃この街に来たんだ?」
アリスは思い返しながら。
「先程話したように、一年前祖父が亡くなり森を出ました。海を目指して旅をして、この街で3ヶ所目です。この街は、一カ月前に着きました。住み込みで働ける所を探していたら、ルイ亭さんを紹介されたのです」
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「そうですね。私は顔も知らない両親を探せるのでしょうか?祖父が亡くなり、私1人になって寂しくて家族が居ればと、あてもなく探して来ましたが。
隣国では、私の髪と瞳は珍しいものでした。此方の国に入ってからは、別に誰も気にする事は無いみたいでしたから、やはり私は何かしらの獣人なのでしょうか?
私は知識が無く、自分の事も判らない…今はもっと色々な知識と、私自身の事を知ってみたいと思います。
両親の事は、自身の事が判れば、自ずと何らかの事が判る様な気がするので、今はこの街できちんと暮らしていきたいです」
アリスはハッキリと言い切り、新たな希望に満ちた瞳をしていた。
「そうか…アリスの海に誘われる事と、潜って居られる事は。騎士団に詳しそうな奴が居るから、明日にでも聞いてみるから、不安に思うな。原因が判れば対処法も判るんだよ。安心しろ何の獣人かも、多分其奴なら調べられると思うぞ。明日一緒に、騎士団に行ってみるか?」
アリスは少し考えて、微笑み頭を下げて。
「宜しくお願いします、サミュエルさん」
「やめてくれ。そんな事されると、続きの話ができなくなるからな。
アリス落ち着いて聞いてくれるか?」
「はい…大丈夫です。サミュエルさん」
お互い真剣な表情になり。
「アリス、ハッキリ言うが君は私のつがいだ。アリスがどう感じているのか判らないが、私には君の匂いが特別なんだ。
つがいの判別方法は、個々に違うが大鷹の獣人の私は、アリスの匂いと存在につがいであると確信がある。
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アリスはびっくりして、その後真っ赤に染まった。
「えっと…私はつがいとかよく判らなくて…でも貴方の事は、とても気になっていて…上手く言えないのですが…好きです」
アリスは立ちあがり、サミュエルの手を優しく包み込んだ。そのままサミュエルは、アリスに近づきアリスの肩に、自身の頭を置いた。
2人は暫くそのまま動けなかった…いや。動かなかった。
(ありがとう…アリス…私は君を幸せにする)
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