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番外 《恋バナ》

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[このお話は三人称視点で進みます]






(ルラック暇ー ルラック暇ー ルラック暇ー ルラック暇ー ルラック暇ー)

「煩いわよ。ルラック!頭の上で叫ばないでくれる」

(ラティラ~ いつ辺境行くの? 早く行きたいよ。お店の中ウロウロ回ってるの嫌だ~~)


「うーん……ごめんねルラック。忙しくてね。

 多分もうしばらくは、王都から出られないかな……

 まだね。運動の仕方等の細かな説明できる人が少ないのよ。特に運動は、本を見るだけで無く実践して教えて欲しいって声が多くてね。身振り手振りでは限界があるのよね。だから私がナチュラルの片隅で一人一人に教えてるのよ」



先程迄ナチュラルは、人で賑わっていた。今は少し人並みもまばらになり、この間に交代で各自休憩を取ったり、在庫の補充をしたりと、皆忙しくしている。

     ラティラは。ルラックの不満も良く判っている。ラティラ自身も、騎士団との合同演習の話も本格的に進んでいるので、詳しい日時を決めたいのだが、それなのにラティラがお店を離れられない為に決められないのだ。



「早く演習したい~ 走り回りたい~ 剣を振り回したい~」

「年頃の淑女の発言と行動ではありませんね」


ラティラは休憩を貰い、奥の休憩室で椅子に座り、上半身の身体をベッタリ机の上に貼り付けて叫んでいた。


「お兄様! どうして此処に? お仕事忙しいのでは? 宰相様の補佐に抜擢されてから、お屋敷に帰って来ないので心配していたんですよ」

「心配してくれてありがとう。ラティラ私は大丈夫だから。王宮に部屋を戴いてあるんだよ。落ち着くまでは、色々後始末があるから王宮で寝泊まりしてるんだよ。けど、そろそろ私も屋敷でゆっくりしたいよ」

「そんなにお忙しいのに、どうして此方に」


ラティラの椅子の隣に、アルベルトは座り、机の上に居たルラックを撫でまくりはじめた。相変わらずルラックはなすがままだ。


(アルベルトのナデナデ最高~)

「今日はね。頑張っているラティラに、ご褒美をあげようと思ってね。欲しいかい?」

「欲しいです! 何ですか? ご褒美、お兄様のご褒美、久しぶりです~ 昔から私が、本当に欲しい物を時々贈ってくれますよね! 何だろうと、毎回楽しみなんですよ」

「それは嬉しいね。私も幼い頃から頑張り屋のラティラへ、ささやかなプレゼントを考えるのが、楽しいんだよ」

「お兄様」


ラティラは最近顔を合わせていなかったアルベルトに会えて嬉しいのと、昔から自分の事を見守ってくれた兄への、感謝の気持ちで溢れそうになっていた。

    そんなラティラの頭を、アルベルトは優しく撫でてあげながら話出した。



「ラティラは今困ってるだろう。さっきも色々口に出していたね。その事の解決策を持ってきたんだ。

    向かいに小さな雑貨屋があっただろう。その雑貨屋の主人は高齢でね。後継も居ないから店を処分して、何処か空気の良い場所で余生を過ごしたいと、言っていたんだよ。

 そこで、私が辺境の地にお誘いしたんだ。お店も私が譲り受けてね。

     と、いう事で。あの店舗は、ナチュラルの改装の後、続けて改装に入って貰ってたんだよ。昨日完成してね、ラティラ一緒に見に行かないかい?」


「見たい、見たいです! お兄様。でも、どうしてそんな事してるんです? ナチュラルがあるから、もう1店舗なんていりませんよね?」

「まあ、現物を確認しながらラティラに説明するよ。私も未だ完成した後、見ていないんだよ。さあ! 行ってみようか」


アルベルトが手を差し出し、ラティラはその手を掴んだ。二人は楽しそうに歩きだす。

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