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出発!

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「で、お前も今回は王都に行くのだね」


ラティラは銀色の豊かな髪を高くポニーテールにして、身体に程よくフィットした真紅の膨らみのない膝丈ワンピースに、黒のズボンを合わせており、とても令嬢の着る様な服装では無くて……アルベルトにもいつもの様に冷ややかな視線を向けられている。

 反対にアルベルトは、辺境伯特有の深い藍色の髪を邪魔にならない程度に切り揃えており。鋭い鷹の様な金色の瞳を笑顔で隠している姿は、キッチリ清潔感溢れる貴族らしい装いをしている。


「いつもお前はその様な服で動き回っているだろ。辺境では傭兵軍もいるしその様なラフな格好の男どもも居るが、王都は男でもその様な服装は居ないぞ。女なら尚更だな。

 お前は先ずドレスを作れ。ワンピースでは無くおとなし目のドレスだぞ。仮にも辺境伯令嬢だからな、出掛ける時はこれからは、全てドレスにしろよ。慣れだよ慣れ、淑女教育受けてただろ?」


言う事だけ言うと、優雅にカップを取り紅茶を味わって飲み、喉を潤す。そのアルベルトに反撃する様に、向かいに座っているラティラが上品にカップを持ち上げ一口飲み。


「お兄様、淑女の嗜み等、私は完璧に終了致しましたわ。それでないと剣の稽古は、お婆様に禁止されてましたから。 知ってましたよね?」


話し終えると残り全て飲み干し、カップを優雅にソーサの上に置く。


「ああ、知ってたよ。確かめただけだよ。けれどもドレスは何着か作って持っていくからね。舞踏会用のドレスも王都で注文したから、あちらに行って最終的に合わせるだけにしてあるから」

「お兄様流石です。用意の良い事ですね」


兄妹でメイドが注いだ紅茶を飲み、パクパクお菓子を食べ、楽しいお茶の時間を過ごした。




それから数週間後

 王都への出発準備が整い、兄妹揃って馬車の前で辺境伯領の皆にお別れをしています。

 事前に辺境伯と夫人には、挨拶済みです。なかなかにドラマティックなお別れでした。


「皆様、少しの間だけ留守にしますが、直ぐに戻って来ますから待っていて下さいね。 いっぱいお土産持って帰りますね」

 何時もは見ない、綺麗なキラキラドレスを着たラティラを見て、民は唖然としていた。着飾ると綺麗だろうとは思ってはいたけれど、これ程とはと言葉も出ない。


「皆様方、王都で私達は皆が潤う様に、辺境の野菜や果物や特産品をしっかりと紹介して参ります。結果を楽しみに待っていて下さい」


アルベルトの優雅で洗練された立ち振る舞いに、周りも安心して送り出せると満面の笑みです。






ガタゴトガタゴトガタゴトガタゴトガタゴトガタゴトガタゴト……

これから馬車でニ週間掛けて王都まで行きます。

 ラティラは久々の馬車の旅に少しだけウキウキしており、アルベルトは長旅の始まりで憂鬱です。

 そんな二人を乗せた馬車と、荷物や護衛を乗せた合計四両の馬車が王都迄の道を進みます。
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