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戦闘開始

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辺境伯領地を出発して一週間。

 王都と辺境伯領地の丁度半分程来たところで、馬車が荒々しく止まった。


「お兄様……何かあったのでしょうか?」

「変な止まり方だったが、何かあれば護衛が何か伝えて来るだろう」


,,トントン,,
扉を護衛が叩き、声が聞こえた。


「アルベルト様、先方に何か怪しい気配があるそうです。大群ではなく、最近増えている小規模な盗賊みたいなのですが如何致しますか?」

「私達は勇敢な辺境の民だぞ捕らえよう。確か王宮の情報だとここら辺りの領地経営が不況状態の為、領民の一部が盗賊になり、襲っていると言う事を聞いたが…….これか」

「お兄様私も!」


兄妹で目線を合わせ頷き合い。


「「よし! 行こう」」

「皆に伝令せよ」

「はっ」


護衛は足早に皆に伝えに行き、アルベルトも馬車から滑る様に出て行った。残されたラティラは、側にある袋から服を出し素早く着替えていた。

 外では刃を重ねる音が響いている。ラティラも馬車から走り出て、皆の方へ走り出した。

 見ると、アルベルトへ盗賊が弓を構えていた! 急いでラティラは弓を射る! 見事腕に命中し、その者はもんどりうって叫んでいた。

 ラティラはその場から矢が無くなるまで、狙って皆の援護をした。矢が無くなると、レイピアを操り闘いの中に入っていった。

 アルベルトはロングソードを持ち、素早く反応し、躊躇なく切り捨てていく。護衛達も其々の武器を持ち、切り捨てて行く。

 この時、躊躇うと命は直ぐに無くなる事を知っているから……たとえ以前は領民であったとしても容赦はしない。

 綺麗な闘いでは無い。そんなもの命の取り合いで出来る訳は無いのだ。お互い必死で殺し合うのだから。

 幾ら力量が違うと言う事が、一目瞭然であっても、油断は出来ない。

…立てなくなるまで倒すだけだ……

 先が見え始め、盗賊全て捕らえられたと思ったら、先の方向から多数の騎馬が駆けてきた。アルベルト達に緊張が走ったが、近づくと騎士団だと分かり各自のやるべき事を続けた。

 生きてる者を縄で縛り、命の無い者は丁寧に扱い、一つの場所に纏めてた。

 騎士団が到着した。先頭の馬から1人の騎士が降りて話しかけてきた。


「王都の騎士団です。私は副団長のジェフリーと申します、貴方達は?」


アルベルトから見た第一印象は、パッと見た目軽薄そうだった。けれどもこれぐらいで無いと、今の騎士団長の下では難しいのだろうなと感じていた。騎士団長を少し知る者としては、このチャラそうな男に、不憫そうな目線を密かにアルベルトは送った。


「私は辺境伯家、長男アルベルトです。今は王都へ行く途中です」


「私共騎士団はこの辺りの盗賊を、淘汰しに来た者です。貴方達に怪我人等は、居ませんか?」


ジェフリーは辺境伯領地の者達を見渡した。その中に銀髪を高くポニーテールにして、女性にあるまじき姿の者を見た!?


「皆どうだ?ラティラは傷は無いか?」

「はいお兄様、大丈夫です」


笑顔で答えてはいるが、明らかに返り血を浴びたであろう、身体にフィトした赤と黒の衣服からは血の匂いがしていた。お兄様との答えで騎士団からは、微かなどよめきが起こっていた。

