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最終章 剣

進軍

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「伯父様」
「・・・無駄話をしてしまったな、くだらんことを」
伯父様はそう言うと再び、あの、恐ろしい目をした
「・・・ハミルトンだ、アリシア、私を伯父と呼ぶな
・・・もう二度と私を伯父と呼べないほどのことをお前にはしてやったと思うがな」
そう言って笑うハミルトンに私は、私の体は竦んだ
「さて、お前を味方にするために、ちょうどいい人質がいる
お前の可愛い可愛い弟がな、アリシア
弟のために、お前は私に協力するだろう、いくらでも」
「・・・アーネストに何を」
「行方が知れなくなったお前を探しに、人手を割いてい
街は大騒ぎだ
兵も騎士も全員出動
お前のために王都から連れてきた兵もほとんどが、お前を探すために使われている
・・・今とても手薄になっている、お前の弟の護衛は
人質にするために今何人か向かわせているところだ」
この人はアーネストを、弟を過小評価しすぎている
私のご主人様の強さを知らない
この国でおそらく、五本の指に入る強さを持っている私のご主人様の強さを、知らない
だけどそっちのほうが私には好都合だ
「まあ、味方になるのは、君の弟の顔を見てからでも遅くはあるまい、それより、さあ、
出発しようか、アリシア」
「どこに行こうと言うのですか?」
「決まっているだろう?王都だよ」
こともなげにハミルトンは言う
この男は本気だ
「ハミルトン、兵の規模はどれぐらいなのですか?」
「三千だ」
「・・・その程度で、国を支配できるとでも?」
「そこらへんの心配はいらんよアリシア、支配などどうでもいい」
「・・・隣国たちはこぞって攻め入ってきますよ、ハミルトン、
この国が滅んでもいいのですか?」
ジェラルド・ハミルトン
この人に、英雄の名をほしいままにしたその矜持がまだあるのなら・・・
私はそう思った
だけど
「ふ、ふふふふ、はははははははは、ははははははははは」
心底おかしそうに、ハミルトンが笑った
「何がおかしいのです?」
「アリシア、この国の行く末などを私が気にかけていると思うかね?」

この男は、この国を亡ぼすつもりなのだ
この男は本気だ、本気でこの国を滅ぼすつもりなのだ

私にもそれがやっとわかった

「さあ、王都へ向けて進軍だ」

そう言うハミルトンは、さっきまで見せていた、
昔の、伯父様ではなく、
私を騙して穢した男の顔に戻っていた

この男の恐ろしさを、私は思い出して、体は勝手に震えた
恐怖で、震えた
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