上 下
39 / 62
国中総てに虐げられてた私は未来の皇后?

優しさ(レイファ)

しおりを挟む
レオンさんが、ゆっくりシリスさんを進め、徐々に御屋敷に近づいていく。


「何これ? 御屋敷じゃないよね……これってお城……」

「そうだな。屋敷と言うより、小さいが城と呼んだ方が正解だろうな。此処は、サーフウィカ王国離宮だ。主人は、母の皇后フレアだ」

「えっ離宮? 皇后様? 母! わ、わ、わ、わたし帰りまふ」

「帰りまふ? 面白いな君は、大丈夫だ。皇后と言っても余生を過ごす普通の夫人だから。さあ、着いたぞ」


レオン様? が、シリスさんから降ろしてくれて地上に足が着き私はひと安心です。今日は今までに無い経験ばかりしてます。


「やっぱり大きいですね。離宮ですか……サーフウィカ王国は……確か、間に三つの国があったような」

「まあ、入りなさい。君の事もゆっくり中で聞かせて貰おうか」


レオン様は、巨大な綺麗な細工を施された扉を開け中に入って行った。私もキョロキョロ周りを見ながら付いて行ってるけど、此処凄いわ。

 とにかく空間が広がっています。横に鎮座してる物達も佇んでいるだけなのに何故か迫力があります……絶対高価な物ですよね。

 離宮の中をつまづかないように長い髪をくるくる巻き、肩に担ぐ私を軽く横目で見ながら、レオン様が笑われました。

 髪が長過ぎて私は、邪魔で邪魔でしかたないのです。何故こんなに長くなったのか。


「ククッ君は……レイファは楽しいな。他の人間とは違う感じがする。レイファ此処で少し待っていてくれ。先に母の様子を見てくる」


目の前の薔薇の細工が繊細に施された扉をレオン様が軽くノックした。すると中から綺麗な声が聞こえました。


「入りなさい」

「失礼します」


扉を開けると、中から光が差し込んで来た。それに、とても優しく良い香りが私を包んでいくの、自然の香り……とても心地良いわ。

   レオン様は私を振り返り、目で待ってろと言い、中に入って行った。

    一人になり、私は何故此処にいるのかと、今迄の色々な事が頭の中に浮かんできたの。遥か遠くまで飛ばされた様子みたいだけど、あの国から出られただろう事だけは良かったと思うわ。

     これからの事はどうにかなりそうな気がする。不思議な水を飲んでから心の中が変に落ち着いてるの。

 今までは全てが悪い方にしか考えられなかったのに、悪い事ばかりだったし。今は、何故か少しだけ前向きに考えられる様になったの。

     扉がそっと開き、レオン様に手招きされたので、レオン様が開けてくれている扉の中に入ると、そこには……

 入って直ぐ目の前に大きなテラスがあり、扉が開け放たれていた。

 外には薔薇が咲き誇り、辺り一面綺麗な薔薇のグラデーションが……薔薇達が喜んでいるのか良い香りを風が運んでくれる。

 私は自然に深く深く深呼吸して、薔薇の香りを身体いっぱい吸い込んだ。


「おい……おーい、レイファ聞こえてるか」

「えっあっ! ご、ごめんなさい! 薔薇に見惚れてしまって」

「あら、まあまあまあ! ありがとう。嬉しいわね、こんな可愛らしい妖精さんに遊びに来ていただけるなんて」

「母上、この娘はレイファと言います。先程私が部屋から外を眺めて居た時、突然路の真ん中に現れたのです」

「あら? そうなの不思議な事ねえ~ レイファちゃんいらっしゃい」


私は皇后様に、視線を向けました。凄い、神々しいまでの美しさです。

 スラリとした素晴らしいスタイルで、ピンクゴールドの光輝く髪を綺麗にアップしてゴールドの瞳は私と同じ筈なのに、とても高貴な瞳。

    私は言われた通りにふらふらと近寄った。すると皇后様が私の手を両手で握ってくれました。


「皇后様……」

「フレアよ。そう呼んでくださらない。此処までレオンに連れて来られたのでしょう。なら良い娘なのでしょうし、わたくしもレイファちゃんと色々お話ししたいわ」


私は今まで生きて来て、こんなに優しい言葉をかけられた事が無くて、フレア様の暖かい手を握りながら泣き崩れました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました

金峯蓮華
恋愛
王命で、妻に逃げられた子持ちの辺境伯の後妻になることになった侯爵令嬢のディートリント。辺境の地は他国からの脅威や魔獣が出る事もある危ない場所。辺境伯は冷たそうなゴリマッチョ。子供達は母に捨てられ捻くれている。そんな辺境の地に嫁入りしたディートリント。どうする? どうなる? 独自の緩い世界のお話です。 ご都合主義です。 誤字脱字あります。 R15は保険です。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

貴方の願いが叶うよう、私は祈っただけ

ひづき
恋愛
舞踏会に行ったら、私の婚約者を取り合って3人の令嬢が言い争いをしていた。 よし、逃げよう。 婚約者様、貴方の願い、叶って良かったですね?

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!

寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを! 記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。 そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!? ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する! ◆◆ 第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。 ◆◆ 本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。 エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

処理中です...