後を、騎士団達に任せて、近くにあると言う旅宿を、ジェフリーが案内してくれることになった。流石に殆どの者が返り血を浴びてる状態は、良くは無いからだ。

 軽く顔を拭い服をサッと着替えた一同は、旅宿へ出発した。

 皆は興奮した様子も無く、ただただ普通の様なのを、前方で騎乗して先導していたジェフリーは……


「流石だなぁ~ 辺境伯領地を護る護衛や、その護られるであろう時期辺境伯と令嬢迄が、あの戦闘の後こうも普通にできるとは……

 誰一人興奮したり勢いづいたり、しなくて普通に冷静に行動をしている。そうゆう事が一番出来ないんだよ。そして、大事なんだよね。

 辺境伯領地の傭兵軍は王都とは別の組織だから噂しか聞いた事が無いが、一度手合わせしたいなぁ~」




それからしばらくの間静かに進み。


「あっお兄様止まりましたわ。着いたのでしょうか?」

「風呂に入りたいのは分かるが、落ち着きなさい」

「はいお兄様」


,,トントン,,
扉が叩かれた。


「はい」

「着きましたので外へどーぞ」


副団長のジェフリーが扉を開けて、ラティラに手を差し出しエスコートして旅宿に入って行った。


「まぁとても良い旅宿ですね。落ち着いて居ますわ」

「そうだね。こんな所にあったのなんて知らなかったよ」


兄妹の会話にジェフリーが答えた。


「此処は少し隠れた旅宿なんです。今は王都の者は少人数しか知りませんが、これから噂になると予約も取れなくなるかもしれませんよ。

 此処には温泉があるんですよ、傷や肌荒れにとても良い水質らしいですので早速入っては? 女性の美肌効果もありますよ。荷物等は私達が部屋迄持って行きますから」

「それではお願いしようかな」


アルベルトは、目で合図して1人だけ荷物の仕分け等で残し、他の者は温泉へと向かう。男女別の様で別々に案内され皆、とても気持ちの良いゆったりとした湯に浸かる事が出来た。


「あー 生き返るぅ~ すっごく気持ちいいわぁこれぇ~」


女風呂は1人なので、ゆっくり入れてとても良い。外の露天風呂に出ると横では兄達が騒いでいた、それはそれで楽しそうだ。ラティラがゆったり満喫していると。



,,ガサゴソゴソガサゴソゴソ…,,

横の茂みから音が聞こえる?動物?何だろう。ラティラは不思議で立ち上がり覗き込んだ。


「??????」


,,バサッ,,

男が居た……時が止まりお互い全身を見合わし………


「ギャァ~~~~~~」
「うわぁー」

,,ジャバ~ン,,

「おにいさまぁ~おにいさまぁ~」


叫びながらラティラは一枚の小さな布で出来るだけ身体を隠しお湯の中に入った。


「何があった? ラティラ? 大丈夫か?」

「すまない、すまない! 今日は騎士団専用と聞いていたんだ。近道通って温泉に行こうと思ったんだが。まさか女が居るとは! 悪かった」


頭を下げて謝る男に。


「でていけぇー」
「すまない」


男は飛び上がる様にして来た道を帰って行った。男湯からアルベルトが心配そうに。


「ラティラ? 大丈夫か? そちらに行こうか?」

「もう大丈夫です。変な男が迷い込んだだけみたいです」


ラティラは内心ドキドキしていたのだが、声は落ち着いた様子で返した。


「わかったよ、外に出たら話を聞かせてくれ」

「はい」






,,パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ,,
お湯を叩きながらだんだん激しく叩き、止め.……真っ赤な顔で……


「何なのあれ? 全身バッチリ見られたんだけど! どうしょう! みられたぁ~ 誰にも見せた事無いのに」


ドキドキしたり落ち込んだり最悪の初、温泉だった。

 ラティラが、外に出るとすぐ近くの場所で、さっきの男が正座して座っており。横にアルベルトが、ペシペシ何かの棒を、自身の片手の掌で軽く叩きながら立って文句を言っている。


「????????知り合い?」


側では、端の方でジェフリーが腹を抱えて爆笑している?


「お兄様何? お知り合いですか?」


「あー 腐れ縁というか……幼少時からなにかと縁があり。今は、王宮で騎士団を纏めている男だよ」


「騎士団を纏める? 騎士団長? この男が? うーん? 落ち着いて見ると身体付きも良いし、動けそうだわ頭も悪くなさそうだし。ふーん。一回手合わせしてみたいわね?」


「ラティラ口から出てるよ。淑女だろ」


アルベルトから小言がはいり。


「あら? ごめんなさいお兄様。私としたことが、はしたないわね失礼致しました」


風呂上がりなので簡単なワンピースの裾を両手で持ち、カーテシーをして誤魔化した。


「でもお兄様この方が何故女湯に?騎士団専用とか言ってましたが、騎士団にも女の方はいらっしゃいますよね?」


「それが今回は男ばかりだったので、安心していたみたいです。うちの団長が申し訳ありません」


さっき迄、笑い転げていたジェフリーが、ラティラに申し訳なさそうに誤っていた。


「お前が言えよ!ラインハルト」


アルベルトからの突っ込みに。


「すまなかった。知らぬ事とはいえ君の全身を見てしまった。申し訳無い」


頭を下げるラインハルトに……容赦の無い回し蹴りが炸裂され、流石のラインハルトも2、3歩よろけ膝をついた…


周りからは騎士団の唖然とした空気と、傭兵達からはやんややんやの喝采を浴びて、ラティラは無言でズンズン歩いて去って行った。


「バカだろお前…」


アルベルトの冷ややかな声が広間に響いた。
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