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副団長 サミュエル Ⅱ

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「満月か…綺麗だな。
月光の反射で、海面が輝いている様だ」


月明かりの中サミュエルは、ぶつぶつ独り言を言いながら、居るかどうかもわからない人魚を、探して神秘的な光景の海辺を一人歩いている。


「ディランの奴め、何が一緒に行こうだよ。まあ仕方ないか、つがいが実家から帰ってきたみたいだしな、あいつも色々大変そうだな。

   それにしても、つがいが男か。幸せそうだし、お互いに溺愛しまくってるから、あれはあれで良かったんだろうが…つがいは何なんだろう?運命なのか?強制的なのか?」


ディランは足を止め、輝く月を暫く仰ぎ見て、両手を広げ大きく息を吐き出してその場で佇んでいる。


(副団長なんてやってるが、がむしゃらに生きてきて良かった事は、良い仲間に恵まれた事位だな。騎士団の奴らは変人揃いだが、私にはとても居心地が良い。
     
    もうすぐ私は150歳だから、寿命の半分になったら、つがいが判別できなくなるんだったか。後は自分で好きな奴見つけろって、神様の優しさなのか?
    
   結婚した後つがいに出逢ったら、最悪だから寿命の半分迄はつがい以外の結婚は、できないんだよな。良く出来たシステムだよ。
つがいの判決方法も獣人それぞれ違うから、はっきりしないのが困るんだけどな。

     私は。これからも1人で生きていくのか…)


サミュエルは、少し寂しげな顔で又歩き出した。


「確かここら辺が、人魚出没地帯だったな。でも本当に今日は、海が綺麗だな…
あれなんだ?海の中の岩場に何かいるぞ。人だ…女だ…あれが人魚なのか。
遠目だが…服は着てんだな。薄手の長いスカートで、黒いかなりの長髪に白い肌………ビンゴだ」


サミュエルは、人魚であろう者の近くに、異変が無いか偵察する事にした。


「やばっ。10人ぐらいの明らかに怪し気な奴等が、海に入ってるぞ。あれは人魚を捕まえるつもりだな。海の中で争うのは、疲れるし濡れるし、面倒くさい。ここは逃げるが勝ちだな」


サミュエルは瞳を閉じて、自然を感じ気を落ち着かせ瞳を開いた。


(私は、背中に意識を集中させ力を溜めた。すると…背中が熱を帯び透明な大鷹の翼が蜃気楼の様に出現するんだ。エネルギー体なので実態は無く、私自身子供の頃から遊びで良く出現させていた為、特別な事だとは思っていなかったが、なかなかのレアケースらしい。翼の具合を確かめる為にパタパタと羽ばたかせ…良し!大丈夫そうだな)


サミュエルは。透明な羽を羽ばたかせ、ふわっと身体を浮き上がらせて、風の流れを感じ上手く調整しながら、あの人魚の上空迄気付かれずに飛んだ。

空の上で旋回しながら様子を見ると、もうじきあいつらの手が、人魚に届きそうになっている。囲まれているらしく人魚も動けないみたいで岩場に抱きついている。


「ピューーーーーーーーーーー」


(私は、指笛を吹いて。
あいつらの注意を引きつけて、見上げた瞬間に、人魚の側に降りすぐさま抱き上げ、上昇した。

   肩と膝に手を置いて、抱え上げたが脚があるぞ。スカートが長すぎて判別できなかったが、人魚なのか?それに…なんて軽いんだ、女を抱き上げたのは、初めてではないが軽すぎる、見たところスタイルは良いようだが…それにこの匂いは…
 
    私は。自然と人魚の身体を自分に引きつけた。抱き締める力も強まった。
この腕から二度と離したくない…)





高く高く高く飛び…月に届くまで…




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