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番外 《恋バナⅣ 》

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「ラティラ! 今日はまたいつも以上に綺麗だ。昨日プレゼントした髪留めも、着けてくれたんだな。嬉しいよ! その服も似合い過ぎて、他の奴らに見せたく無いな」


全身真っ赤に染まったラティラは。


「ラインハルト様。何を….…そんな事」

(おじょー 早く行きなよ。屋敷の皆んなに覗かれてるよ~ 後ね~ 観てるだけで甘々過ぎて、ルラック胸焼けでお菓子全部食べ切れなくなるから、外でやりなよー!)

「ラティラ……俺はルラックがミャオミャオ言ってるのしか聞こえないが、あれは揶揄してる気がするぞ。アイツは仕草と鳴き方で大体の感じが把握できるよな」


三階の窓辺から、窓を開けてミャオミャオ言っているルラックを下から2人で仰ぎみている。ルラックの言葉をはっきりと判るラティラは、どんどん真っ赤に染まっていく。


「あのー ラインハルト様、そろそろ行きませんか?」


ルラックの揶揄から離れたいラティラは、ラインハルトの上着の裾を引っ張った。それを観たラインハルトは優しく包み込む様に微笑み。


「そうだな、食いっぱぐれてしまうからそろそろ行くか!」


ラインハルトが手を差し出し、ラティラが掌を合わせるとラインハルトはぎゅと握り。歩みを進めた。


    二人は馬車に乗り、歩き。以前食べに行った親父さんの店に向かっていた。
     
 何でもナチュラルができてからは、辺境の様々な食材を手に入れやすくなり、親父さんが新商品開発に躍起になって、自信作が出来たそうで、ラティラに是非とも食べに来てくれと、ラインハルトに連絡があったのだ。
 
    二人は以前も通った人気の無い道を歩きながら、逢えない間のことをお互いに話していた。


「アルベルトから聞いたが、ナチュラルが大分落ち着いたらしいな」

「はい。お兄様のお陰で向かいのお店で、皆んなでワイワイ一緒に運動を音楽に合わせて楽しむという事が大分定着したので、お客様も上手く分散できて安定して接客できています」

「良かったな。あのままの状態では、いつになっても辺境へ行ける気がしなかったからな。あっ店に着いたぞ。親父さんかなり自信満々だったからなぁ~ 楽しみだな」

「はい! とても楽しみです! 何が食べられるのでしょうか?」


店の前に立つと、中からザワザワと賑やかな声が聞こえてくる。扉を開けると香ばしい香りが、一気に外に流れ出て行く。


「うわあ~ 良い匂い! 肉の焼ける匂いとこれなんだろう? 変わった感じの匂いがします」

「おう! 来たか、お二人さん。今日も仲が良いなぁ~ 独り者のワシには羨ましい限りじゃわい!」

「親父! 子育て真っ最中の女将さんに言いつけるぞー!」


周りからは、囃し立てる声が次々と湧き出てくる。ラインハルト達にも、当然矛先は来る。暫くは賑やかな言葉の応酬が続いた。


「煩いー! オマエら食った奴は仕事だろうが! 金置いて働いてこいー!」


時間も丁度、昼を過ぎる頃なので親父への文句や、ラティラとラインハルトへは、茶化したり冗談を言いながらも男達は帰って行った。やっと静かになった店内では。


「久々だな嬢ちゃん。忙しくしてたらしいな! 此処にも嬢ちゃんの話題が回ってきたぞ! まあ、そんな頑張った嬢ちゃんにワシからのプレゼントだよ! 用意するからちょっと待ってな!」


親父さんは奥に入って行った。ラインハルトが近くの椅子を引き、ラティラへ勧めた。


「まあ、座って待ってようぜ!」


勝手知ったるで、ラインハルトはコップに水を入れて、二人の前へ置いた。


「ありがとうございます」

「こんな事なんでも無いさ。騎士団なんて手の空いてる奴が何でもやるんだよ。昔の騎士団は色々あったが、俺の前の騎士団長が様々なことを改革してくれてな……随分風通しの良い場所になったんだよ。
    
 俺はその意思を継いでいきたいんだ。ラティラ……」


何かをラインハルトが言いかけた時。


「おう! できたぞ! オマエら見てみろうまそうだろ」


そこに鎮座していたのは、茶色の拳大の塊が山盛り野菜の上に乗っていた。


「なんだ親父さんこれ? 俺初めてみるぞ」

「少し前な、旅の途中の客が来てな!偶々ワシは肉を前にどう調理したら美味いか考えておったら、このカラアゲと言うものを教えてくれたんだよ!

    それからワシなりに試行錯誤を繰り返して、この完成体に辿り着いたんだよ。
     
 辺境特産のコブの木から取れる樹液を使って揚げるんだが。嬢ちゃんの店のお陰で辺境の品物が安く入る様になって、こっちは創作意欲も湧くし、大助かりだ! その御礼に今日は沢山食べて行ってくれな!」

    
「ありがとうございます! 喜んでいただきます」

「ありがとうよ、親父さん」


二人はフォークで肉を突き刺した。すると中から肉汁が滲み出てきて! 慌てて二人は口の中に……噛んだ瞬間にサクサク軽やかな音がし、口いっぱいに肉の旨味とスパイスの香りが広がり。

 二人の目がグワァーっと広がり、無言でハムハムハムと拳大のカラアゲを一つ食べきると。


「美味いーーーーーー!!!」
「何これ凄い! はじめての食感です」

「だろー 自信作なんだよ! 今度なワシの妹夫婦が、カラアゲの店を王都の端で始めんのさ! 小さな店だからな! 持ち帰り専門だがな。お前たちも良かったら買いに行ってくれな!」

「これ! これは美味しいです。病みつきになってしまいますわ! ね、ラインハルト様」

「これの店なら繁盛間違いなしだな。匂いもそそられるし」

「この肉はロンバットなんだぞ。わからなかったか?」


2人はモグモグ食べながら、それを聞きまたもやびっくり!!


「ロンバットなの?」

「これ? 嘘だろ? 全然別物みたいだったぞ!」

「だろだろ! お嬢ちゃんの辺境と、この前妹夫婦が契約してな。定期的に肉を送って貰うようにしたのさ。他の場所でも手には入るが、味が違うからな。
      
 ワシも少しだけ調べてみたらな、辺境の森の草木は臭み消しの役目をしてるものが多く生息しておってな。それを食ってるロンバットは、自然と旨味が凝縮されとると言うわけさ。

     けどな、妹夫婦よりワシのが美味いからお嬢ちゃんに食べさせたくてな。団長に無理言ったんだよ」


「そんな! 私とても嬉しいです! こんなに美味しいロンバットを食べれるなんてありがとうございます」

「どんどん食いな! お代わりもあるからな遠慮なく食えよ」

「「はい!」」


2人はバクバクお代わりもして、お腹いっぱい食べて、元気いっぱい親父さんに御礼を言ってその場を後にしました。

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