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襲撃

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舞踏会も終盤になった頃。ラティラは気疲れしてしまい、少し涼もうと多数有るベランダの1つから庭に出てみた。

 ラインハルトは、友人達と楽しそうに会談中だったので声を掛けるのを遠慮したラティラだった。


「此処も薔薇が綺麗なのね。皇后様の薔薇とはまた違って、可愛らしい薔薇が多く咲いているのね~ 匂いも甘いわ」


ラティラは、涼しい夜風と甘い香りに癒されていた。


「ラティラ」


振り返るとヴァント皇太子殿下もベランダから庭に出てきていた。


「殿下……ヴァント皇太子殿下とお呼びした方が宜しいですね。御即位おめでとうございます」


ラティラは一歩下がり丁寧にカーテシをした。


「やめてくれ。君とは友達になったではないか。できれば普通に接してくれないか」


ラティラは頭を上げて姿勢を普通にしてから、暫し考え。


「それでは人目のない場所でのみ、友人としての対応になる事で良いですか? 流石に、皆様の前では無理です」

「それで良い。今は二人だから普通でな」


ラティラはざっと周りを見渡し。


「今は誰も居ませんから大丈夫です」

「ラティラはもう辺境へ帰ってしまうのか?」

「王都で辺境の地の、特産品のお店を開店するんです。それが落ち着いてから、辺境に帰ろうと思っています」

「それなら、少しで良いから私と過ごす時間を貰えないか? 以前の私なら辺境迄気軽に行けたのだが、残念な事に王宮から身軽に出られなくなった。本当言うと皇帝になりたく無いんだ。権力欲など、私は無いのに、普通の幸せが1番難しい立場になってしまったんだと……君との」

「ヴァント皇太子殿下、中に入りましょう。囲まれます……」


ラティラが素早くヴァント皇太子殿下を後ろに庇いながら、ジリジリ下がっている。距離は多少有るが、扉から室内に入ろうとしているが、敵の気配が近づいて来ていて思うようには動けない。下手に動くと弓に狙われるのだ。


(おじょー 騎士団長とアル連れてくるね)

「良かったわ。じゃあ時間稼ぎですむわね」


ラティラはドレスのスカートの下に、手を入れて。隠していた愛用の特別製、折りたたみ式のレイピアを素早く取り出し、敵を迎え討つために構えた。 


「ラティラ……私も一緒に」

「駄目です。貴方は次期皇帝陛下ですから、護られてください。狙われてるのは貴方です。もうじきラインハルト様とお兄様が来ますから」


ラティラは話しながらも、敵がいつ攻めてきてもいいように集中していたのだが、なかなか攻めて来ない。不思議に思いながらも、警戒していると。


「あら? ヴァント皇太子殿下。女性の背後に隠れるなんて、情けないのね~ うふふふふ」

「貴女が仕組んだのか。側妃ミネルヴァ」 


暗闇から、近衛兵を連れてミネルヴァ妃が満面の笑みで、出てきた。


「近衛兵だと……」

「あら? 不思議でもなんでも無いわよ。お父様のお力よ。財力がモノを言うのよ。そしてわたくしの息子ミシェルが皇太子になり、皇帝になるの! なんて素晴らしいことなのでしょう~」

「兄上は……」

「陛下とレオン殿下は、お父様が今頃……おっほほほほほほは……笑いが止まらないわね! ヴァント皇太子殿下。皆様、次期陛下を殺して差し上げなさい」

「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」


ラティラは、切りかかってきた数名を素早く避け、振り下ろされた剣は、レイピアの鍔を使い絡め取った。
    
 取った剣を片手に持ち、両手で剣を構え素早く体勢を変えて、回り込み。背後から一瞬で一人二人三人と斬り倒して行く。
  
  その一瞬の速さにヴァント皇太子殿下は、動けずただ茫然と見ていた……

 そこにラインハルトがやって来て。ヴァント皇太子殿下に切りかかって来た敵を、攻撃できないようにブロックし、敵の剣を交え力で抑え込み、次々と斬りなぎ倒して行く様は圧巻だった。

     ヴァント皇太子殿下に、そっと近寄ったアルベルトは身振りで室内に導こうとする。


「ラティラは……」
 
「大丈夫です。あの2人は規格外ですから」


そちらに目を向けると、ラティラとラインハルトは自由自在に動き回り、敵を次々と斬り崩していっていた。それから、いつの間にかラティラのドレスから、大きな素晴らしい華が無くなり。足首まであったはずのふわふわした生地が、膝丈の短さに変化していた。


「此処は危険ですから、皇帝陛下の元へ行きましょう。私達が居ない方が二人は動きやすいでしょうし」


アルベルトは、ヴァント皇太子殿下を連れて室内に導いて行く。


「これは……兄上……」


皇帝陛下の横で、レオンが傷を負い手当されていた。 かなり深い様で、かなりの出血をしているみたいだ。顔色も良くない。ヴァント皇太子殿下は急いで近寄り、陛下に視線を向けた。


「我を庇ったのだ……レオンは誤解されやすい奴だ。
お前の事もな、能力を隠して生きているお前を心配していたんだ。レオンは、自分が皇帝としては劣る事に気付いていたんだよ。ヴァントの方が皇帝に向いていると、我に進言してきたのもレオンだぞ。お前は、お前らしく自信を持って国を導いて行け」

「父上……兄上……お任せ下さい。民の一人一人が幸せに暮らせる国にします」


ヴァント皇太子殿下は、皇帝陛下と辛うじて意識のあるレオンに向かい、深々と頭を下げた。
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